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DC-DCコンバーターのレギュレーションDC-DCコンバーター活用講座(9) 電力安定化(9)(4/4 ページ)

» 2017年11月24日 11時00分 公開
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センス帰還による新たな電力損失

 この連載で既に述べたように、DC-DCコンバーターのメーカーは、効率をできるだけ100%に近付けることを目標に、その値をできるだけ上げるために大変な努力を払ってきました。DC-DCコンバーターがI2R損失を補正できるということは、システム開発者が出力接続の抵抗に注意を払う必要がなくなったことを意味します。しかし、このシステムは、苦労して実現した高い効率を損なってしまうような新しい電力損失を発生させます。出力接続の電圧降下によって生じるこの新たな電力損失は、式2を使って計算できます。

式2:センス帰還による新たな電力損失

 この式の結果は、RP60-4805Sを使用して説明することができます。VS+とVS−は、それぞれ出力ピンVOUT+とVOUT−(ピン位置で直接測定)の差、および負荷端子で測定したVL+とVL−の電圧差を表わします。このコンバーターは、5Vの出力電圧で最大12Aを出力します(60W)。長さ10cm、幅10mm、平均厚70ミクロンの銅製PCB配線を介して負荷が接続されている場合、各配線のバルク抵抗は2.5mΩで、合計接続抵抗は5mΩになります。この場合の電力損失PVDは次式で得られます。

 この新たな電力損失は全体的な効率に影響を与えます。RP60の変換効率は90%で、これは全負荷時の内部損失が6Wであることを意味します。よって、追加的なPVD損失が0.72Wあるということは、全体的なシステム損失が新たに8.3%増加することを意味します。

 このジレンマを解消する方法が、負荷点(POL)の概念です。POLはI2R損失を最小限に抑えるための方法です。この方法では、リードを短くして損失を小さくするために、DC-DCコンバーターは負荷にできるだけ近い場所に置かれます。よってコンバーターは、中心的な位置に設置して全ての負荷に電源を供給するのではなく、1つの負荷に1つずつ、複数個使われます。


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執筆者プロフィール

Steve Roberts

英国生まれ。ロンドンのブルネル大学(現在はウエスト・ロンドン大学)で物理・電子工学の学士(理学)号を取得後、University College Hospitalに勤務。その後、科学博物館で12年間インタラクティブ部門担当主任として勤務する間に、University College Londonで修士(理学)号を取得。オーストリアに渡って、RECOMのテクニカル・サポート・チームに加わり、カスタム・コンバーターの開発とお客様対応を担当。その後、オーストリア、グムンデンの新本社で、RECOM Groupのテクニカル・ディレクタに就任。



※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。

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