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» 2017年07月31日 11時00分 UPDATE

マイコン講座 不良解析編(3):二次物理解析 ―― PVCチェッカーと断面図解析 (3/4)

[菅井賢(STマイクロエレクトロニクス),EDN Japan]

その他の解析手法

 今まで述べてきた解析手法の他に、EBテスター(電子ビームテスター:Electron-Beam tester)とFIB(集束イオンビーム:Focused Ion Beam)もマイコンの解析に使われる。ただし、筆者の経験からすると、出荷後の製品の不良解析というよりは、マイコンメーカーが製品開発中に多く用いる解析手法だと言える。

 開発段階での試作サンプルが、論理シミュレーションの結果と一致しない動作をしたり、DC特性(電流値など)が期待値にそぐわなかったりした場合の原因究明に用いられることが多く、いったん出荷された製品の不良解析に使われることはあまりないが、参考までに紹介したい。

EBテスター(Electron-Beam tester)

 マイコン講座 不良解析編 第1回の「ATE(テスター)による測定」の章で解説したロジックテスターでは、マイコンに入力するパターンに対し、期待される出力パターンをチェックするが、この時、期待しないパターンが出力されると、不良とみなされる。しかし、これだけではマイコン内部の不良箇所を特定することができない。そこで、マイコンの内部の電気配線上で、期待値と異なる動作をしている配線部分を見つけ出すためにEBテスターが用いられる。

 マイコンのモールド樹脂を開封し、メタル層まで剥離させ、配線パターンを観測できる状態にする。その配線パターンに電子ビームを照射すると二次電子が発生する。発生した二次電子の量は、配線パターンの電位で異なる。電位が高い場合は電界に二次電子が引きつけられるために二次電子の量は少なく、電位が低い場合は、二次電子の量は多い。この電位コントラストを画像処理することで、電位の高い配線(論理的に「1」)と低い所配線(論理的に「0」)をチェックできるようになる。この方法によって、該当する配線パターンが論理的に「1」か「0」を判断できるようになる。

 したがって、解析にはEBテスターとロジックテスターを組み合わせて使用する。ロジックテスターからテストパターンを入力し、出力された不良(期待されない)パターンを、論理シミュレーションの結果と比較しながら、配線をさかのぼっていくと、不良箇所を発見できる。ロジックテスターでは入力パターンを部分的に停止したり、進めたりできるので、論理設計者が、論理シミュレーションの結果と比較しながら、マイコン内部の論理動作をチェックすることができる。

 言い換えるとEBテスターは、マイコンの配線層の非接触プロービングが可能な装置だと言える。

 図5に、マイコン講座 不良解析編 第1回の図3を使って、不良箇所を検出する例を示す。

図5:EBテスターの不良箇所検出方法例
(全加算器の場合)

 入力パターンに、I0=0、I1=0、Ci=0を入れた時、Cから出力される信号が1だった場合、期待値の0と異なるので、不良であると判断される。そこでEBテスターを使って、Cの端子の論理回路をさかのぼって、各配線の実際の論理値をチェックすると、NAN11の出力値は期待値通りだが、INV12の出力値が期待値0と異なる1であるので、INV12の出力が不良箇所であることが分かる。

EBテスターでチェックする内容

マイコンの論理的動作の不良箇所を特定する。


コラム

 マイコンは動作すると、電力を消費し、発熱する。通常は、周辺の空気を伝わって放熱しているため高温になることはない。しかし、EBテスターは、二次電子を観察するため、真空中でマイコンを動作させる。その場合、熱の逃げ場がなく、すぐに高温になる。温度がマイコンの動作温度範囲を超えて解析を続けると、動作と特性は保証されないだけでなく、デバイス破壊に至る。筆者が実際にEBテスターを使って解析を行った時は、発熱との戦いだったことを思い出す。

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