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» 2017年01月13日 11時00分 UPDATE

デジタルマイクロミラーデバイス:モバイル分光計を可能にする2次元MEMSアレイ (1/2)

化学組成を検出できる分光計を電池駆動で携帯できる小型サイズで実現するテクノロジーを紹介する。デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を空間的な光変調器として使うことで、従来の分光法アーキテクチャの欠点を解消し、モバイル分光計を実現する。

[Mike Walker(Texas Instruments)/Hakki Refai(Optecks),EDN]

近赤外線(NIR)分光法を用いた分光計システムが小さくなれば

 近赤外線(NIR)分光法を用いた分光計システムが、携帯のしやすさと、研究室用の高性能の精度や機能を併せ持つようになれば、リアルタイム分析が大幅に強化されることになります。電池動作で小型のハンドヘルド分光計は、産業用プロセスのモニタリングや食品の熟成の評価を、フィールドでより効率的に行えるようにするでしょう。

研究室やフィールドで、化学組成の査定で活用される分光計

 ほとんどの分散IR分光計はこれまで、同様の道筋で進化してきました。計測する光は、測定の分解能を制御するための格子と、組み合わされた小さなスリットを通過します。この回折格子は、複数の特定の波長の光を、それぞれ一定の角度に反射するよう設計されています。この異なる波長の空間的な分離によって、それぞれの波長の光強度を計測するシステムを実現しています。

 従来の分光計用のアーキテクチャでは、分散光計測の主な手法が異なり、一般的な方法としては「【1】単一エレメント(または単一ポイント)の検出器に物理的な分散光のスキャンを組み合わせたもの」と、「【2】検出器アレイで分散光のイメージングを行うもの」がありました。

MEMS技術を使う手法

医薬品の分析のために活用される分光計

 Micro-Electro-Mechanical Systems(MEMS)アレイ光学技術をベースとし、単一ポイントの検出器を使う新しい手法は、従来の分光手法が抱えた多くの課題を解決できます。ソリッドステートの光学MEMSアレイは、従来の単一ポイント検出器とモーター駆動方式の格子を、簡素な空間波長フィルターに置き換えます。この手法は、モーター駆動の精密制御の問題を解消すると同時に、単一ポイント検出器の数々の性能の利点を活用できます。近年、格子スキャンなしで、MEMSデバイスが特定の波長をフィルタリングし、単一ポイント検出器に導くことで、格子スキャンが不要なシステムが構成されています。この手法は、高性能を発揮すると同時に、よりコンパクトかつ堅固な分光計を可能にします。

 光学MEMSアレイは、リニアアレイ検出器と比較して、数種類の利点を提供します。まず、より大型の単一エレメント検出器を使って集光機能を向上することで、特に赤外領域向けの分光計ではシステムコストと複雑さを大幅に低減できます。また、アレイ検出器が不要なことから、ピクセル間のノイズがなくなり、信号−雑音比(SNR)性能が大幅に向上します。SNRの向上によって、より高精度の計測が、より短時間で可能になります。

 MEMS技術を搭載した分光システムでは、回折格子と集束エレメントは従来通りの働きをしますが、集束エレメントからの光はMEMSアレイ上に像を結びます。解析する波長を選択するには、特定の帯域の分光特性のミラーで光を反射させ、単一ポイント検出エレメントに光を直接入力することで、集光と計測を行います。

 使用時間や周囲温度に対して高い信頼性と予測可能なフィルター性能を提供できるMEMSデバイスによって、数々の利点を活用できるようになります。

 分光計のシステムアーキテクチャ内でDLPチップやDMDを空間的な光変調器として使うことで、いくつかの問題を解決できます。まず、幅広い波長で高い反射率のアルミニウム製デジタルミラーアレイが、単一ポイント検出器への光をオン/オフします。次に、デジタルミラーのオン/オフは、機械的なヒンジとSRAMセルによるラッチ回路によって、定電圧によるミラーの制御を行います。この定電圧制御によって、機械的なスキャンやアナログの制御ループが不要になり、校正の簡素化が可能になります。さらに、分光計の設計において、温度変化、時間経過による劣化や振動などの誤差要因に対する耐久性の向上も可能になります。

DLP技術を搭載した分光計の動作の様子

 DMDはプログラマブルであることから、数多くの利点を提供します。その1つは、複数のミラー列をフィルターとして指定するアーキテクチャを設計できることです。通常、DMDの分解能は計測したいスペクトラムよりも高いことから、DMDアレイを分割して一部だけを使用でき、そのスペクトラムをオーバーサンプリングできます。これにより、波長の選択を完全にプログラムできるとともに、光エンジンに補正不可能な機械的な変化が発生した場合、予備のマイクロミラーを再校正し、代替のミラー列として使用できます。

 またDMDは2次元のプログラマブルアレイであることから、高度な柔軟性を提供します。分解能とスループットは、ミラー列の本数を選択することによって調整できます。スキャン時間を動的に変更できることから、目的とする波長をそれ以外よりも長く吟味し、より詳細に測定でき、機器の稼働時間や機能を有効に使用できます。さらに、アダマールパターンの適用をはじめとした進歩したアパーチャーエンコーディング手法は、固定フィルターの実装と比較して、高度な柔軟性と性能の向上が可能です注1)

 まとめとして、DMDデバイスを搭載した分光計は、現行の分光システムよりも高い分解能、柔軟性、堅ろう性、より小型のフォームファクターと低コストが可能であり、より広範囲の商用や産業用のアプリケーションに利点を提供します。

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