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» 2017年03月31日 11時00分 UPDATE

中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(6):フェライト(6) ―― トランス・チョークの設計 (2/3)

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]

RCC用トランスの設計例

 ここまで検討してきた計算式を用いて実際にRCC用トランスのコアの仕様を検討します。このRCCの特徴として電力Pや動作電圧Eによって時比率δや発振周波数fが連続的に変化しますのでコアの仕様を計算する前に動作電圧Eや電力Pの上下限について動作条件を算出、確認する必要があります。

 通電時比率δは、磁束のバランス条件から、
   1次巻回数Np   1次(動作)電圧E
   2次巻回数Ns   2次電圧Vs
とした場合には、

で求まり、δは動作電圧Eに対して非直線的に変化することになります。ただし、δは比率ですので電力Pには左右されません。
 Np、Nsは整数ですので、6式を変形した7式で最も近い2次巻回数Nsを求めておきます。

 δを大きく(Np大、Ns小)すると1次側のピーク電流は抑えられる反面、1次側の電圧ストレス、2次側のピーク電流が大きくなりますので、表1のようなAC90~132Vの入力電圧範囲の仕様では経験的には定格入力時にδ=0.35程度に選びます。

 100V~230V入力仕様、バッテリー駆動などでは使用半導体の電圧・電流定格を考慮して巻数比を選定してください。そして、Np、Nsが決まったら、最後に6式を用いてδを再計算します。

 ここでは表1に示す事例について下記の手順で計算していきます。

表1:設計条件一覧
動作条件 動作停止時 AC90V AC100V AC132V
動作電圧E(VDC) 75V 100V 130V 185V
発振周波数 30KHz
時比率δ 0.35
出力電圧Vs 25.5V0-P(24VDC*)
最大電力P 90W(24V 3.75A)
使用コア JIS-FEER35A Ae=107mm2
*)ダイオードのVFを1.5Vと見込んでトランスの巻線電圧は25.5Vとしています

[設計条件]
・動作電圧:100VDC〜185VDC
・出力電圧:24VDC
・最大電力:90W(24V・3.75A)
・動作停止電圧:75VDC
・最低発振周波数:30KHz/75VDC
・定格入力時のδ:0.35/130VDC
・使用コア:JIS-FEER35A(TDK-PC47EER35Z)

 表1の「」で記載したところは数値が規定されていませんので最初にこの項目を完成させていきます。
 なお、ここで扱う最大電力Pは過電流保護回路が動作する時の電力ですから、連続して安定的に取り出せる最大電力はこの値の80%程度になります。(約24V3A 72W)

1)任意の電圧EX時のδXを計算します。
 6式を指定のE1、δ1と任意のEX、δXの2つの条件の連立で解けば8式が得られます。

 例えば75V時にはδ=(0.35×130)/(0.35×130+0.65×75)=0.483となり、動作停止時の時比率δは動作範囲の中で最大になりますので最大時比率δMAXと呼ばれます。そして、各動作電圧におけるδが求まればそれぞれの発振周波数を求めることができますので表2のように表を完成させることができます。

2)ギャップ長を設定します。
 パワーファクタKPの最大値は4式からKP=2×90/30KHz=6×10-3です。
 しかし、この値には部品のバラツキが一切含まれていませんので実際の設計に当たってはバラツキを考慮する必要があります。インダクタンス(=周波数)のバラツキを±10%、効率や回路定数のバラツキを±20%程度見込んだ時の必要なKPを、
 KP=6×10-3×1.1×1.2=7.92×10-3
 として計算を進めます。

 コア(TDK PC47EER35Z)の各特性曲線の実測式から導いた9(a),(b),(c)の各式から最終のlg、AL、N・Isatを求めます。

3)Np、Nsを求めます。
 1次インダクタンスLは3式から(75×0.485)2/(2×30K×90)=243μHと求まります。

 Npが決まれば7式から、

とNsの巻回数を決めることができます。

4)Np、Nsが決まりましたので3式6式でδやL値を再計算します。

5)2式、または3式にて発振周波数fを確認します。

6)最低動作電圧(75V時)の1次巻線電流ピーク値IPを計算し、コアのN・Isatと比較します。(90W時)

 表2に計算結果をまとめますが、KP値やN・I値に所定の余裕がありますので要求仕様を満たしていることが確認できます。(太字部分が計算で求めた項目です)

表2:設計条件の完成
動作条件 発振停止 AC90V AC100V AC132V
動作電圧E(VDC) 75V 100V 130V 185V
仮発振周波数 30KHz 38.9KHz 47.4KHz 59.0KHz
仮時比率δ*1) 0.483 0.411 0.35 0.275
Lp 243μH
使用コア JIS-FEER35A Ae=107mm2
コア特性*2) lg=1.0mm AL=169(nH/T2) N・I=215(AT)
出力電圧Vs 25.5V0-P (24VDC)
最大電力P 90W
巻回数*3) Np=38T Ns=14T
L*4) 244μH
時比率*4) 0.480 0.409 0.347 0.272
90W時発振周波数*5) 29.5KHz 38.1KHz 46.4KHz 57.7KHz
72W時発振周波数*5) 47.6KHz 58.0KHz 71.5KHz
飽和起磁力*6) IP=5.0Ap    N・I=190AT

[巻線仕様について]
 トランスとして巻線仕様(ボビン、巻き線線径、線種、絶縁距離、各種テープ材質など)を確定させるには安全規格の知識が必要になりますが法律に関係しますので安易な説明はできません。機会があればシリーズを変えて説明したいと思います。

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