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DC-DCコンバーターの絶縁と出力リップルDC-DCコンバーター活用講座(18) データシートの理解(4)(2/4 ページ)

» 2018年05月21日 11時00分 公開

PD不良の原因を検討する

 エナメルを塗布したよくあるトランスのワイヤの構成を考えてみましょう(図1)。通常、絶縁ラッカーは複数の層に塗布されます。そのため、絶縁材内部のボイドに加えて層間に裂け目が生じることもあります。

図1:絶縁材内を部分放電(PD)パスが走っているマグネットワイヤの断面図

 絶縁材内部に部分放電が生じると瞬時電流が流れますが、ワイヤの絶縁性は保たれます。しかし、電圧ストレスによって絶縁バリアは薄くなります。電圧ストレスは、弱った場所から弱った場所へと飛び、最終的には完全な入出力絶縁不良に至る可能性があります。

 ここでのキーワードは“最終的には”です。PD不良が集まって全面不良に至るまでには時間がかかります。高電圧が印加されている時間が長ければ長いほど故障が起こりやすくなります。1分間のHiPotテストでは、1秒間の標準的な生産テストよりはるかにストレスが大きくなります。定格が1000Vdc/1秒のコンバーターは500Vac/1秒でのみテストし、PD故障が蓄積して問題を引き起こす可能性を低減する必要があります。

実用的ヒント

 HiPotテスト中にコンバーターが永久破壊に至る恐れがあるため、テストを準備する際には2つのことに特に注意を払わなくてはいけません。1つは、コンバーター内部で電圧勾配が生じないようにすることです。電圧勾配が生じると内部部品のブレークダウン定格をすぐに越えてしまいます。そのため、HiPotテストを行う前に、全ての入力をそれぞれ短絡させ、全ての出力を合わせて短絡させる必要があります。2つ目は、HiPotテストはコンバーターの絶縁に対してストレスを与えて累積故障に至らしめるので、テストをやり直すたびにテスト電圧を20%ずつ下げることを推奨します。

図2:HiPot(絶縁耐力)テスト

 HiPotテストの長所は、高電圧を入出力絶縁バリア間に印加すると潜在的故障要因をもつ全てのパスをチェックすることができ、チェック結果がOKであれば、コンバーターの全体的な絶縁耐性を保証できることです。一方の短所は、結果がNGであれば致命的だということです。NGになったコンバーターは廃棄するしかありません。

 HiPotテストに代わるテストとしてPDテストがあります。テスト装置は、部分的絶縁破壊によって生じる電圧スパイクをモニターし、これをオシロスコープタイプのディスプレイに「明らかな電荷」として表示するか、目に見える電圧外乱を発生する等価の電荷注入として表示します。明らかな電荷はピコクーロンの単位で測定されるため、PDテストは非常に繊細なテストと言えます。PDテストの長所は、テスト電圧を上げながらPD現象の発生率をモニターできるために、絶縁不良が起きる前に発生の可能性を予測して、コンバーターが修復不能なほどのダメージを受ける前にテストを中止できることです。

 PDテストの結果は、正しい結果が得られる前にさまざまな誤った数値が出てくることがあるので、慎重に読みとる必要があります。電荷が均等になるための「安定時間」が必要で、数値を読みとるのはテストの最後の10秒間に限ります(図3参照)。継続時間が1秒で、1.875×VRATED(RMS)の電圧を使う改定テストプロトコルを生産テストに使うことができます。

図3:部分放電(PD)テスト

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