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» 2017年09月14日 11時00分 公開

Bluetooth 5の特長を知る(2):Bluetooth 5 通信距離「従来比4倍」の仕組み (2/4)

[Martin Woolley(Bluetooth SIG),EDN Japan]

3つの物理層(PHY)

 Bluetoothは完全なプロトコルスタック構成です。スタックの最下層はPhysical Layerと呼ばれ、通常は「PHY」と略称されます。

「PHY」の概要 出典:Bluetooth SIG

 Bluetooth 5では、Bluetooth 4に使用されたPHY仕様に対し、2つの新しいPHYバリアント(変更)を加えています。それぞれのPHYバリアントは、独自の特徴を備えており、特定の目的を意図して設計されています。3つのPHYは、仕様において参照できるような名称が付けられました。LE 1M、LE 2M、LE Codedです。

(1)LE 1M

 LE 1MはBluetooth 4に使用されているPHYです。これはガウス型周波数偏移変調(GFSK)方式を採用しており、1秒当たり1メガシンボル(Ms/s)のシンボルレートを備えています。1シンボルが1データビットに対応することから、上層のスタックになると、PHYの1Ms/sというシンボルレートは1Mビット/秒(Mbps)のデータ伝送速度という関係となります。Bluetooth 5でもLE 1Mは引き続き利用できるとともに、このサポートは必須要件です。

(2)LE 2M:スピードが倍増

 新たなLE 2M PHYでは、2Ms/sのシンボルレートで物理レイヤーを動作させることができます。そのためLE 1MおよびBluetooth 4に比べてさらに高いデータ伝送速度が可能になります。Bluetooth 5として認証取得する場合にこの機能は必須ではありません。

(3)LE Coded:4倍の距離

 LE Coded PHYでは、Bluetooth 4に比べて、約4倍の距離を確保できます。重要なのは、送信電力が増加することなく、この通信距離を実現できる点です。

従来比4倍の通信距離を、どう実現しているのか

 4倍の通信距離をどう実現しているのか。それを理解するために、まずは、無線通信システムにおける「距離」が何を意味するのかを明確に定義しておきましょう。

 ご存じのようにBluetoothは無線技術であり、無線とは電磁波の一様式です。電気通信の観点からは、最大距離とは「受信信号から、元のデータを正しく抽出することのできる最大距離」と定義することができます。「この電磁エネルギーがどのくらい遠くまで届き、かつ検出できるか」ではないことに注意してください。

 その違いは、いかにデータを符号化して伝達するために無線を活用するか、そして無線受信機により背景雑音がデータ解読にどのような影響を及ぼすかにも関係しています。シンボルは、搬送波を2進法の0または1を表現するよう変調することにより生み出され、送信されます。受信機は信号を受信して、それをスタック上層で元のシンボル、つまり元の2進数値に戻す必要があります。受信機が送信した0を受信機が1と解読した場合、またその逆の場合にはエラーになります。

 受信機は背景放射、つまり「ノイズ」が存在する環境下では、複雑に動作します。背景雑音レベルが受信信号レベルに近くなればなるほど、受信信号の解読が困難となり、ある時点に達すると解読プロセスでエラーが発生し始めます。

 背景雑音強度に対する信号強度の比率は、正式には信号対雑音比(SN比)と呼ばれています。受信信号強度は、受信機の位置が送信機から遠くなるにしたがい微弱になります。その結果、多少なりとも時間的に一定のレベルの背景雑音が存在することで、SN比は低下します。こうした状況では、解読エラーが発生する確率は増加します。

 エラーレベルを数値化したものを、ビットエラーレート(BER)と呼びます。BERとは基本的には送信されたビットが受信機により誤って解読される確率を指します。その上で、受信機入力の既定レベルにおいて耐容可能なBER限界値を設定することができます。Bluetoothでは、受信機が達成すべきBER限界値を0.1%と定義しています。特定のBER限界値での入力受信機レベルは受信感度として評価基準値にします。

 送信機のパワーを上げずにBluetoothの通信距離を拡大することは大きな課題でした。送信機からの距離をさらに伸ばすと、SN比が悪化するにもかかわらず、同じBER限界値を維持する必要があったからです。言い換えれば、受信機の感度をいかに向上させるか。それに尽きるわけです。

SN比とBERの関係(ノンスケール) 出典:Bluetooth SIG(クリックで拡大)

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