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アナログとデジタル帰還システムのループ安定性分析DC-DCコンバーター活用講座(14) 帰還ループ(3)(2/3 ページ)

» 2018年02月19日 11時00分 公開

双一次変換を使ってデジタルループの安定性を評価

 デジタルシグナルプロセッサを使って帰還ループの補償を行う場合、デジタルループの安定性は、さらなる変換を使ってサンプリングレートを補正して、ラプラス変換から導出することができます。

 デジタルシステムへの入力信号はもはや連続時間ではないので、双一次変換を使ってs平面の値をz平面の離散時間の値に変換する必要があります(Tustin法)。

 このマッピングの結果、z平面の安定領域は半径 = 1の円(単位円)になります。

図4:z平面の単位円 (クリックで拡大) 出典:RECOM

 円の最右端(ω = 0)はDCを表します。円の最左端はエイリアス周波数を表します。この円の外側に位置するどんなポールも不安定になります。これで帰還ループのポールをz平面にプロットすることができ、ポールの位置は、s平面の場合のように連続時間ではなく、サンプルレートに正規化された応答を表します。

 デジタル補償では、どのシミュレーションも正確に行われるように、最初にDSPのサン

プリング周波数はシステムのクロスオーバー周波数よりはるかに大きいと仮定します。次に、補償値を求める2つの一般的方法、再設計と直接設計があります。デジタル再設計では、スイッチングコンバーターの線形モデルが確立しており、帰還ループの補償は通常s領域でシミュレーションされます。アナログ補償の結果はz領域にマッピングされ、デジタル補償の設計が完了します。直接設計の手法では、スイッチング電力コンバーターのディスクリートモデルが全体的にシミュレートされ、補償設計がz領域で直接計算されます。これには、SpiceやMatlabのようなプログラムを使ったアナログ部品の正確なモデルが必要です。

 どちらの方法で得られた結果も、値のマトリックスとしてルックアップテーブルに保存されます。DSPまたはマイクロコントローラーが次にデジタル化された入力信号を取り込み、それを計算マトリックスに入力し、結果として得られた値をアナログ制御信号、または多くの場合直接PWM駆動出力として出力します。後者の場合、コンパレータ回路とPWM回路もデジタルで合成されます。これにより、スロープ補償とRHP不安定性から生じるアナログ制御ループの誤差が除去されます。異なる動作モードを扱うために異なる帰還補償応答が必要な場合、デジタルコントローラーは、どの出力値もリセットすることなく、ルックアップテーブルの間をスムーズに切り替えることができ、アナログコントローラーは、この能力には対抗できません。これにより、補償特性の選択の際、ほとんど妥協する必要がありません。

 妥協が不要であり、高速過渡応答と安定した出力の間を高速で切り替えられるので、デジタル帰還ループは非常に魅力的です。マイクロコントローラーの価格が下がり続けているので、さらに多くのDC-DCコンバーターが完全デジタルまたはハイブリッドの帰還ループコントローラーへと移行していくでしょう。

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