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終端方式と高速シリアルI/Fデバイス高速シリアル伝送技術講座(5)(2/3 ページ)

» 2017年10月25日 11時00分 公開

受信側 ― 差動ペア終端(LVDS)

図6:LVDS差動ペアの受信端終端

 LVDS差動ペアでは、図6のように差動伝送路の特性インピーダンスに合わせ受信端部分に100Ω程度で終端しています。デバイスに終端抵抗が内蔵されている場合は、100Ω(標準)が多く、使用する基板、コネクター、ケーブルの伝送路はこの内蔵終端に合わせて差動特性インピーダンス100Ωで設計することになります。

 この100ΩのLVDS受信部終端はコモンモードが浮いているため、外部終端では図7のように2つの50Ω抵抗の間のコモンモードに低インピーダンスパスを付け、不要輻射ノイズを低減する方法も可能です。また図8は入力がハイインピーダンス時に出力が不安定になる場合の対応方法としてプラスとマイナスラインに10K〜20KΩ程度の抵抗を介してVccとGNDへ接続し小さいバイアス電流を流して電位差を与える外部フェイルセーフバイアス付きの終端になります。

左=図7:コモンモードノイズ低減終端 / 右=図8:フェイルセーフバイアス付き終端

送信端の直列抵抗による終端とRC終端

 大振幅のシングルエンド信号を用いた基板上のデバイス同士やバス接続の伝送路では、受信部の終端は通常使用されていません。特性インピーダンスに合わせた終端抵抗がない伝送路では、受信端で信号が反射し、そのエネルギーが送信端へ戻ってきます。ただ、ドライバーの出力インピーダンスが20〜30Ω程度の場合、50Ω伝送路では図9のように30〜20Ω程度の直列抵抗を送信の出力端子の近傍に付けると、受信端のハイインピーダンスで反射し伝送路に戻ってきたエネルギーを送信端側で吸収し多重反射を防げます。

左=図9:送信側/直列抵抗での終端 / 右=図10:受信側/RC終端

 送信端の直列抵抗による終端方法は、ある程度高速なシングルエンド信号の反射によるリンギングの対策として使用されており、リファレンス回路などのクロックラインやバス信号の部分でよく採用されている構成です。受信側では部品点数が多くなりますが、図10のように終端抵抗部の電力消費を抑えた、抵抗+コンデンサーのRC終端も可能です。

送受信 ― 両終端/CMLとLVDSの終端方式の違い

 CMLドライバー/レシーバーでは図11のように送信側、受信側ともにVccへ終端しています。高速性に優れていますがLVDSの構成と比較するとドライバーの消費電力は大きくなります。

図11:CMLドライバー/レシーバー ブロック図

 LVDSではレシーバー側でのみ終端し、ドライバー側では終端がない構成となっています。LVDSドライバーではCML/PECLの低インピーダンス出力のドライバーと比較するとエッジレートが低く、数ギガビット/秒といった高速化には不向きです。ですが図12の構成のLVDSドライバーでは送信端でもインピーダンスのマッチングを取っており、受信端も100Ωなどの抵抗で終端されるため、LVDSでは低消費電力で反射のない信号伝送が可能となっています。

図12:LVDSドライバ/レシーバ ブロック図

テブナン終端

 DDRメモリインターフェースの1/2Vccにオフセットした終端や、PECL(Positive Emitter Coupled Logic)のVcc−2Vへの終端は、テブナン終端の一例です。

 テブナン終端では図13のように、Vcc側とGND側の2つの抵抗を使用して終端しています。この方式では終端電圧をこの2つの抵抗で自由に設定できるため、受信端のレシーバー特性に合わせた電圧の設定や送信側の消費電力削減などにも役に立っています。

図13:テブナン終端

 この2つの抵抗Rth、RtlによるインピーダンスZ0とオフセット電圧Vosは、並列抵抗の式と同じように以下の計算で求められます。

インピーダンス Z0   1/Z0=1/Rth+1/Rtl

オフセット電圧 Vos  Vos=Vcc×Rtl/(Rth+Rtl

 例えば50Ωの伝送路でオフセット電圧1/2Vccの場合は、RthとRtlは100Ωです。また、信号のHigh、Low出力時に終端に流れる電流IohおよびIolは、以下の式となります。

Ioh=(Vcc-Voh)×1/Rth−(Voh−GND)×1/Rtl

Iol=(Vcc-Vol)×1/Rtl−(Vol−GND)×1/Rth

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