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» 2017年02月01日 11時00分 公開

めざせ高効率! モーター駆動入門講座(4):中国の最新市場動向から誘導モーターの高効率化について考えよう (1/3)

ここまでの3回を通して、モーターの駆動原理、高効率・長寿命を実現できるブラシレスDCモーターの高効率駆動、最も普及しているブラシ付きDCモーターの性能線図を元に、高効率駆動を実現するためには印加電圧位相を考慮する必要があることを解説した。4回目となる今回は、筆者が赴任している中国の市場動向を交えながら中国で多く使われている誘導モーターの動作原理・高効率駆動について解説する。

[吉冨哲也(ローム),EDN Japan]

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はじめに

 「新年快楽」(中国語で「新年あけましておめでとうございます」の意味)。何を今さらと思うかもしれないが、筆者が赴任している中国では、正月を旧正月(春節)に祝う。毎年旧正月の日付は変わり、2017年は1月28日が旧正月だった。旧正月前後の時期、中国では“民族大移動”が始まって、各地で大渋滞が発生する。また、旧正月の前後一週間は“お祝いモード”で仕事どころではない人がほとんど……。さて、今回は中国深センより、中国の電力事情や省エネへの取り組みを紹介しつつ、モーターの高効率化を考えてみたいと思う。

中国電力事情

 野村総合研究所によると、中国の電力消費量は2002年以降急激に伸び、2010年に米国を抜いたことで世界最大になった(ちなみに日本は米国に続く第3位の電力消費国である)。26億TOE(石油換算1トン分のエネルギー量)と世界全体の20%以上を占める中国の電力需要の75%は、PM2.5(微小粒子状物質)の原因にもなっている石炭による火力発電で賄っている。中国の電力需要の内訳は50%近くをモーター(工場、家庭用)で消費しており、引き続き高度成長を続けていくためにも(中国の経済成長は一時期より鈍化したとはいえ2015年も7%の成長を遂げている)、エネルギー問題、環境問題の解決は、中国において重要なテーマであり、省エネ化は“待ったなしの問題”となっている。

 また、2005年以降の中国は家電の生産量でも世界一である。例えばエアコンは、総生産台数の約1億3千万(2016年)の70%がここ中国製だ(Midea[美的]やGREE[格力]といったメーカーブランドが有名)。それに伴いモーター生産量も日本を追い抜き世界一の生産国となっている。大型家電(エアコン、洗濯機、冷蔵庫など)向けだけをとっても、4億4千万台と非常に多くのモーターがここ中国で生産されている。

図1:省エネ指標「中国能効標識」 図1:省エネ指標「中国能効標識」

 中国では、これらの家電販売に対して、図1のような“省エネ度“を示すラベルが貼られている。消費者は機能や価格だけでなくこの省エネ度を確認し、購入の参考にしている。この省エネ度に対応した政府からの補助金制度も幾度と実施されている。インバーター化され省エネ度の高いものがレベル1になるが、実は、同じインバーター搭載家電でも、レベル1の家電もあればレベル2の家電もある。レベルが異なるのはコンプレッサー、室外機ファン、室内機ファンで使用するモーターの種類が異なっているためである。エアコンの普及に伴い、中国におけるインバーター化比率は2016年に50%近くになったものの、まだまだ高効率な同期モーターやブラシレスDCモーターは使用されておらず、誘導モーターが主流だ。誘導モーターは、1900年代はじめから実用化されているACモーターの元祖。構造が簡単であり、かつ起動が容易で、コストも安い。高出力、高回転モーターに対応しやすいなどの特長もあり、中国だけでなく世界中のさまざまな産業で、まだまだ多く使われている。

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