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ヒューズ(2) ―― ヒューズの選定方法中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(8)(2/3 ページ)

» 2017年05月31日 11時00分 公開

ヒューズのI2tーT特性と電流波形

図1:電流波形の例※1

 連続電流以外にもヒューズ選定時に考慮しなければならない項目として表1に挙げたのヒューズのIーT特性とI2tーT特性があります。
 ヒューズの代表特性であるI-T特性は、ある一定電流を流し続けた時のヒューズが溶断するまでの時間をグラフにしたものですが、実際の機器において電流が一定であるということはほとんどなく、多くの場合、図1に示す電流波形のような振動を伴う波形となります。

 このままでは溶断特性のI-T特性を当てはめることはできませんし、ピーク電流が一定時間続くと仮定した時には過剰スペックになり、今度は異常時に溶断しなくなります。このため、実際の電流波形の判定にはより現実に適したI2t-T特性が使われます。

 I2tーT特性とは瞬時の電流値Iを2乗し、その値を累積(積分)したもので、
   {(I2・R)/R}×t⇒(P×t)/R と考えれば、
抵抗Rに印加されるエネルギー(J)に比例する値です。つまり、この曲線はデバイスの破壊エネルギーに関係する曲線なのです。電流波形が複雑でも累積エネルギー値として評価すればよく、波形に依存せずに判定ができます。

図2:I2t-Tによる判定※1

 例として、図1の電流波形に対してヒューズが溶断せず耐えるか否かを考えます。この場合は簡易的にはノコギリ波状の各ピーク電流値を矩形波状に細分化し各区間のI2・tを算出して累積すればよく、それをヒューズのI2t-Tグラフに重ねてプロットしたのが図2です。この図からFuse-Aは溶断すること、そしてFuse-Bは電流波形のI2tがヒューズのI2t-T曲線を越えないので溶断しないことが分かります。

 I2tーT曲線を提出してもらえない場合は図3の手順で作図する必要がありますがメーカーの資料ではありませんので取り扱いについては注意が必要です。このI2t-T曲線の使い方の例を図4に示します。
 基本的には曲線を矩形波近似して刻み時間と演算しますが、最近のデジタルオシロスコープは波形の数値出力が可能なので得られたデータから表計算ツールで計算することはそれほど困難ではありません。

左=図3:I-T特性からI2t-T曲線の作成/右=図4:I2t-T曲線の判定例

 ただし、SW電源などで突入電流値の抑制にPTCサーミスタを使用している場合は高温で電流値が大きくなり、さらにヒューズの温度ディレーティングが加わります。したがって判定は高温時の突入電流波形と温度ディレーティングを加味したI2t-T曲線を比較して行います。

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