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» 2018年07月02日 11時00分 公開

Design Ideas アナログ機能回路:チューニングが不要なオーディオ用LPFの設計法

オーディオ向けの低域通過フィルター(LPF)は、処理の初段でのS/N比(信号対雑音比)を最大にできるよう、ゲイン調整機能を有している必要がある。さらに、低コスト化のためには、製造過程における調整工程をなくさなければならない。そこで本稿では、受動素子の誤差がフィルター特性に及ぼす影響を低減し、なおかつ低コストでの実現が可能な高次フィルターの設計方法を紹介する。

[Diego Puyal/Pilar Molina(サラゴサ大学),EDN Japan]

低コストで実現できる高次フィルターの設計方法

 遮断周波数特性が急峻な低域通過フィルター(LPF)が必要なケースがある。例えば、FMステレオ放送システムにおけるベースバンドのオーディオチャンネル(左右)では次のような特性を持つ低域通過フィルターが必要となる。

  • 3dB遮断周波数が15kHz
  • 通過帯域内のリップルが0.3dB以下
  • 遮断領域での減衰量が50dB以上
  • 左右チャンネル間での位相応答が同一である
  • 19kHzのポイントで急峻な減衰を実現するノッチ特性を持つ

 最後に挙げたノッチ特性は、FMシステムに特有のものである。FMシステムで用いるフィルターの周波数応答特性には、パイロットトーン周波数(19kHz)に対する減衰を最大化しつつ、位相ズレの問題を最小にできるようなノッチ特性が必要となる。

 また、オーディオ向けのフィルターでは、処理の初段でのS/N比(信号対雑音比)を最大にできるよう、ゲイン調整機能を有している必要がある。さらに、低コスト化のためには、製造過程における調整工程をなくさなければならない。しかし、通常のアナログアクティブフィルターでは、複雑さとコストを妥当なレベルに保ちつつ、面倒な調整を不要にするという目標を達成するのは難しい。

 本稿で示すのは、受動素子の誤差がフィルター特性に及ぼす影響を低減し、なおかつ低コストでの実現が可能な高次フィルターの設計方法である。その手順は、フィルターの適切な形態を選択することから始まるが、ここでは入出力インピーダンスが50Ωの7次楕円フィルターをプロトタイプとして使用することにした(図1)。そして、19kHzのパイロットトーン信号に対するノッチ特性を実現するための遮断周波数を18.72kHzに設定した。

図1:7 次楕円フィルターのプロトタイプ (クリックで拡大)
このフィルターの遮断周波数は15kHz、遮断領域減衰量は50dBである。

 このプロトタイプを基に、最終的な回路図を導出していく。それには、まず各構成素子のインピーダンスを、次式を用いて変換していく(この変換によってフィルターの周波数特性が変化することはない)。

 その結果、抵抗はコンデンサーに変換され、上式のパラメーターkを調整することで、誤差10%を許容できるコンデンサーの容量値が求まる。ここでは、kを次式の値として、R1をC1'に変換する。C1'の値は2.2nFである。

 また、インダクタンスは抵抗に変換され、その抵抗値の誤差が2%以下であれば、所望の条件を満足できる。さらに、コンデンサーは次式によってインピーダンスが1/s2に比例するFDNR(frequency dependent negativeresistance:周波数依存型負性抵抗)に変換することが可能だ(次式のDi'がFDNR)。

 以上により、多数のインダクターとコンデンサーから構成されるパッシブフィルターが、多数の抵抗と数個のFDNR、ならびにわずか2個のコンデンサーからなるフィルターに変換できる。FDNRは既成部品としては入手できないが、GIC(generalized impedance converter:汎用インピーダンス変換器)と呼ばれるオペアンプ回路を用いれば等価機能を実現できる。図2に示したのがフィルターの最終的な回路図であり、破線で囲っている部分がGIC回路である。

図2:最終的なフィルター回路 (クリックで拡大)
図1の回路のインダクターは、GIC回路を用いたFDNRに置き換えられている。標準的な誤差特性の抵抗、コンデンサーのみを使用し、またクアッドオペアンプを用いることで部品数が削減され、回路のコストが最小限に抑えられている。

 GIC回路の入力インピーダンスZINは、次式により求まる。

 上式において、Z1=Z3=1/Csとし、Cを2.2nF、Z2とZ5の抵抗値をR(11kΩ)、Z4の抵抗値をR'とすると、Di'が次式のように求められる。

 図2のフィルター回路では、ポテンショメーターR1により全系のゲインを調整できる。また、C1とC2のそれぞれに並列にR2とR26が接続されていることで、DCレベルが保持される。この回路では、標準的な誤差特性を持つ抵抗、8個のコンデンサー、2個のクアッドオペアンプ(LF347)しか使用していない。このオペアンプの数は、フィルター特性の微調整が不要な7次アクティブフィルターの所要数としては少ないといえる。パイロットトーン周波数の遮断用のノッチ特性を正確に設計したことにより、19kHzでの減衰量は60dB以上になる。

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。

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