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» 2018年03月13日 11時00分 公開

高速シリアル伝送技術講座(8):差動伝送路のケーブル・コネクターの選び方と設計上の注意 (2/5)

[河西基文(ザインエレクトロニクス),EDN Japan]

クロック埋め込み型SerDesのケーブルの要件

 図5のクロック埋め込み型SerDes(8B10Bや10B12B〜64B66B系)では、クロック情報がシリアルデータに埋め込まれており、シングルレーンではペア間スキューの制限はありません。

図5 図5:1lane クロック埋め込みSerDes(例:V-by-One HS 8B10B SerDes)

 マルチレーンでもペア間スキューの制限はUI(Unit Interval)単位となり大幅に緩和されるため、ペア間スキューの問題は回避できます。しかし、LVDS SerDesと比較するとシリアルレートが高速になるため、伝送距離はデバイスで補償可能な伝送路「PCB+コネクター+ケーブル」のインサーションロス(伝送損失)に依存することになります。

 以下では3Gビット/秒(bps)[帯域1.5GHz]で動作するクロック埋め込み型SerDes(もしくは外付けイコライザー付き)を例に、ケーブルのインサーションロスとケーブル長の関係を説明していきます(ここではPCBとコネクターの伝送路損失は限定的として無視します)。

 まずシリアライザーの出力はプリ/デエンファシスなし(0dB)、デシリアライザー内蔵もしくは外付けのCTLE*1)イコライザーのACゲイン(ケーブルインサーションロス特性の補償/図6-2)は1.5GHzで12dBの設定とします。

図6 図6:SerDes設定条件と入力EQ設定

 この設定では、表1の導体太さ(AWG:American Wire Gauge)の違いによるケーブルインサーションロスのグラフより、周波数1.5GHz時の減衰量(縦軸)を参照すると、AWG24番線(銅線直径0.5mm)差動ケーブルで10m程度の伝送が可能なことが分かります。またAWG30番線(銅線直径0.25mm)の細い差動ケーブルでは、1.5GHzで比較するとインサーションロスが2倍程大きく伝送距離は半分になります。AWG28番線では同様の計算でAWG24の3分の2程度の距離になります。

 このようにケーブルのインサーションロスの特性を把握することで、使用デバイスにおける各ケーブルのおおよその伝送距離を見積もれます(アダプティブイコライザー付き製品を使用する場合は、推奨ケーブルでの最大ケーブル長のインサーションロスと他のケーブルのロスを比較します)。

表1 表1:AWG(導体太さ)の違いによるインサーションロス比較(10m)(差動:赤系は同誘電体使用)

 表1上側青系のグラフは同軸ケーブルのインサーションロス(10m)を記載しています。このロス特性から、デバイスの高速シリアルI/O(もしくは追加のドライバー・レシーバーで)で図7のようにシングルエンド信号をサポートする場合、ロスの少ない誘電体を使用した太めの同軸ケーブルで大幅なケーブル延長が可能なことが分かります。

図7 図7:CML差動物理層 シングルエンド信号インタフェース

 例えば無線で使用される安価な5D-FB 50Ω高周波同軸ケーブル(外寸直径約7.5mm)では、同条件でAWG24の差動ケーブルの4倍程度まで、3割細い3D-FB(外寸約5.5mm)では3倍程度まで、伝送距離の延長が可能になります。

 このグラフでは一般的な材質のケーブルインサーションロスを記載していますが、これ以外にも低誘電正接/低誘電率の誘電体を使用したローロスのケーブルが用意されており、高速長距離伝送で使用されています。

表2 表2:ローロス同軸ケーブル 100mのインサーションロス(減衰量)グラフ(資料提供:カナレ電気)

 ローロスケーブルを使用した場合、高速の電気信号で最大どの程度まで長距離伝送が可能か、皆さん興味があるのではないか思います。例えば業務用や放送用のビデオ伝送で使用されるSDIの同軸75Ω系アプリケーションでは、現在12Gbpsで100mの伝送距離を実現しています。ここで使用されている外寸7.7mmの同軸ケーブルL-5.5CUHD(75Ω)のインサーションロス(表2赤い線)は、100mで40dB@6GHzと大変小さく(10mでは4dB@6GHz)、CTLEのイコライザーで補償できるレベルのインサーションロスであることがこの100mの長距離高速伝送を実現している理由の1つです。

*1)CTLE(Continuous time linear equalizer):高周波領域をブーストするアナログのイコライザー

不要輻射ノイズ低減とケーブルのシールド方法

 不要輻射ノイズの低減が必要な場合は、シールドのない図8-1図8-2のUTP(Unshielded Twisted Pair)構造のケーブルではなく、各差動ペアにシールドとケーブル全体にシールドが施された2重シールド図8-3のツイナックス(Twin−Coax)ケーブルの採用を検討します。

図8 図8:各種差動信号ケーブル

 ツイナックスケーブル(図8-3)のケーブルを覆う全体のシールドは、内部からのノイズ放射を遮蔽(しゃへい)するために使用されます。そのため、この全体シールドは安定したノイズの少ないFG(フレームグランド)などのGNDに接続します。

 各差動ペアシールドのドレイン線は差動信号ペアのコモンモードGNDとなるため、図9のようにI/OデバイスのSG(シグナルグランド)に接続します。

図9 図9:差動ツイナックスケーブル。シールドドレイン線のGND処理例(LVDS DC接続)
(注:シールド・GNDに対して適法される安全基準、法的要件に従う必要があります)

 ケーブル全体のシールド線をノイズの多いSGに接続すると、基板上のノイズが筺体シールドを抜けてケーブルから外部へ放射するアンテナとなるため、ケーブルのシールド線に接続するGNDのノイズには注意が必要です。

 ツイナックスケーブルは、ノイズ放射の特性以外にも、外部から印加されるノイズ耐性や高周波のリターンロス、クロストーク(FEXT・NEXT)についてもUTPやSTP(全体シールド付きのUTP構造)と比較すると大幅に優れています。

 Ethernetで使用されるCat-5/6/7 UTPケーブルは、ペア間スキューが大きくLVDS SerDesでは使用できませんが、安価でロスも少ないため、ペア間スキューの定義がなく、クロストークが問題とならないアプリケーションでの使用が可能です。

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