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放熱板に触れても大丈夫? 危険なモータードライバーの修理(1)Wired, Weird(1/3 ページ)

今回は、モータードライバーの修理の様子をお伝えする。電源の電解コンデンサーを交換すれば良い内容の修理だったのだが、思いもかけないちょっと危険な構造の電源だったために落とし穴にはまってしまったのだった……。

» 2018年02月08日 11時00分 公開

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故障原因の大半は電解コンデンサーの劣化

 モータードライバー機器やインバーター機器の修理依頼はかなり多く、10機種以上の修理を経験している。故障原因の80%以上はドライバーに内蔵された電源を制御するサブ電源の電解コンデンサーの特性劣化による動作不良だった。今回は、モータードライバーに内蔵され、少し危険と思われる想定外の構造になっていた電源の修理事例について報告する。

 受領したドライバーの不良内容は単に『動作不良』とだけ書いてあった。

 XYZの3軸のドライブシステムだが、モーターやセンサーとの接続のインタフェースボックスの上に3台のモータードライバーが設置されていた。修理依頼品のモータードライバーのドキュメント類はメーカーのWebサイトから得ることができた。まずはモータードライバーから調べることにした。

故障原因が潜むであろう電源部からチェック

 今まで修理してきたモータードライバーの故障原因は、電源部のサブ電源の電解コンデンサーの容量抜けやESR(等価直列抵抗)の劣化がほとんどだった。故障している可能性が高い電源部分を確認した。電源部の写真を図1に示す。

図1 図1:電源部 (クリックで拡大)

 まずは一次側の整流回路を確認した。この確認方法は簡単だ。高耐圧の電解コンデンサーが並列接続か直列接続かを確認して残容量を測定するが、定格の90%以上の容量が残っていれば"問題なし"だ。同時にESRも測定し、1Ω以下かどうかを確認する。一次側の電解コンデンサーは低周波で充放電するので部品の劣化はかなり少ない。確認した結果、問題はなかった。

 次に整流用のダイオードブリッジが壊れていないかを確認する。マルチメーターをダイオードモードにしてAC電源の端子と電解コンデンサーのプラス端子の電圧ドロップを測定し、AC端子との接続が0.6V以下であるかどうかを確認する。次に電解コンデンサーのマイナス端子とAC端子との接続が0.6V以下であるかどうかを確認する。これがOKならば一次整流回路(ダイオードブリッジ)は正常に動作している。今までは整流ダイオードが不良だったことはほとんどなく、この電源も大丈夫だった。

 重要なチェックポイントはメインのFETを駆動するサブ電源で図2の赤四角に示した。サブ電源部は小型のトランス、電力抵抗、スイッチ素子、小型の電解コンデンサーと電源のコントロールICの集まりを探せばよい。サブ電源の起動電流は一次整流電源から電力抵抗を通して供給され、サブ電源の電解コンデンサーを充電する。供給された電流の電圧が15V程度になれば電源の制御ICが動作可能になる。スイッチング電源の制御ICはFETを駆動してトランスの一次側にパルス電流を流し、トランスの二次側から所定の二次電源が生成される。さらに二次電源のフィードバックでサブ電源の電解コンデンサーも充電され、サブ電源の電圧も維持されて二次側の電源は安定して生成される。

 しかし、サブ電源の電解コンデンサーは周辺に発熱部品が多くあり高温の環境で動作していることが多い。周囲の熱で電解コンデンサーの容量が抜けたりESRが劣化したりするため、FETのゲートを駆動する電流が不足しやすい。結果、出力電圧の生成が不安定になって機器の動作不良が起こりやすいわけだ。このコンデンサーの劣化が電源不良の80%以上を占める。

 つまり、サブ電源部の動作を安定させることが電源の安定動作につながる。サブ電源の電解コンデンサーの波形を確認すれば電源が安定して動作しているが確認できる。修理依頼品のモータードライバーの3台ともサブ電源のリップルが大きく、モータドライバーの動作が不安定になっていた。電解コンデンサー側から見たサブ電源部の拡大写真を次ページに示す。

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