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サーミスタ(2) ―― NTCサーミスタによる突入電流制限回路の注意事項中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(12)(2/3 ページ)

» 2017年10月30日 11時00分 公開

サーミスタの破壊耐量CV2

 サーミスタには電源投入のたびに平滑容量への充電電流が流れ、大きなジュール損Jが瞬間的に発生します。
 ここでV:ピーク充電電圧、C:容量、R:直列抵抗とした時、サーミスタの全損失Jは1式で表されます。

 一方、ピーク充電電圧VはV=√2・VACですから、この値を1式に代入すると損失Jは2式で表すことができます。

 通常、平滑容量とサーミスタの抵抗による充電時定数はサーミスタの熱時定数よりも短いので過大な損失Jが発生すると放熱が間に合わず、サーミスタ内部と表面間に大きな温度差(=熱歪)が生じます。ある一定回数以上、この熱歪が発生するとセラミックス素体に機械的な損傷を生じ抵抗値の変化や信頼性低下が発生しますのでこの電源投入時のジュール損に対して上限値や投入回数が設定されています。

 損失Jの保証値は多くの場合は、5万回の突入に耐えるエネルギー[J]として評価されていますが、メーカーによっては図2に示すように電圧別の容量値で規制される場合もあります。この保証値がカタログに記載されていない場合はアプリケーションノートの確認やメーカーへの問い合わせが必要になります。

 図2の上段の保証値をCV2積へ換算してみると次のように一定のCV2値になっていることが確認できます。

   100V2・860μF=8.6(J)、120V2・600μF=8.64(J)、220V2・170μF=8.23(J)、240V2・150μF=8.64(J)


図2:CV2積の保証例 (クリックで拡大) [SEMITEC サーミスタ Cat.No.112M 2016/5より編集]

 また、突入回数の延長については保証値を低減することで対応できるので、必要な突入回数を提示してメーカーの個別保証を入手してください。

入力電流

 CV2積を満たし、放熱対策を施せばどのような電流値でも使用できるかというと、ディスク(素体)中心部が高温になるため熱歪の観点でやはり電流値は制限されています。その一例を図3に示します。

図3:入力電流の規制例 (クリックで拡大) 出典:TDK ニュースリリース(2016/2/2)

 以上の課題を踏まえて、経験的には25℃時の許容電流が90V時の電源入力電流の2倍程度になるものを最初に選定し、CV2積や温度上昇、整流電圧などを評価しながら最終的に品番を決定します。
 また、経験豊富なメーカーであれば推奨品番がリストアップされているので使用条件を提示してメーカーに尋ねるのも一案です。

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