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» 2017年09月26日 11時00分 公開

マイコン講座 データシートの読み方編(1):データシートを正しく理解するなら「凡例」から気を抜くな (3/3)

[菅井賢(STマイクロエレクトロニクス),EDN Japan]
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一般動作条件

 図5は、基本動作に関する周波数、電圧、電力、温度のスペックの記載である。ユーザーは個々のスペックを確認し、順守する傾向が強い。ただし、これらのスペックの中には相互に関連性を持つスペックがあり、気が付かないうちに相関関係を守れない設計をしてしまうことがある。

図5:一般動作条件 (32ビットマイコン「STM32ファミリ」のデータシートより抜粋) (クリックで拡大)

 周波数に関して過去に問題になった事例としては、動作周波数の設定を間違えて、システムクロックや周辺機能用のバス(APB1/2)の動作限界周波数を超えてしまい、誤動作が発生したことがある。スペック値は若干マージンを持っているので、少しくらいスペックをオーバーしても問題なく動作するのだが、電源電圧が低くなったり、動作温度が高くなったりするとマージンがなくなり、誤動作を引き起こし、そこで初めて周波数の設定が間違っていたことに気付く場合がほとんどだ。

 電圧スペックに関しては、VDDとVDDAは基本的に同電位を入力する必要がある。一方、汎用I/O端子に入力可能な電圧はVDDに依存しているので要注意だ。

 ユーザーは、動作速度はできるだけ速くし、逆に消費電力は下げたい。そのため、サンプルプログラムの設定を変更するのだが、内部降圧回路と動作周波数の関係を間違えて、誤動作が発生した例が非常に多い。

電源電圧立ち上がり/立ち下がり時間

 スペックの存在が知られているにも関わらず、案外、守られていないのが電源電圧の立ち上がり/立ち下がり時間のスペックだ(図6)。

図6:電源電圧の立ち上がり/立ち下がり時間 (32ビットマイコン「STM32ファミリ」のデータシートより抜粋) (クリックで拡大)

 これも守らないと、誤動作を引き起こしてしまう場合がある。誤動作の原因としては、POR/PDRの電圧検出回路が電圧変動に追従できずに誤動作を起こす。また、急峻(きゅうしゅん)な電源立ち上げはラッチアップの原因にもなるので、必ずスペックの範囲内で使用しなければならない。

 電源回路はスペック通りに設計していても、ノイズなどで電源の瞬断が起き、その時にこのスペックの範囲外になって、マイコンが再起動しない例がある。

 これは私自身の経験だが、最新のテスター*)を導入した際に、テスターからマイコンに供給する電源ラインの電源立ち上がり時間が急峻すぎて、テストするたびにラッチアップを起こして、多数のデバイスを破壊したことがある。この時、ラッチアップが起こっていることはすぐに把握できたのだが、なかなか原因が分からなかった。思い当たる原因を、1つ1つつぶしていき、ようやく電源の立ち上がりが影響していることが判明した。結局、電源を2段階立ち上げにして対応したが、原因究明に時間がかかってしまったという苦い思い出がある。

*)参考記事:マイコン講座 不良解析編(1):不良解析レポートを理解するための基礎知識 ―― 一次物理解析&電気的特性評価

筆者プロフィール

菅井 賢(すがい まさる)
(STマイクロエレクトロニクス マイクロコントローラ製品部 アプリケーション・マネージャー)

 日系半導体メーカーにて、25年以上にわたりマイコンの設計業務に携わる。その後、STマイクロエレクトロニクスに入社し、現在までARM Cortex-Mプロセッサを搭載したSTM32ファミリの技術サポート業務に従事。ARMマイコン以外にも精通しており、一般的な4ビットマイコンから32ビットマイコンまで幅広い知識を有する。業務の傍らマイコンに関する技術論文や記事の執筆を行っており、複雑な技術を誰にでも分かりやすい文章で解説することがモットー。


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