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サーミスタ(4) ―― PTCサーミスタとは中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(14)(1/3 ページ)

今回は、サーミスタとして、正の温度特性を持つ「PTCサーミスタ」について、分類や使い方、注意事項について解説します。

» 2017年12月20日 11時00分 公開

 前回まではNTCサーミスタについて説明してきました。

 今回はNTCサーミスタとは逆の、正の温度特性を持つPTCサーミスタについて説明したいと思います。

PTCサーミスタとは

 PTCサーミスタとはサーミスタ(thermistor)と呼ばれる、熱に過敏に反応する抵抗体の中で、温度が上昇した時に抵抗値が上がるタイプのものを指します。
(PTC:Positive-Temperature-Coefficient)

PTCサーミスタの分類

 PTC特性を持つサーミスタにはその構造によって表1のようにポリマー系とセラミックス系に分けられます。

表1:PTCサーミスタの分類
  ポリマー系PTCサーミスタ セラミックス系PTCサーミスタ
主材料 低密度ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂とニッケルを主成分とする導電性微粒子とからなる成形体 チタン酸バリウムに微量の希土類元素などを添加して半導体化
キュリー温度 熱可塑性樹脂の特性調整により調整 バリウムの一部を鉛やアルカリ金属元素、ビスマスなどで置き換えて調整(通常120℃前後)
用途 過電流(加熱)保護素子 自己制御型の加熱素子、過電流(加熱)保護素子、消磁回路

 セラミックス系のPTCサーミスタはBaCO3(炭酸バリウム)とTiO2(酸化チタン)を混錬し、一般のセラミックス・キャパシターと同様に焼結して作成しますが、同時に微量の希土類元素を混入して半導体化させる点に特長があります。一般に半導体は温度上昇とともに導電性は向上(低抵抗化)しますが1950年代に上記のような特性を持つセラミックス系PTCサーミスタが開発されました。
 なお、ポリマー系PTCサーミスタの原理は1945年ぐらいからよく知られていましたが量産化されたのは1961年ぐらいからです。

セラミックス系PTCサーミスタの概要

 ここでは最初にセラミックス系PTCサーミスタの概要について説明します。
 図1にセラミックス系PTCサーミスタでよく用いられる3つの特性曲線の例を示します。

図1:PTCサーミスタの各種特性

(a)温度〜抵抗特性

 自己発熱を無視できる、ゼロ負荷電流と呼ばれる微少電流を流した時の温度〜抵抗曲線です。PTCサーミスタは温度がある一定値以上に上昇すると急激に抵抗値が増加します。この増加に転ずる温度をキュリー温度(Tc)と呼び、25℃時の抵抗の2倍になる温度で定義します。(曲線中の最小抵抗の2倍で定義しているメーカーもあります)
 また、回路上でこの高抵抗化を利用して回路状態を変化させることを「トリップする」、あるいは単に、「トリップ」と称します。

 セラミックス系PTCではTc以上に温度を上げていくと再び抵抗値が減少に転じ、正の温度特性を失う温度(TN点)がありますので最高使用温度はTN以下でなければなりません。

(b)電圧ー電流特性(静特性)

 一定の電圧を加えた時に定常的に流れる電圧−電流特性です。PTCサーミスタへの印加電圧が低い場合は定抵抗性を示しますが、印加電圧が増加して自己発熱がTcを超えるとサーミスタの温度上昇に従って抵抗値が増加するために電流は減少する特性を示します。このピーク電流は保護電流と呼ばれPTCサーミスタの重要な特性値です。この特性を活用してPTCサーミスタは温度調節回路や電源装置の過電流(加熱)保護素子として用いられています。

 また、印加電圧をさらに増加していくと自己発熱が前述のTNを超えてPTC特性を失い定電力動作から正帰還動作(熱暴走)に変わる電圧があります。
 PTCサーミスタへの印加電圧はこの耐電圧(最大電圧)と呼ばれる電圧に対して設計マージンを確保しなければなりません。

(c)過渡特性

 定電力性を示す領域の電圧をいきなり印加した場合の通過電流の過渡応答特性です。
 一般的には初期電流が2分の1に減少する時間(t1、t2、……)を動作時間と呼び、定常的に流れ続ける電流を保持電流と呼びます。
 また、カタログ上ではこのIoi-tiの関係を曲線としてプロットしたものが用いられます。

注)動作時間は自己発熱量と周囲温度、熱放散定数などから決まりますので開始時の周囲温度の影響を受け、高温時ほど短時間で動作するようになります。周囲温度の変化が大きい場合には動作時間の変化も設計要因として考慮します。


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