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漏れインダクタンスを使用したフライバックコンバーター(1)ハードウェア概要電源設計(5/5 ページ)

» 2016年12月15日 11時00分 公開
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ハードウェア検証

 分析結果を確認するために、外部インダクターを追加することにより、漏れインダクタンスを人為的に1次側インダクタンスの2.5%に高めた簡潔な固定デューティ比フライバックコンバーターを構築しました。図9に、MOSFETのドレイン電圧および2次側ダイオードの電流を示します。想定されるように、スイッチが開いた時点では、2次側で直ちに電流が増加するわけではありません。これは漏れインダクタンスの消磁時間に起因する遅延です。画像の右側では、急峻に下降するドレイン電圧に比べて、ダイオードの波形がわずかに遅れていることが分かります。これはゼロから谷電流までの漏れインダクタンス磁化時間に相当します。図10の拡大図から、62ナノ秒の導通時間を確認できます。MOSFETのターンオン・イベントはvDS(t)の立ち下りに十分同期しますが、Lpの磁化サイクルは実際のところそれより62ナノ秒後に開始されます。この62ナノ秒の間、MOSFETがオンになっているにも関わらず、Lpは消磁状態を維持します。この現象はここではかなり短く、明らかに無視できます。ただし、アクティブ・クランプ・アーキテクチャのために、大幅な遅延が発生することをはっきり観察できます。

図9:プロトタイプでキャプチャーした波形。2次側の遅延と2次側ダイオードの導通時間のわずかな延長を示す (クリックで拡大)
図10:立下りエッジの拡大図。2次側ダイオードの持続時間が62ナノ秒だけ延長されたことを示す (クリックで拡大)

 図11で、2次側電流の遅延を明確に確認できますが、漏れインダクタンスのリセット時間を評価することも可能です。これはスイッチ開放イベント発生後のドレイン電圧プラトーにおいて、安定状態が持続する時間に相当します。この例では、このイベントは217ナノ秒間継続します。このオーバーシュートはかなり大きくなる場合があり、またクランプ・ダイオードの順方向遷移時間に依存します。MOSFETのBVDSSに関するワーストケースマージンを評価する際に、このことを考慮する必要があります。RCDダイオードがブロックされると、漏れインダクタンスとClumpが関係する高周波リンギングが発生します。これらの発振は深刻な放射を招き、EMIシグニチャーに影響を及ぼす可能性があるので、時にはこれらの発振を減衰させる必要があります。RCDクランプが関係するループが非常に短いことおよび、そのループがトランスの近くに配置されていることを確認してください。数十オームの抵抗を1本ダイオードに直列に配置すると、このような発振を減衰させるのに役立ちます。

図11:ドレイン電圧の観察。特に漏れインダクタンスのリセット時間に関する情報が得られる (クリックで拡大)

 このオシロスコープ波形では、漏れインダクタンスがすぐにリセットされるので、遅延が持続するのは短時間です。ただし、アクティブ・クランプ・コンバーターでは、ターンオフ時にlleakとCclampに関係する共振が発生し、自然な動作として、オフ時間と共にリセット時間も延長されます。この共振は、CCM動作の場合でも2次側で滑らかな不連続な波形を誘発します。

まとめ

 この第1部では、フライバックコンバーターの波形が漏れインダクタンスの影響を受けることを説明しました。実効デューティ比は、漏れインダクタンスにエネルギーを蓄積するのに必要な時間が原因で減少します。また、1次側インダクタンスの消磁時間はこれと同じ時間だけ延長されます。DC伝達関数も影響を受けることから、新しい式が導出されました。これらのイベントはフライバックコンバーターでは小規模であり、密結合トランスでは視覚化するのが困難な場合があります。ただし、アクティブ・クランプ・コンバーターでは、かなりの持続時間に及ぶ可能性があります。続く第2部では、漏れインダクタンスに起因する小信号への影響に注目します。


参考資料
1.C. Basso, "Switch Mode Power Supplies: SPICE Simulations and Practical Designs", second edition, McGraw-Hill 2014, ISBN 978-0071823463

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