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可能性が広がる無線給電、その課題とはドローンから医療機器まで(1/2 ページ)

ワイヤレス給電技術は、その用途が広がりつつある。送電デバイスと給電デバイスの距離やずれ、効率などについては、まだまだ向上する余地があるものの、多くの分野で応用を期待できそうな気配が高まりつつある。

» 2017年07月20日 08時00分 公開

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可能性が広がるワイヤレス給電

 ワイヤレスパワー伝送(Wireless Power Transfer、以下WPT)技術は、近い将来、電力や電気の世界を大きく揺り動かす可能性がある。

 米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンオフしたWiTricityの社長を務めるEric Giler氏は、2009年に「無線電力のデモ」と題して、米国の非営利団体Technology, Entertainment and Design(TED)でプレゼンテーションを行った。このとき行ったデモでGiler氏は、ワイヤレスパワー伝送技術を使ってスマートテレビに電力を供給する様子を見せた。2017年1月に米国ラスベガスで開催されたコンシューマーエレクトロニクスの国際見本市「CES 2017」では、ワイヤレスパワーを使い、壁の板を通して電力が供給される43型HD(高品位)TVを展示した。2017年には、より進化したデモを見られる可能性がある。

 筆者は最近、Efficient Power Conversion(EPC)のエンジニアリング部門バイスプレジデントを務めるMichael de Rooij氏にワイヤレスパワーの課題と将来性を尋ねた。

 なぜde Rooij氏に話を聞きたかったというと、EPCはGaNパワー素子を使ったデモボードやレファレンスデザインの幅広い設計サポートを実施し、業界を主導する開発を行っており、同氏は「ワイヤレス・パワーのハンドブック」を執筆するなど、設計者への教育支援も行っていたからだ。

より長距離のWPTを実現する方法

 de Rooij博士にまず尋ねたのは、より長距離のワイヤレス充電を効率よく行うための課題や可能性についてだ。どうすれば、電力伝送の効率を、全ての消費者が受け入れられるレベルまで高めて、実用的なものにできるのか。GaNパワー素子は、ワイヤレス給電の高効率化、実用化にどのように役立つのだろうか。

 de Rooij博士は、送受電コイルの直径が約18cmを超えると性能が低下するという、コイル設計に関する制約について触れた。効率のよい長距離ワイヤレス給電ができるかどうかは、送受電コイルの品質係数Q値と、コイル間の結合係数kに左右される。給電コイルと受電コイルのサイズと形状は、Qとkに大きな関わりを持つ(参考文献1)。図1は、基本的なワイヤレスパワー伝送の原理を示している。

参考文献1)Benjamin H. Waters, Brody J. Mahoney, Gunbok Lee, and Joshua R. Smith, "Optimal Coil Size Ratios for Wireless Power Transfer Applications," University of Washington, Seattle, 2014.

図1 この図は、ワイヤレスパワー伝送の原理を示しています 出典:ドイツ ウルトエレクトロニクス

 de Rooij博士は、ワイヤレス給電の電場法(Eフィールド法)に対して、技術的な問題はあるものの、長距離にわたって電力を伝送できる可能性があるとみている(オゾンの発生や生物を含む他の物質との相互作用に関連する一般的な何らかの懸念があるかもしれないが)。

 この方法は、ドローンが充電パッド上でホバリングしている間に充電するような用途に適している可能性がある。実装する方法の1つは、ソースと負荷の間に平行平板コンデンサーを使うことだ。効率的な電力伝送のためには、入力インピーダンスを整合させる必要がある。従って、1枚の板はドローンの底面にあり、もう1枚の板は充電パッドに設置されている(図2)。

図2 ワイヤレス・パワー伝送(a)と回路モデル(b)における電界結合の構造を示します 出典:参考文献2の図

参考文献2)Jingook Kim and Franklin Bien, "Electric Field Coupling Technique of Wireless Power Transfer for Electric Vehicles," IEEE 2013 Tencon - Spring.

 磁気共振結合でホバリングしながら、ドローンに給電するというのもよい選択肢だ(図3)。

図3 長方形のコイルを備えたパッドステーション上をドローンがホバリングすることによって、バッテリーに給電する。このとき、給電コイルと受電コイルとの間の間隔がわずか数ミリメートルにまで最小化するように、ドローンの受電コイルの位置を着陸支持体に合わせる。これにより、コイル間の結合係数を最大化する 出典:参考文献3の図

参考文献3)T. Campi, S. Cruciani, G. Rodriguez, and M. Feliziani, "Coil Design of a Wireless Power Transfer Charging System for a Drone," University of L’Aquila, Italy and University de Matanzas Camilo Cienfuegos, Cuba, 2016.

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