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» 2017年10月26日 11時00分 公開

マイコン講座 データシートの読み方編(2):データシートの数値には“裏”がある! 「条件」を理解せよ (1/4)

マイコンのデータシートを正しく理解することを目的にした連載の第2回目。今回は、「消費電流」「低消費電力モードからの復帰時間」「発振回路特性」についての項目を読む際の注意事項などを解説していく。

[菅井賢(STマイクロエレクトロニクス),EDN Japan]

マイコンのデータシートを正しく理解するために

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 前回に引き続き、マイコンのデータシートの記載内容と数字の意味を解説していく。今回は、「消費電流」「低消費電力モードからの復帰時間」「発振回路特性」について、マイコンメーカーエンジニアの立場から過去にユーザーから問い合わせの多かった内容と問題事例を解説する。第1回に引き続き、STマイクロエレクトロニクスの32ビットマイコン「STM32ファミリ」のデータシートを例に説明していく。

消費電流

 ほとんどのユーザーが気にするスペックである。特に携帯機器などの電池駆動の製品にとっては、電池寿命が製品の競争力を決める重要な要素になるので、見逃せないスペックだ。

 図1にRUNモードの時の消費電流の例を示す。注意点は、表の下に小さく記述しているノートである。測定条件の詳細が説明されていて、消費電流を測定する時のマイコンの状態や条件が記載されている。図1では、1つの条件の電流値しか引用していないが、実際は、いろいろな条件で測定された電流値が記載してある。測定条件を細かくチェックして、電流値の読み違いをしないように気を付けなければならない。

図1:消費電流(その1) (クリックで拡大)

 例えば、動作中の消費電流で、一般的にRAMから命令を実行した方がフラッシュメモリから実行するよりも、電流値が小さくなる。しかし、ユーザーが「RAMから命令実行」という条件を見落として、実際にはフラッシュメモリから命令を実行し、電流値を測定したが、期待値よりも大きかったという例がある。

 また、クロック源も消費電流に影響を与える。図1の場合のような外部クロックは矩形波を外部から入力するため、入力バッファの入力信号が中間電位になる時間が短く、その間に流れる貫通電流は少ない。一方、水晶振動子のような外部振動子の場合の発振波形は正弦波に近いため、中間電位が長く、貫通電流は多くなり、全体の消費電流が増える傾向がある。

 周辺機能が動作しているか否かの条件も消費電流に大きく影響する。以前、マイコン「A」と「B」のうち、低消費電力モードの消費電流を小さい方を選ぼうとしたユーザーがいた。AとBそれぞれのデータシートに記載されている「低消費電力モード」の項目に記載されているスペックに従い、消費電流の小さいAを選択した。しかし、実際に動作させてみると、Aのデータシートに記載されたスペックはおろか、Bのスペックよりも消費電流が多くなってしまったという。なぜそのような事が起こったかというと、Aのデータシートは周辺機能が全く動作していない場合のスペック値、Bは周辺機能が全て動作している状態のスペック値が記載されていたからだ。各データシートには、ノート欄に測定条件が記載されていたのだが、ユーザーはそれに気が付かず、失敗してしまったわけだ。

 実際のユーザーの使用条件で、消費電流の値を知りたい場合は、図2のような、個々のモジュールの消費電流の値を加算していく必要がある。計算方法は、「Q&Aで学ぶマイコン講座(23):消費電力の計算方法」や「Q&Aで学ぶマイコン講座(28):いろいろなマイコンの低消費電力モードを理解する」を参照してほしい。

図2:消費電流(その2) (クリックで拡大)

 消費電力に関して、ユーザーからの問い合わせで一番多いのは、「実際の電流値が、データシートの値よりも大きい」というものだ。このような問い合わせの原因では、電源VDDからGNDに流れる電流以外の冗長な電流も測ってしまっていることが最も多い。

 まず、理解しておいてもらいたいことは、消費電流は電源VDDからGND(VSS)に流れる電流だけの値で、汎用I/O端子から流入出する電流は含んでいない。もちろんLEDやLCD(液晶ディスプレイ)の駆動電流も含まない。また、汎用I/O端子の入力バッファで発生する貫通電流も含まない。冗長な電流を見つけるには、電流経路を細かく洗い出して、ひとつひとつをつぶしていく必要がある。未使用の汎用I/O端子で貫通電流を起こさせないための手法は、「Q&Aで学ぶマイコン講座(5):未使用GPIO(汎用I/O)の処理はどうすれば良いの?」で解説している。

 「冗長な電流を測ってしまっている」という次に多い原因が、「データシートに記載されている条件と異なる条件で測定している」である。前述したように、測定条件はよく確認するべきだ。

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