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» 2018年02月21日 11時00分 公開

IoTの真価を発揮するために:IoTにおける“精度”の重要性 (3/3)

[Grainne Murphy/Colm Prendergast(Analog Devices),EDN Japan]
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インテリジェント接続のIoTシステム

 インテリジェンス(データ処理)は、IoTチェーンのどの段階でも追加できます。例えば、バイタル・サイン・モニタリング(VSM)で、体温が危険レベルにあるという警告をセンサーから直接即座に発せられる場合、体温データをクラウドに送信する必要はありません。ただし、同じ温度が他の生体医学データの計算にも使用される場合があるので、ゲートウェイやクラウド内で同様に使用することも可能です。

 信号処理がノードで発生する場合は、緊密に統合された帰還制御ループを使用可能なことを含め、いくつか利点があります。センサーやアクチュエーターを緊密に結合させる利点は、即座に決定がなされることです。例えば、振動が設定されたレベルに達したら直ちに機械やモーターの電源を切ったり、温室の温度が上昇したりしてモーターが起動して窓を開けることが可能です。ノードでは、フットプリントを小さくし、バッテリー寿命を延ばすために消費電力を最小にすることが求められますが、統合化されたアナログ・マイクロコントローラーのような部品でこうしたニーズを実現することができます。

「ADuCM360」のブロック図

 そのような部品の例として、CPUコア「Arm Cortex-M3」と24ビットA-Dコンバーターを組み合わせた「ADuCM360」(Analog Devices製)などがあります。将来的には、エナジーハーベストを利用でき、エネルギーに依存しないデバイスがここでの成功の鍵となります。ノード処理の限界は、まさにスペースと電力の限界です。さらに、他のソースからのデータを集約することも困難です。ノードが低消費電力であると、データの送信範囲やペイロードが制限を受けます。ステータスを監視してアップグレードを実行するためのノード管理が困難なため、それに伴うネットワークエッジでの物理的、ソフトウェア上、データ上のセキュリティリスクが生じます。

 ゲートウェイベースの信号処理では、短距離のワイヤレス・センサー・ネットワーク(WSN)リンクを一方の側に、LANリンクまたはWANリンクを他方の側に置いたIoTゲートウェイデバイスを使用します。これはルーターに類似しており、センサーハブにすることもできます。WSNのネットワーク管理とセキュリティ機能に加え、ローカルでの処理と解析(一般にエッジコンピューティングとして知られる)用の計算リソースとしてもよく使用されます。ゲートウェイベースの処理の利点は、大規模になる可能性のある処理リソースを使用できることと、他のセンサーやソースからのデータを集約できることです。したがって、ネットワーク・エッジの近くで解析を実行でき、市販の開発ツールを使ってその解析を開発できるので、よりITフレンドリーなソリューションが生まれます。このソリューションはフルスタックOSに対応する可能性を持ち、(物理的なセキュリティはリスクにもなりますが)セキュリティの優れた標準的なリモート管理ツールでLAN/WANネットワーク技術を使用します。一方で、通常は低消費電力でなく、有線電源を必要とし、データストレージにも制限があります。

IoTゲートウェイの一例

 したがって、クラウド接続の鍵となる利点の1つは、履歴データを含む大規模なデータ記録や多数のデバイスからのデータを保存、読み出し、検索できることです。クラウドベースの信号処理では、多くの場合、データストレージがビッグデータの処理と解析に密接に結び付いています。これは、データを保存するだけのものではありません。データを素早く読み書きし処理する必要性がイノベーションを生み出し、オープン・ソース・フレームワークによる簡単なプログラミングモデルを使って大規模なデータセットをコンピュータとクラスタ間で分散処理する、多くの新しい方法をもたらしました。クラウドベース処理の明らかな利点は、セキュリティが組み込まれた潜在的に非常に大きな計算リソースとストレージリソースです。オープンソース開発ツールや商用開発ツールの種類は多く、増え続けており、エンドソリューションも容易に拡大する可能性があります。

 サービスとしてのソフトウェア(SaaS)は、現在、サービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS)、サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)、サービスとしてのデスクトップ(DaaS)、サービスとしてのモバイルバックエンド(BaaS)、サービスとしてのIT管理(ITMaaS)とともに、クラウドコンピューティングにおいて極めて重要な商品と考えられています。これらを合わせると、エンドシステムのニーズに応えるさまざまなオプションになります。クラウドベースの処理では、サーバホスティングが必要です(オンプレミスとリモートがあります)。ストレージとサービスには関連コストがあり、それが通信と大規模データストレージでは高額になる可能性があります。この他の問題として、インターネット通信のチャンネルがあり、このチャンネルでは遅延とスループットの予測がつかないことがあります。

 IoTシステムの進化に伴い、スマートシステムのパーティショニングも進化し、ノードでのインテリジェンスがいっそう進みます。ノードでは知恵や知識を生まないということは、データはクラウドに到達するまでデータのままであることを意味します。これでは全データを変換し送信するために大量の電力を消費し、帯域幅を集中的に使用することになります。インテリジェントスマートセンシングでは、ノードにおいてデータを情報に変換することで、全体の消費電力を低減し、遅延を縮小し、帯域幅の無駄を減らします。つまり、後手対応のIoTから予測的で即応的なIoTに変わることができます。

 優れたIoT設計のための課題は、十分な測定、セキュリティ、IoTの全パスにおけるインテリジェンスの効果的な使用場所の見極めなど、数多くあります。また、センサー、ゲートウェイ、ソフトウェア、ストレージプロバイダーのIoTソリューション全体に、複数のベンダーが存在することがあります。

 例えば、Analog Devicesのリムリック工場では、温度と湿度を測定する他のセンサーに混じって、加速度センサー(ADXL362)が製造装置の監視に使用されています。機械やモーターからの振動パターンの変化を計測することで、システムが停止する前に故障を検知できます。これには、予測的なメンテナンスプログラムを実施できるという利点があるため、工場の効率と生産能力が向上します。当社が IoTを実装したことにより、複雑な製造工程内の複数の機器(多数のサプライヤーからの新旧さまざまなもの)にわたって全てをモニタリングし解析するシステムが実現しています。このシステムが、効率をリアルタイムに追跡して報告し、システムがダウンする前に、起こり得る問題を技術者に警告します。これにより生産歩留まりが向上し、より安定的な製品供給が可能になりました。

 この例は、IoTシステムの真の価値を実証しています。IoTシステムの高度さと適用範囲から、多くの信号処理オプションを実行できます。IoTシステム内の処理をクラウドからエッジに移すと、センサーのさらなるスマート化とソースにより近い情報の抽出が可能となります。ネットワークのエッジノードやゲートウェイ上、またクラウド内に有用な処理リソースがあれば、システム設計者はエッジノードの消費電力、データの帯域幅、計算、ストレージの諸条件を考慮してソリューションを最適化することができます。

筆者プロフィール

Grainne Murphy:Analog Devices IoT市場担当マネージャ。リムリック大学で工学の学位号を、オックスフォード・ブルックス大学で経営学の修士号(MBA)を取得しています。

Colm Prendergast:Analog Devices IoTクラウド技術担当主席エンジニア兼ディレクタ。Analog Devicesには、1989年、アイルランドのリムリックで設計エンジニアとして入社。デジタル・ビデオ、オーディオ、通信、DSP、MEMSなどの幅広い分野に従事し、プロジェクトを率いてきました。11件の米国特許を保有し、IEEEとSIGGRAPHの会員を務める。Colmはマサチューセッツ州ブライトンのセント・ジョセフ・プレパラトリー高校の評議委員会のメンバーで、FIRSTロボット・コンテストのアドバイザーです。アイルランドのリムリック大学で電子工学の学士号を、アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・コークで修士号を取得。


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