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» 2018年04月23日 11時00分 公開

Design Ideas 計測とテスト:100WのRF電源で1kWのテストを実行

出力1kWで50時間のバーンイン試験を実施するにあたり、手元に100WのRF電力発生器しかない場合がある。そこで、今回は100WのRF電力発生器から1kWを発生する回路を紹介する。

[David Cuthbert,EDN Japan]

伝送線路に電力を蓄えることで1kWを得る

 13.56MHzのISM(industrial, scientific, and medical)帯RF測定器は、1kWで50時間のバーンイン試験を必要とする。被試験装置には、1kWに相当するRF電圧とRF電流を加えなければならない。しかし、筆者の手元には100WのRF電力発生器しかなかった。

 そこで、100WのRF電力発生器から1kWを発生する回路を考案した(図1)。伝送線路に電力を蓄えることで1kWを得る。伝送線路は2本あり、RG-213同軸ケーブルの両端にUHFコネクターを取り付けた。長さは電気長で43度、約6フィート(約183cm)である。被試験装置は2本の伝送線路(T1とT2)の間にあり、電気長は4度である。全体の電気長は90度となる。市販のアマチュア無線用アンテナチューナーで、50ΩのRF発生器と伝送線路の入力インピーダンスの整合をとる。

図1:100WのRF電力発生器から1kWの電力を生成する回路 (クリックで拡大)
RF信号が伝送線路を往復することによって、伝送線路が蓄える電力が増大する。

 回路動作は簡単である。RF電力はアンテナチューナーを経由して伝送線路の入力端に伝わる。RF電力は伝送線路の短絡端にまで伝搬し、そこで反射して入力端へと戻っていく。反射電力はアンテナチューナーでさらに反射し、アンテナチューナーが発生するRF電力(次の半周期分)と結合して再び伝送線路の短絡端へと流れる。この過程を繰り返すことによって、伝送線路が蓄えるエネルギーが増えていく。この繰り返しは回路の損失がRF発生器の電力と等しくなるまで続く。

 回路動作をインピーダンスからも考える。一方が短絡してあり、無損失で、電気長が90度の伝送線路の入力インピーダンスは無限大である。すなわち短絡端ではV/Iはゼロであり、入力端ではV/Iは無限に大きい。被試験装置を配置した中央部では、V/Iは伝送線路の特性インピーダンスに等しい。今回の特性インピーダンスは50Ωである。RF電圧とRF電流には90度の位相差が生じる。ただしこのことは、バーンイン試験には影響しない。

 被試験装置に1kWを与えるには、どのくらいの電力を伝送線路に入力すべきかを計算する。6フィートのRG-213同軸ケーブルによる損失は0.025dB、被試験装置による損失は0.05dB。従ってRF信号の下り方向の損失は0.1dB、往復での損失RLは0.2dBになる。

 入力電力PINが1kWのときに、反射電力PRは次式で計算できる。

 1000Wの電力が伝送線路を伝わると、955Wの電力が入力へと反射する。

 伝送線路に注入すべき電力は、入力電力PINから反射電力PRを差し引いた電力に等しい。1000W−955W、すなわち45Wである。伝送線路による損失と被試験装置による損失はいずれも0.05dBなので、45Wを両者で半分ずつ消費することになる。測定によると、アンテナチューナーの損失は40Wである。全回路の損失は85Wになる。

 伝送線路の入力インピーダンスZINは、伝送線路の入力複素反射係数(Γ)を計算し、そのΓを用いてZINに関する式を解いて求める。

 さらに、

 である。従ってアンテナチューナーは、RF電力発生器の出力インピーダンス50Ωと、伝送線路の入力インピーダンス4.3kΩを整合させなければならない。

 回路の動作は、被試験装置の電圧および電流の振幅と位相を測定することによって確認できる。電圧プローブと電流プローブを備えたオシロスコープを測定に利用する。被試験装置の電力計で、進行波と反射波の電力が1kWであることを確認できる。

 回路のQ値は高いので、共振を得るためには同軸ケーブルの長さを調整するよりもRF発生源の発振周波数を調整したほうが簡単である。この回路の動作を制限する要因は、同軸ケーブルの温度上昇とインピーダンス整合回路による損失だ。損失の低い同軸ケーブルを使えば、電力の増倍率を上げて被試験装置への電力を増やせる。

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。

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