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» 2017年04月10日 10時00分 UPDATE

3つの進化を遂げた第2世代HiSAT-COTに迫る:1.0V以下の低電圧を高精度、高速に供給できるCOT制御方式DC-DCコンバーター

FPGAやマイコン、各種SoCは、さらなる低消費電力化に向け、動作電圧を下げつつある。近い将来、コア電圧は1.0V以下になることが予想され、こうしたデバイスに電源を供給するスイッチングレギュレーターは、一層の高精度、高速過渡応答特性が求められる。そうした中でトレックス・セミコンダクターは、コア電圧1.0V以下時代のニーズに応えられる制御技術「第2世代HiSAT-COT」を開発し、製品への搭載を開始した。第2世代HiSAT-COTとは、一体どのような技術なのか――。

[PR/EDN Japan]
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トレックス独自のスイッチング制御方式「HiSAT−COT」

 1.0V以下の低電圧を±1%精度で供給できるCOT制御のスイッチングレギュレーター(DC-DCコンバーター)が登場した――。

「XC9273シリーズ」

 トレックス・セミコンダクターはこのほど、高速過渡応答に優れるCOT(Constant On Time)制御方式を採用したスイッチングレギュレーターとして、−40〜+105℃の動作温度範囲で0.8〜3.6Vを±1.0%精度で出力できる「XC9266シリーズ」「XC9273シリーズ」を開発し、量産出荷を開始した。

 さまざまなスイッチングレギュレーターの制御方式が存在する中で、昨今、注目を集めているのがCOT制御方式だ。COTとは「Constant On Time」の略で、スイッチングのオン時間を一定にする制御方式という意味だ。

PWM制御方式とCOT制御方式の違い

 最も一般的なスイッチングレギュレーターの制御方式であるPWM(パルス幅変調/固定周波数)制御方式は、スイッチングをオンするタイミングを一定間隔(=一定周波数)に保ちながら、スイッチングのオン時間(=パルス幅)を調節し、所定の出力電圧を得る。一方、COT制御方式は、スイッチングのオン時間を一定にし、オンするタイミング(=周波数)を調節し、所定の出力電圧を得る(PFM[パルス幅固定/可変周波数]制御方式の1つで、オン時間を一定で出力電圧を制御する方式を、一般的にCOT制御方式と呼ぶ)。

 このCOT制御方式の最大の特長が、過渡応答に優れる点である。

 負荷が大電流を必要とした場合、瞬間的に電圧が低下してしまう。そのため、スイッチングレギュレーターはスイッチをオンにして、電圧レベルを回復しなければならない。しかし、PWM制御方式では、オンするタイミングはあらかじめ決まっており、出力電圧が低下した次のスイッチをオンするタイミングまで電圧レベルの回復を待たなければならない。一方で、COT制御は出力電圧を常に監視し、出力電圧が下がれば瞬時にスイッチをオンするため、高速過渡応答性に優れているのだ。

 昨今のマイコンやDSP、FPGAなどのシステムLSIは、消費電力を低減するために頻繁に動作モード、すなわち消費電流量を変える。こうしたシステムLSIに対し、一定電圧を供給し続けなければならないスイッチングレギュレーターもそうしたシステムLSI(=負荷)の動作モードの切り替えに追従しなければならない。そのため、高速過渡応答に優れるCOT制御が注目され、電源ICメーカーもCOT制御を用いたスイッチングレギュレーターを相次いで製品化している。

より高速性を極めたCOT制御

 トレックス・セミコンダクターもその1社で、2013年からより高速過渡応答を追求した「HiSAT-COT」と呼ぶ、独自のCOT制御技術を用いた製品を提供している。

 一般的なCOT制御方式は、基準電圧と出力電圧をコンパレーターで比較し、出力電圧が基準電圧を下回った場合にスイッチをオンする制御を行う。これに対しHiSAT-COTは、コンパレーター前段にエラーアンプを配置し、基準電圧と出力電圧の信号を増幅させてから、コンパレーターで比較する回路構成を採用。出力電圧が基準電圧をわずかに下回っただけでも検知でき、より高速な応答が可能になる。ただし、コンパレーターと比較し、エラーアンプ+コンパレーターの構成になる処理が1つ増えるため動作遅延が懸念されるが、トレックス・セミコンダクターではエラーアンプ+コンパレーター構成でもスイッチング周波数の高周波化により動作遅延/懸念事項を克服済みだ。

1.0V以下の世界に対応

マイコンやFPGAのコア電圧は、1.0V以下に低下する見込み

 COTよりも高速過渡応答を追求したHiSAT-COT制御技術を使用したスイッチングレギュレーターは、さまざまなシステムLSIのPOL(Point of Load)電源として採用され、出荷数を順調に伸ばしてきた。しかし、最近では「高速過渡応答特性のHiSAT-COTで、1V以下の低電圧を高精度出力できないか、という要望が多く寄せられるようになった」。なぜなら、マイコンやDSP、FPGA、各種SoCは、消費電力の低減のため、動作モードの頻繁な切り替えに加え、動作電圧自体を下げる動きが加速しているためだ。例えば、電圧1.2V、電流1Aと1.2Wで行った処理も、電圧を0.8Vに下げるだけで0.8Wに下げられる。動作電圧の低減が消費電力抑制に有効なことが分かるだろう。

 ただし、電力を供給するスイッチングレギュレーターにとって、供給電圧を下げることは簡単ではない。通常、システムLSIなどの電源電圧は、±1%精度の電圧供給を求める。つまり、1.2Vの動作電圧には1.2V±12mVの範囲内の電圧を供給する必要があり、この場合スイッチングレギュレーターに許される出力変動幅は24mVだ。これが0.8Vの±1%になると、±0.008V、16mVの出力変動幅になる。スイッチングレギュレーターはより一層、高精度な出力電圧を保つ必要が生じているのである。

 トレックス・セミコンダクターでは、高精度に低電圧を出力でき、かつ、一層の高速過渡応答を実現する技術の開発に着手し、このほど「第2世代 HiSAT-COT」として製品への搭載を開始した。

 より高精度、高速応答を目指し開発した「第2世代 HiSAT-COT」は、従来の「第1世代 HiSAT-COT」から主に3つの進化を遂げた。

3つの進化ポイント

高精度出力に向けた2つの進化

 1つ目は、HiSAT-COTのコアとも言えるエラーアンプ付きコンパレーター回路の改良だ。一層の回路最適化を図り、応答特性のさらなる高速化・安定化を行った。

第1世代HiSAT-COT(左)と第2世代HiSAT-COT(右)の出力電圧特性比較

 2つ目は基準電圧(Vref)回路の改良だ。第1世代HiSAT-COTでは、25℃前後で所望の基準電圧値となる特性の回路を採用していて、その結果、周囲温度が25℃から離れれば離れるほどに、基準電圧は所望の電圧値から遠ざかり、出力電圧精度が悪化した。

 そこで、トレックス・セミコンダクターは、第2世代HiSAT-COTの基準電圧回路として「温度特性の異なる2つの基準電圧回路を連続的に接続した回路」を採用した。主に低温環境で基準電圧が一定な基準電圧回路と高温環境で基準電圧が一定な基準電圧回路を組み合わせることにより、−40〜+105℃の動作温度範囲でフラットな基準電圧を実現した。

 エラーアンプ付きコンパレーター回路、基準電圧回路の改良により、1.0V以下の低電圧出力でも全温度範囲で±1%の出力電圧精度のスイッチングレギュレーターを実現した。

 第2世代HiSAT-COTを用いた出力電流3.0A対応のスイッチングレギュレーター「XC9273」は、出力電圧範囲0.8〜3.6V(入力電圧範囲は2.7〜5.5V)。全温度範囲で、フィードバック(FB)電圧精度±1.0%(FB電圧0.6Vで±0.006V以下)という高精度特性を達成している。

 もちろん、高速過渡応答性も健在だ。XC9273のスイッチング周波数3MHz品を例に挙げると、5V入力を1.8Vに変換する条件下で負荷電流が0.1Aから2A、2Aから0.1Aへ変動した際の出力電圧変動幅は20mVで、1.8V出力に収束するまでの時間は、わずか3マイクロ秒だ。従来のPWM制御方式スイッチングレギュレーター(2.4MHz)を同条件で計測すると、出力電圧変動幅は120〜175mVで、収束時間は30マイクロ秒。XC9273を使えば、出力電圧変動は6分の1に抑えられ、応答時間を10倍速められるということだ。

第2世代HiSAT-COT(左)とPWM制御方式(右)での過渡応答特性の比較

コスト、サイズの犠牲なく高速過渡応答を実現

XC9273のリファレンスボード

 しかも、この優れた出力電圧精度、高速過渡応答特性は、小容量、小型サイズの外付け部品で得られる。発振周波数3MHzのXC9266を例に挙げると、0.22μHの小型インダクター、44μFの入出力コンデンサーを用いて電圧変動80mV(VIN=5.0V, IOUT=1.8A 負荷:0.1A⇒6.0A時)、収束時間10マイクロ秒の電源回路を45mm2のフットプリントで実現できる。

 このフットプリントは、競合するCOT方式スイッチングレギュレーターより35%小さく、電圧精度、応答性も優れている。「リップル電圧や過渡応答性を改善するため、コンデンサーの容量を大きくせざるを得ないため、サイズ、コストの増大が問題になっているが、HiSAT-COTはそうした問題も解決できる」(トレックス・セミコンダクター)

3つ目の進化「周波数安定性の向上」

 より高速、より高精度になった第2世代HiSAT-COTの進化はこれだけではない。3つ目の進化は、周波数安定性の向上だ。

 一般的なCOT制御は負荷電流に応じてスイッチングするため、スイッチング周波数が一定ではない。従って、軽負荷時はスイッチング周波数が低く、重負荷時はスイッチング周波数が高くなる。一般的なCOT制御レギュレーターの周波数変動幅は、全負荷範囲で「スイッチング周波数は30%程度違ってくる」という。つまり軽負荷時は3.0MHzで動作するが、重負荷時は3.9MHzで動作するということであり、ノイズ対策が難しくなる。

 トレックス・セミコンダクターでは、このCOT制御ゆえの弱点である周波数変動を抑える技術を第1世代HiSAT-COTから導入してきた。

 重負荷時にスイッチング周波数が高くなる要因の1つが、スイッチング素子(MOSFET)のオン抵抗の存在だ。MOSFETのオン抵抗による損失は、負荷が重くなるにつれて大きくなり、損失が大きくなればなるほど、その損失分を補おうとスイッチング素子をオンするタイミングは速くなる。この悪循環を繰り返すため、スイッチング周波数がより上がってしまうのだ。

 トレックス・セミコンダクターの周波数抑制技術は、このオン抵抗による損失分を考慮して、スイッチング素子のオン時間を延ばすテクノロジーだ。オン時間固定のCOT制御に対し、オン時間を可変させるのがHiSAT-COTであり、周波数安定性の良さもHiSAT-COTの特長だ。

 この周波数安定技術を盛り込んだ第1世代HiSAT-COTでは、全負荷範囲で周波数変動を数%に抑え「PWM制御方式のレギュレーターと同様のノイズ対策で済むレベル」を実現した。ただし、「1.8Vや3.3Vなど、一般的な出力電圧での使用時に周波数が安定するようにオン時間補正回路を最適化していたため、出力電圧によっては、大きく周波数が変動してしまう場合もあった」と打ち明ける。

 そこで第2世代HiSAT-COTでは、どの出力電圧でもスイッチング周波数を安定させるため、MOSFETのオン抵抗低減に取り組むと同時に、オン時間補正回路の改良も実施。これまでは、ハイサイドのスイッチング素子(PチャンネルMOSFET)のみオン時間を調整していたが、ローサイドのNチャンネルMOSFETについても、オン抵抗による損失分も考慮しオン時間を調整するように、回路を改良した。

 その結果、第1世代HiSAT-COTでは、発振周波数1.2MHz、0.8V出力条件で負荷に応じ500kHz程度の周波数変動が見られたが、第2世代HiSAT-COTは低出力での周波数変動は100kHz以内に抑制され、あらゆる条件下で、PWM制御方式と同程度の周波数安定性を発揮するCOT方式レギュレーターを実現した。

第1世代HiSAT-COT(左)と第2世代HiSAT-COT(右)の周波数変動比較

最大出力電流6A対応品など、ラインアップを強化中

 第2世代HiSAT-COTは、こうした3つの進化を遂げたことにより、あらゆる入出力条件、温度条件下でも、高速な過渡応答、高い精度、そして優れた周波数安定性を発揮するスイッチングレギュレーターを実現し、「XC9266シリーズ」「XC9273シリーズ」の2つの製品シリーズに搭載し、量産出荷を始めている。

 XC9266シリーズ、XC9273シリーズはいずれも、入力電圧範囲2.7〜5.5V、出力電圧範囲0.8〜3.6Vに対応。XC9266シリーズは出力電流が最大6A、XC9273シリーズは同3A。両製品ともパッケージは、4.0×4.0×0.75mm、24ピンQFNパッケージを採用し、発振周波数1.2MHz品と3.0MHz品から選択できる。

 トレックス・セミコンダクターでは、XC9266シリーズ、XC9273シリーズ以外にも、第2世代HiSAT-COTを搭載したスイッチングレギュレーター(DC-DCコンバーター)製品の開発を進めており、「間もなく、より汎用的なパッケージであるSOP-8FDを採用した製品や、より小さな実装面積を実現するパッケージ品を投入し、ラインアップを拡充する計画」としている。

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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年5月9日

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