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圧電ブザーを利用したハーベスター発電回路Design Ideas パワー関連と電源

今回は、入手が容易な圧電ブザーの圧電効果を利用して、機械的振動を電気エネルギーに変換する発電システムを紹介する。

» 2017年03月24日 11時00分 公開
[EDN Japan]

圧電ブザーの圧電効果を利用する

 エネルギー収集(ハーベスター)システムを利用すれば、熱や振動、RF波などを基に電力を生成することができる。ただし、残念ながら、生成できる電力の量は標準的な電池と比較すると極めて少ない。だが、今日の携帯機器はサイズとともに消費電力も格段に減少してきたことから、機器によっては電池による電力ではなく、ユーザーの周囲環境から収集したエネルギを基に生成した電力によって給電できる可能性が出てきた。例えば、ウオーキングやジョギングに伴って発生する振動エネルギを利用するのである。

 本稿で紹介するのは、入手が容易な圧電ブザーの圧電効果を利用して、機械的振動を電気エネルギーに変換する発電システムである。圧電ブザーの普通の使い方はAC電圧を印加して振動音を得るというものだが、本稿で紹介する回路では、それと逆のことを行う。つまり、振動をAC電圧に変換するのだ。このとき得られる電圧は、振動の周波数が圧電ブザーの共振周波数に一致するときに最大になる。

 発電システムの構成は、図1に示す通り、簡単なものである。圧電ブザーは振動を受けるとAC電圧を発生する。この電圧をDC電圧に変換し、コンデンサーに蓄積する。DC電圧への変換にはショットキーダイオード4個で構成したブリッジ整流回路を使用する。高い信頼性と高い効率を得るには、ショットキーダイオードとして、例えば米ON Semiconductorの「1N5820」などのように、順方向電圧が小さく、逆バイアスでのリーク電流の少ないものを使用する必要がある。

 一般に、ハーベスターシステムでは、少しずつのエネルギーを長期間にわたって蓄積していく。そのため、蓄電には、例えば米Cooper Bussmannの「PowerStor」(0.47F/2.5V)などの電気二重層キャパシターを利用することになる。キャパシター容量を大きくすると充電に時間がかかるが、それは負荷に対し長時間にわたって電力を供給できることも意味する。電気二重層キャパシターは、標準的な電解コンデンサーよりも許容できる電圧がはるかに低い。

 そのため、許容値以上の電圧が加わらないよう、例えば「BZX85-C2V7」などのツェナーダイオードを図1のように並列に接続しておく必要がある。負荷が接続されると、電気二重層キャパシタは放電を始め、電圧が低下する。出力電圧を一定に保つには、米Maxim Integrated Productsの「MAX1675」などの昇圧型DC-DCコントローラーICを使用する。昇圧型コントローラーICを使用することにより、電気二重層キャパシターの電圧が低下した場合でも、コントローラーICの入力下限電圧以上であれば安定した出力の供給が可能である。例えば、MAX1675の入力下限電圧は0.7Vとなっている。

図1 振動エネルギーを利用する発電回路
この回路では、汎用圧電ブザーによって機械的エネルギー(振動)を電気的エネルギーに変換することで発電を行う。

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。

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