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» 2017年12月25日 11時00分 公開

Design Ideas アナログ機能回路:160〜1万240倍までの可変ゲイン回路

医療機器や科学機器では、マイクロボルトオーダーの微小電圧を計測したり増幅したりすることがある。そこで本稿では、ゲインを160〜1万240の範囲で設定できる低ノイズで温度安定性に優れた増幅回路を紹介する。

[Jerome E. Johnston(Cirrus Logic),EDN Japan]

高ゲイン低ノイズで温度安定性に優れた増幅器

 医療機器や科学機器では、マイクロボルトオーダーの微小電圧を計測したり増幅したりすることがある。例えば、サーモパイル型カロリーメーターからの出力信号を正確に計測したいなら、高ゲイン低ノイズで温度安定性に優れた増幅器が必要となる。

 筆者は、この目的のために図1に示す回路を考案した。これは2個のオペアンプ製品を組み合わせたプログラマブルゲイン回路であり、ゲインを160〜1万240の範囲で設定できる。この回路の代表的特性は、オフセット電圧が5μV、オフセット電圧の温度ドリフトが20nV/℃、入力換算ノイズが周波数0.1Hzにおいて9nV/√Hzである。

図1:測定系の基本構成 (クリックで拡大)
プログラマブルゲインアンプ(IC1)と計測アンプ(IC2)をカスケード接続している。可聴帯域以下で用いる高ゲイン低ノイズのプログラマブルゲイン回路として使用できる。

 IC1としては、Cirrus Logic社製の「CS3301」を使用した。同製品は低電圧動作、差動入力、差動出力、チョッパ安定化機能に対応したプログラマブルゲインアンプである。IC1は入力段アンプとして働き、その出力は出力段アンプIC2の入力となる。IC2には高電圧出力の計測アンプ「INA114」を使用した。CS3301のゲインは1〜64の範囲で設定可能であり、INA114のゲインはこの例では160で固定である。この組み合わせにより、160〜10240の範囲のゲインが得られる。仮にサーモパイルからの出力が1mVだとすると、この回路で増幅した出力は最大10.24Vになる。INA114のゲイン設定抵抗R3の値を変えることにより、ゲインの範囲を変更することも可能である。

 CS3301のゲイン/入力設定用のマルチプレクサは、外付けのDIPスイッチとプルアップ抵抗を使用して制御する。これらの代わりに、電源電圧が3.3Vのマイクロコントローラーを使用してもよい。

 CS3301の出力とINA114の入力を接続する信号ラインには、抵抗R1、R2、IC1の出力抵抗、コンデンサーC1によってローパスフィルターが構成されている。これにより、500Hz以上の周波数のノイズを抑えることができる。

 図2に、ゲインを約10000に設定した場合のノイズ量(入力換算ノイズ)の計測結果を示した。この図から分かるように、入力換算ノイズは周波数0.1Hzにおいて9nV/√Hzであり、10Hzまでほぼフラットである。この周波数対ノイズ特性は、約18時間にわたる計測によって得られた200万余りのデータに対してFFT(fast fourier transform)演算を行って求めたものである。

図2:入力換算ノイズの周波数特性 (クリックで拡大)

 この回路は非常に大きなゲインを持つので、各差動ラインに対しては、電気的に平衡なプリント基板の配線パターンおよび熱的バランスの良好な実装部品を使用することが重要である。

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。

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