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» 2017年02月01日 11時00分 公開

めざせ高効率! モーター駆動入門講座(4):中国の最新市場動向から誘導モーターの高効率化について考えよう (3/3)

[吉冨哲也(ローム),EDN Japan]
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インバーター技術

 さて、前述のように誘導モーターは、1900年以降、現在まで非常に多くの産業で使われている。それは単純に交流電源のオン/オフで始動/停止できるからであるが、実用化した直後は回転数を安定させたり、回転数を変えたりできなかった。それが1980年以降の電力用半導体デバイスの発展により、インバーター技術が普及したことで大きく進化した。

 モーターにとってインバーター技術とは、回転磁界を発電所の周波数から任意の周波数に変換する技術を指す。この技術により、それまで商用周波数による固定の回転しかできなかった誘導モーターを必要な時に必要な回転数、トルクを得られるようになり、省エネ駆動ができるようになった。同時に高効率な同期モーターの起動性を容易にすることができており、普及を促進している。

 インバーター技術は、下記の駆動方式の順で実現されてきている。

  1. 120度矩形波駆動
  2. 正弦波駆動
  3. さらにその正弦波駆動でも、ベクトル制御を行っているもの

 120矩形波駆動は、インバーターの初期に3相ブリッジを組む半導体デバイスが高い周波数でスイッチングができなかったことを理由に採用されていた。とはいえ、それまでできなかった回転数可変や同期モーターの起動が補助機構なしで可能となっている(図7)。

図7:インバーター技術 図7:インバーター技術

 このことから、インバーターはACを一度全波整流したDC電源から、インバーター回路(3相スイッチング回路)から回転磁界をターゲットの周波数、電流を作り出すことが可能な技術だとも言える。負荷に合わせた必要なトルク、回転数を制御することにより省エネ化を達成できる。ただし、この初期の段階では、モーターの回転子の位置は、フィードバックせずにオープン制御で動作をさせていた。

 今では半導体素子、特にIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の発展によりスイッチング周波数を高くする(20KHz以上)ことが可能になり、PWM(Pulse Width Modulation/パルス幅変調)によるトルク制御、正弦波駆動の技術が可能となっている(図8)。さらにベクトル制御(Field Oriented Control)技術により、負荷や回転子の状態を検知してフィードバックをかけ、高速演算処理により最適なトルク制御(d軸制御)を行うことで、低振動、低騒音、省エネ化を達成することができる。

図8:インバーターのPWM制御 図8:インバーターのPWM制御

 ベクトル制御を説明する資料は多くある(これらの資料は数式が多く並ぶため、見て見ぬふりをしている読者も多いかもしれないが……)。ベクトル制御技術のトルク制御は、前回までに説明してきた高効率駆動の基本と同様の考え方で理解できる。誘起電圧と駆動電流の位相差ゼロおよび、その時のモーター負荷に応じた電流値を高速演算処理が可能なマイコンを使うことにより制御している。この詳しい説明は、磁界いや、次回に述べたいと思う。

おわりに

 さて最後に、ここ中国のエネルギーに関するエピソードをもう1つ紹介しよう。中国政府は、政策としてEV(電気自動車)タクシー、EVバスをはじめとしたエコカーの普及を促進している。そのためのEV充電ステーションなどのインフラについても建設ラッシュとなっている。

 また、日本と違い環境悪化や交通渋滞問題への対応策として、都市部では自動車の販売台数規制が行われており、自家用車のナンバープレートはオークションで落札しなければならない都市も少なくない。しかもその落札額は高額で、筆者の住む深セン地区では日本円にして100万円のものもある。ただ、この手間が掛かる上に高額なナンバー取得に掛かる費用が、エコカーに限り無料だ。こうした背景からも、エコカーが普及し始めているのだ。中国は、家電やスマホと同様に、いまや車でも世界で1番の活気のある市場となったと感じている。


めざせ高効率! モーター駆動入門講座【第5回】:世界が注目するEVモーターの高効率化原理について考えてみよう


筆者 Profile

ローム シンセンデザインセンター所長
吉冨 哲也

 前職で、数十年にわたりモータードライバ回路設計、マーケティングに従事。

 現在は、ロームシンセンデザインセンター長として家電、産業機器、車載分野を中心に、新規顧客開拓やソリューションの提案、顧客サポート、FAEの人材育成に励んでいる。


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