ハウツー
» 2016年10月18日 11時30分 UPDATE

Design Ideas パワー関連と電源:電池で駆動できる低電力用途向け電子負荷

PDAやデジタルカメラなどの携帯型電子機器の電源を設計する際、重要度が高いパラメーターの1つは変換効率である。電源の変換効率は、負荷電流を徐々に変えながら測定、評価を行う。今回は、1000〜2000円の安価な部品コストで実現できる小型の電子負荷を提案する。

[Chunyang Chen(マキシム・ジャパン),EDN Japan]

1000〜2000円と安価な部品コストで

 PDAやデジタルカメラなどの携帯型電子機器の電源を設計する際、重要度が高いパラメーターの1つは変換効率である。電池に蓄えたエネルギーを安定した電圧に高効率で変換できれば、電池駆動時間が延び、ユーザーの使い勝手が向上するからだ。

 電源の変換効率は、負荷(シンク)電流(電源から引き出す電流)を徐々に変えながら測定、評価を行う。一般には固定抵抗器、もしくは可変抵抗器を使って負荷電流を変化させている。しかしこの方法では、負荷電流をデジタル的に調整することが難しい。市販されている電子負荷装置を使えばデジタル的に調整できる。しかしこうした電子負荷装置は、低電力の機器を設計しているユーザーにとってオーバースペックで、価格が高いという課題がある。さらに交流電源の使用が不可欠という問題もある。

 そこで1000〜2000円と安価な部品コストで実現できる小型の電子負荷を提案する(図1)。これならば9V電池で動作する。出力容量が数Wまでの小型電源の評価に使える。

 対応する出力電圧は3V〜18V。負荷電流の設定値の分解能は100mAレンジのときに1mA、500mAレンジのときに5mAである。レンジ選択用スイッチ(J2)に接続する抵抗を替えることで分解能とレンジを変更できる。

図1:電池で駆動できる電子負荷回路 (クリックで拡大)
5つのICと1つのパワーMOSFETで構成した。実際にこの回路を使用する際には、デジタルマルチメーターを用意して、設定した負荷電流値を確認したほうがよい。なお負荷電流の設定値は、ポテンショメーターICに内蔵した不揮発性メモリに記憶させておくことができる。

 回路は5つの低価格なICと1つのパワーMOSFETで構成した。電流センサーIC(IC4)を使って実際に流れている負荷電流を検出し、それに比例した電圧値(2kΩのとき、1mV/mA)に変換してオペアンプIC(IC5)に入力する。ユーザーが希望する負荷電流はポテンショメーターIC(IC3)を使って電圧値として設定する。

 例えば、負荷電流を100mAにしたい場合は、100mVに設定することになる。この値をオペアンプIC(IC5)に送り、検出した負荷電流値を変換することで得た電圧値と比較する。この結果、2つの値が異なれば、パワーMOSFETのゲート-ソース間電圧(VGS)を制御することで、実際の負荷電流と設定値が等しくなるように調節する。

 負荷電流の設定は、機械式のコンタクトスイッチ(J1)とスイッチ(J3)を使う。J1を1回押すと、設定値が1mA(もしくは5mA)だけ変化する。このときJ3がオープンならば増加し、クローズならば減少する。デバウンサーIC(IC2)は、J1を押したときに発生するチャタリングを抑制するために挿入した。

 IC1は基準電圧源ICである。9V電池の出力から5V(Vcc)の電圧を生成し、その電圧をIC2とIC3、IC5に供給する役目を果たす。さらにIC3の基準電圧源としても機能する。

パワーMOSFETに適切なバイアスを掛ける

図2:設定値と負荷電流の関係 (クリックで拡大)
500mAレンジの場合。一般的な用途には、十分な直線性が確保されている。

 パワーMOSFETには、負荷の放熱に対応できるように、ヒートシンクを取り付けておく。例えば、18V、0.5Aの場合は約9Wの放熱が必要になる。電流センサーICの出力抵抗と並列に接続した1μFのコンデンサーは、ループ応答を改善するために挿入した。

 負荷電流の希望する値と実際の値の誤差を小さくし、さらに線形性を確保するためには、パワーMOSFETに適切なバイアスを掛けることが必要だ。今回の設計では、500mAレンジを実現するために2Ωの抵抗器を使った。こうして一般的な用途には十分な誤差と線形性を実現した(図2)。

 最大負荷電流は、バイアス抵抗の変更と適切なヒートシンクを接続することで増やすことができる。例えば、バイアス抵抗器を1Ωにすれば、負荷電流を1Aに高められる。さらに対応する出力電圧の最低値は3V以下にすることが可能だ。今回は電流センサーICの電源を被測定用電源から供給したため、3V以下に下げられないが、別の電源から供給できるような電流センサーICに変更すれば、0V近辺でも動作する電子負荷を実現できる。

Design Ideas〜回路設計アイデア集

【アナログ機能回路】:フィルター回路や発振回路、センサー回路など

【パワー関連と電源】:ノイズの低減手法、保護回路など

【ディスプレイとドライバー】:LEDの制御、活用法など

【計測とテスト】:簡易テスターの設計例、旧式の計測装置の有効な活用法など

【信号源とパルス処理】:その他のユニークな回路



※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

MONOist×JOBS

【年収1000万以上】人気求人ランキング

半導体開発<自動車用半導体パワーデバイス>

機構設計<新蓄電デバイスモジュール>

機械設計(変圧器)

燃料電池自動車(FCEV、FCV)開発戦略マネージャー

システムエンジニア/TPM<VED>

RSSフィード

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © 2005 - 2017 ITmedia Inc. All rights reserved.
This site contains articles under license from UBM Electronics, a division of United Business Media LLC.