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抵抗器(4) ―― 固定抵抗器の信頼性設計中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(18)(2/3 ページ)

» 2018年04月25日 11時00分 公開

設計時のディレーティング基準

 前出の故障率の項で説明したように実際の抵抗器の使用に当たっては各特性それぞれ100%までは使うことはできず、各項目に対するディレーティングが必要になります。故障率が決められている場合は既に説明したように故障率を満たすように各項目をディレーティングしなければなりませんが、故障率が特に要求されない場合は表2の標準的なディレーティング例を参考とし、必要に応じて各自で基準を作成ください。
注)ここではダメージが残り、寿命に影響する項目については定常時80%(測定誤差10%、マージン10%)、過渡時90%(測定誤差10%)としています。また温度測定には5℃程度のバラツキ(セット、熱電対貼り付け、など)を見込んでください。

表3:標準設計ディレーティング一覧
項目 判定項目 判定値 条件/コメント
電力
(=温度換算)
抵抗体温度 <TRMAX×80% 製品最高使用周囲温度にて
プリント基板表面温度 <UL認定温度ー10℃
はんだフィレット温度 高信頼性製品:85℃/一般品:100℃
最高使用電圧 印加電圧 <保証値×80% ※1
過負荷電圧
パルス電圧 <保証値×60% ※2
※1:炭素皮膜抵抗器は雰囲気中の水分と反応して抵抗体の炭素がCO2となって空気中に拡散しますので電解腐食を起こしやすく、注意が必要です(特に高抵抗値)。特に耐湿型をうたっていない炭素皮膜抵抗器の場合には1本当たり、100KΩ以下かつ、100V以下で使用してください。
※2:パルス電圧はダメージが残りますので回数制限がある項目です。印加パルス波形の最悪値が理論的保証できないので裕度は大きくしています。理論値があれば80%までです。

固定抵抗器の使用上の注意事項

一般的な注意事項

 抵抗器を使う上での一般的な注意事項を次に示します。表面実装部品(SMD)のはんだ付け、フラックス残渣(ざんさ)の吸水によるマイグレーション、はんだ付け時の温度管理、などは抵抗器メーカー各社から発行されている注意事項に従ってください。

 また、一般の電子部品に比べて次の点には配慮が必要でしょう。

・金属製のペンチ、ピンセットなどで抵抗器本体を直接触ると保護コート膜および抵抗器本体が欠け、性能などに影響を及ぼす恐れがあります。(どうしても触る場合には真空ピンセット、竹ピンセットなどがあります)

  • 難燃性塗装品は特殊塗装のため一般の抵抗器よりも機械的衝撃に対して弱くなります。抵抗体に衝撃や振動を与えたりしないでください。
  • 洗浄後は十分に乾燥するまで塗装膜に外力を与えないでください。皮膜が膨潤している時があります。

 中でも異常試験などでの発炎、発火、発煙、赤熱は危険事項として扱われますので高度な注意が必要です。

表4
温度測定 チップ抵抗器など発熱量の少ない抵抗器はサーモラベル、非接触型の温度計やφ0.1以下の極力細い熱電対線で測定してください。また熱画像などは高温部の半値幅に6ドット以上あることを確認してください。
高温部のドットが2〜3個しかない場合は誤差が10%を超える場合があります。
過負荷 一般の抵抗器は、過負荷で発炎、発火、発煙、赤熱することがあります。
難燃性抵抗器は、発炎や発火はありませんが、発煙や赤熱することがあります。
周波数特性 巻線型や、らせん状の切り込みミゾを持つ抵抗器はインダクタンス成分(ESL)を持ち併せて寄生容量を持ちますので、特定の周波数で共振現象を起こすことがあります。また、低抵抗値の部品はESLの影響を、高抵抗値の部品は寄生容量の影響を受けますので使用周波数帯域でのインピーダンスを測定してください。
熱雑音 抵抗器からは熱雑音に起因する雑音が発生します。熱雑音が問題になる回路では厚膜型よりも薄膜型を使用し、できる限り大型の抵抗器を使用してください。

発煙、発火の注意事項

 抵抗器に一定値以上の過電力を与えると、抵抗体が焼き切れて回路がオープン状態になる瞬間、電極間で放電します。
これを発火と言い全てのタイプの抵抗器に発生し、電力形抵抗器の場合は溶断特性がカタログに記載されています。また前兆として発煙現象もあります。ただし、ヒューズではありませんので保護機能としては認められません。異常試験で“抵抗器の発火が許容されるか?”の最終判断は安全規格の試験所ごとの判断となります。
 一方、燃焼とは、明らかな炎や、周辺部品を燃やす状態になることを言います。

 一般論ですが、異常試験で抵抗体器に定格の数倍の過電力が印加されると抵抗体の温度は数百度になり、周辺の部品を焦がしますので抵抗器が倒れない工夫や熱的遮蔽(しゃへい)をする必要があります。あるいは直並列に抵抗器を組合せて過電力が印加されないような配慮が必要です。


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