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» 2016年12月15日 11時00分 UPDATE

電源設計:漏れインダクタンスを使用したフライバックコンバーター(1)ハードウェア概要 (1/5)

電圧モード(VM)で動作し、連続導通モード(CCM)で駆動されるフライバックコンバーターの周波数応答は、2次システムの応答に相当します。解析結果の大部分から、伝達関数の品質係数が各種損失(経路の抵抗成分、磁気損失、リカバリー時間に関連する損失など)によってのみ影響を受けることが予測される場合、漏れインダクタンスに起因する減衰効果がもたらす影響は非常に限定的です。ただし、過渡シミュレーションでは、漏れインダクタンスが増大すると出力発振が減衰することが予測されます。文献に記載されている多くの式はこの効果を反映していないので、新しいモデルが必要となりますが、本稿はこのモデルについて説明します。

[Christophe Basso(ON Semiconductor France SAS),EDN]

CCM動作時のフライバックコンバーター

 理想的な連続導通モード(CCM)フライバックコンバーターは、次の2つの動作サイクルで電力を伝送します。1)オン時間tonの間は、1次側電力スイッチSWが閉じ、トランスの1次側インダクタンスLpにエネルギーが蓄積されます。2)オフ時間toffの間は、このスイッチが開き、エネルギーはダイオードDを経由して2次側に伝送されます。ただし、プロトタイプで観測された波形を詳細に分析すると、上記の基本的な説明よりも多くの状態が存在していることが識別できます。図1に、漏れインダクタンスlleakの影響を受けるトランスを採用した代表的なコンバーターを示します。電力スイッチが閉じると、トランスの1次側インダクタンスLpの両端に入力電圧が印加されます。スイッチの抵抗損失は無視するものとします。回路図をよく見ると、Lpとlleakで形成される分圧回路が機能しているため、印加される電圧は正確にVinではないことが分かります。従って、その時点でLpの両端に印加される電圧は、次式で表現できます。

図1:フライバックコンバーターの状態は、エネルギーが1次側に蓄積され、次に電力スイッチが開くと2次側にエネルギーが伝送されることを示す (クリックで拡大)

 結合ドットの影響を考慮すると、tonの期間にわたって2次側ダイオードはブロックされます。Lpとlleakは直列なので、これらの素子を流れる電流ip(t)は、次式に等しい勾配で増加します。

 コントローラーがスイッチつまりMOSFETを開くように指示した時点で、状態は図1bに移行します。この瞬間、ドレイン・ノードに位置する集中静電容量に向かって誘導性電流経路が確立されます。この寄生項を形成しているのは、ドレイン端子で観測されるMOSFET固有の非線形静電容量、CrssとCossに加えてクランプ・ダイオードに起因する各種静電容量、トランス巻線の内部静電容量、1次側に反映される出力ダイオードの静電容量です。これら全ての要素は集合的に、グランドを基準とするコンデンサーを形成しており、このコンデンサーを記号Clumpで表します。Clumpに電流が流れると、ドレイン−ソース間電圧が急速に上昇します。MOSFETの非線形静電容量のため、電圧上昇勾配は一定ではありません。ただし、この電圧の勾配の近似値は、次式で与えられるということができます。

 ここで、Ipeakはスイッチが開いているときの電流値です。Lp両端の電圧が反転するまで、ドレイン電圧が上昇します。Lp両端の電圧が反転すると、図1cで2次側ダイオードにバイアスが印加されますが、まだ2次側を循環する電流は流れません。Lpとlleakの両方にエネルギーが蓄積されるので、lleakは集中静電容量に強制的に電流を流し込み、集中静電容量は充電し続けます。直列接続のため、Lpとlleakを流れる電流は等しく、2次側ダイオードに流入する正味電流はゼロです。Dの導通が開始される時点のドレイン電圧は、次式のようになります。

 今度は、出力電圧がLp両端でフライバック、つまり帰線する形で降下します。したがって、フライバック・コンバーターという用語が使用されており、次式の通り、下向き勾配が適用されます。

 ドレイン・ノード電圧は、入力電圧にクランプレベルVclpを加えた値に達するまで上昇し続けます。この時点で、図2aに示す通りクランプ・ダイオードが導通します。ドレイン・ノード電圧はVin+Vclpの値にとどまるので、Vclpに起因する成分を除き、漏れ電流はClumpに流入しなくなります。集中静電容量の電荷は漏れインダクタンスからエネルギーを吸収し、この時点でVclpを循環する電流は、元の1次側ピーク電流よりわずかに小さくなります。

図2:集中コンデンサーがVin+Vclpの値まで充電されるとクランプ・ダイオードが導通 (クリックで拡大)

 スイッチが開いた時点のピーク電流はIp1であり、この回路に蓄積されている総エネルギーは次式のようになります。

 クランプ・ダイオードが導通を開始した時点で、集中静電容量に蓄積されているエネルギーは次式のようになります。

 この時点で、回路に蓄積されているエネルギーには、次式のような集中静電容量による寄与分が含まれています。

 ここで、Ip2は集中静電容量の充電後の循環電流です。式(6)で表されるエネルギー量は、Clumpに伝送された成分を除いて変化しません。従って、次のようになります。

これらの式を組み合わせると、

Ip2についてこの式を解くと、次式が得られます。

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