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» 2017年05月22日 11時00分 UPDATE

高速シリアル伝送技術講座(1):PCIe、USB、Ethernet、HDMI、LVDSなど高速伝送技術の基本を理解するために (1/5)

本連載では、さまざまな高速通信規格に使用されている物理層の仕組みや性能、SerDesの機能や特徴とその種類、高速伝送での主要なパラメーター、伝送路を含んだ技術や設計手法などを分かりやすく解説していく。

[河西基文(ザインエレクトロニクス),EDN Japan]

はじめに

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 最近、一般のPC用途向けに10Gビット/秒(bps)程度の高速シリアル伝送規格が複数発表され、シリアル伝送に関する技術革新が非常に速いスピードで進んでいると感じる方も多いと思います。確かに一昔前では2〜3Gbpsのシリアルスピードでもとても高速な印象がありましたが、表1のようにPCI Express Gen3(8Gbps)、USB3.1 Gen2(10Gbps)、Thanderbolt1(10.3Gbps)、10G Ethernet、Display Port(8.1Gbps)など 現在では10Gbps前後の高速通信規格が数多く存在しています。

 なぜ、このように多くの高速シリアル伝送規格が同時期に登場したのでしょうか? 

 これらは各規格の独自の技術で、それぞれの技術を使用しないとそのシリアル伝送速度は達成できないのでしょうか? それとも各規格に共通の技術があるのでしょうか? 共通の技術があるとすれば各規格は似たようなものなのでしょうか? 電気的特性はどのぐらい違いがあるでしょうか?

 おそらく読者の皆さんも、こうした疑問に、興味をお持ちだと思います。

表1:高速規格
規格 レーン数 1レーン
当たりの帯域
総帯域 物理層 コーディング AC/DC
接続方式
PCI Express 1/2/4/8/16/32 2.5/5/8Gbps 160Gbps CML 8B10B、128B130B AC
USB 3.1 1 5/10Gbps CML 8B10B、128B132B AC
HDMI 3+1CLK 1.65/2.7
3.4/6Gbps
4.95/6.75
10.2/18Gbps
TMDS
(CMLライク)
TMDS8B10B DC
SATA 1 1.5/3/6Gbps CML 8B10B AC
Display Port 1/2/4 1.65/2.7
5.4/8.1Gbps
6.6/8.64
17.28/32.4Gbps
CML 8B10B AC
10GBASE-xR 1 10.3125Gbps CML 64B66B AC
Thunderbolt2 2 10.3125Gbps 20.63Gbps CML 64B66B AC
SDI 1/2/4/8/16 0.27/1.485
2.97/11.88Gbps
〜190Gbps CML PRBSスクランブル AC
LVDS SerDes 8/10/20+1CLK 〜1Gbps(可変) 〜20.72Gbps LVDS なし(7逓倍) DC
V-by-One HS 1/2/4/8 〜4Gbps(可変) 〜32Gbps CML 8B10B AC
汎用 自由 〜3Gbps
   (LVDS)
〜28Gbps
   (CML)
×レーン数 LVDS/CML/PECLなど 8B10B、エンベデッドクロック AC/DC

 各規格の高速伝送部分の本質が同じであるとすると、信号伝送のための技術や手法も共通性があると言えます。

 本連載「高速シリアル伝送技術講座」では、これら各種高速通信規格に使用されている物理層の仕組みや性能、SerDesの機能や特徴とその種類、高速伝送での主要なパラメーター、伝送路を含んだ技術や設計手法などを分かりやすく解説していこうと思います。

 エンジニアの皆さんはこれら高速伝送に関係する知識を身に付けることで、規格にとらわれない柔軟でよりよい設計ができるのではないかと思います(これら情報が皆さんの製品開発の手助けになることを期待しています)。

高速伝送の要の技術――物理層とは?

 皆さんご存じのように各種高速規格はシリアル伝送で片方向もしくは双方向の通信を行っています。このシリアル伝送で重要な技術が物理層で図1のOSI 7階層参照モデルの最下位に位置しています。

図1:OSI7層参照モデルの概念図とTCP/IP 4層モデル

 OSI 7階層参照モデルとは、国際標準化機構(OSI)により策定されたコンピュータシステムが持つべき通信機能を7つの層に分類したモデルです。

 ハードウェアからソフトウェアまで全てを独自で設計するよりも、このモデルを参照し各層に分けて通信システムを構築することで、より効率的な設計が可能になります。現在のように各種ネットワークOS、ソフトウェアやドライバ、ハードウェアの自由な組み合わせで問題なく通信できるのも、この階層構造の恩恵と言えます。

 現在の通信を行う各種規格もこの層構成を基に成り立っていて、既にある各層の技術を取り入れたり、変更したりすることが容易になりました。ネットワーク通信に使用されるTCP/IPは4つの階層モデルに分かれていますが、OSI 7階層で分類すると図1の左のようになります。TCP/IPはこの階層化の考え方でネットワークソフトウェア、ハードウェアの共通化や低価格化が実現し、市場が大きく広がりました。

 物理層はこのOSI 7階層の最下位に位置し,リンク確立とデータ転送を担うデータリンク層から受け取ったデータを特定の信号方式にして媒体(伝送路)に送る役目です。フィジカルレイヤーとも呼び、主に符号化や電気信号の仕様、ケーブルなどの媒体を定義しています。連載第1回目はこの第1層、物理層の技術について解説します。

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