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» 2018年07月17日 11時00分 公開

Design Ideas アナログ機能回路:周波数-電圧変換器の線形性を改善する回路

周波数-電圧変換器の構成では、一般に単安定マルチバイブレーターが用いられることが多い。しかし、周波数範囲を広く取ると線形性が劣化するという欠点がある。そこで本稿では、2つのダイオードと抵抗による線形性改善回路を紹介する。

[佐藤尚一(新日本無線),EDN Japan]

2つのダイオードと抵抗による線形性改善回路

図1:一般的な周波数-電圧変換回路 (クリックで拡大)
ある周波数のパルス信号をA点に入力すると、周波数に比例した直流電圧がD点に出力される。(a)は回路図で単安定マルチバイブレーター回路を利用する。(b)は各点の電圧波形である。

 周波数-電圧変換器の線形性(リニアリティー)を改善する手法を提案する。周波数‐電圧変換器とは、ある周波数のパルス信号を入力すると、その周波数に比例した直流電圧が得られる回路だ。一般には、単安定マルチバイブレーターを使って実現する(図1(a))。これを使えば周波数-電圧変換器を簡単に構成できる。しかし欠点がある。周波数範囲を広く取ると線形性が劣化するという問題だ。

 線形性が劣化する理由を図1を使って説明しよう。まずA点に負のパルス信号を入力すると、NANDゲートU1があるためB点には正のパルス信号が出力される(図1(b))。同時に、このパルス信号はコンデンサーCTの充電を開始する。一方、C点の電圧はCTとRTで決まる時定数に従って、電源電圧VDDから徐々に減少していく。U2はインバーターである。このためC点の電圧としきい値電圧VTHを比較して、C点の電圧がVTHを超えている期間だけ信号を出力する。これがD点の電圧波形になる。

 B点の電圧がゼロになると、コンデンサーCTは放電を開始する。放電を開始した当初は、ダイオードD1がオン状態であるためコンデンサーの放電は一気に進む。しかしCTの端子電圧が0.7V程度になると、D1がオフして電流が流れなくなる。すなわち放電電流の経路が変わる。次の経路はRTである。ただしRTの抵抗値は、3.6kΩと比較的大きい。放電の速度が大幅に遅くなる。この結果、A点に入力されるパルス信号の周波数が高い場合は、CTに蓄えられた電荷の放電が完了しないうちに新たなパルス信号が入力されるという現象が発生する(図2)。これが線形性を劣化させる原因になる。

図2:線形性が劣化する理由 (クリックで拡大)
入力周波数が高くなると、図1中のコンデンサーCTに蓄えられた電荷が放電しきる前に、次のパルス信号が到来する。すなわち残った電荷による電圧Vresが生じてしまう。この電圧が線形性を劣化させる原因となる。

 そこでコンデンサーCTに蓄えられた電荷全てを短時間で放電させるために、新たな放電経路を追加する(図3)。追加する回路(線形性改善回路)は、2つのダイオード(D2とD3)と抵抗RBから構成される簡単なものだ。ただしD3には、バイアス電流IBを常時流しておき、順方向電圧降下VFを発生させておく。

図3:線形性を改善した周波数-電圧変換回路 (クリックで拡大)
図1に示した回路に、D2とD3、RBから構成される線形性改善回路を追加した。コンデンサーCTに蓄えられた電荷は、放電当初は主にダイオードD1を介して流れる。CTの端子電圧が下がりダイオードD1がオフすると、次はダイオードD2を介して放電される。このためCTに蓄えられた電荷は、RTを経ずに一気に放電されるようになる。

 線形性改善回路を追加した後の放電電流経路は以下のようになる。まず、放電当初は主にダイオードD1を介して流れる。CTの端子電圧が下がりD1がオフしても、ダイオードD2を経由して放電が続く。D2はダイオードD3の順方向電圧降下VFでバイアスされているため、CTの端子電圧が0V付近に達してもオン状態を保持できるからだ。この結果、CTの電荷は一気に放電される。

 入力パルス信号の周波数と出力電圧の関係を測定した結果が図4である。従来の回路では、200k〜300kHz辺りから線形性が悪化していた。しかし線形性改善回路を導入したところ、2MHzまで高い線形性を確保できるようになった。なお別の実験では回路定数を見直すことで、15MHz程度まで高い線形性が得られることを確認している。

図4:線形性の改善結果 (クリックで拡大)
図1に示した従来の回路では数百kHzを超えた辺りから、線形性が大幅に悪化していた。しかし図3に示した線形性回路付き回路では、2MHzまで高い線形性を確保できる。

 実際に、図3の回路を使用する場合は、以下の2点に注意されたい。第1に、CTの放電電流である。放電電流は、NANDゲートを介して流れる。従って、この電流値がNANDゲートと放電経路にあるダイオードを破壊しないように、CTの容量値を決定する。図3では100pFに設定した。

 第2にインバーターの入力保護用抵抗Riである。インバーターの入力保護ダイオードの最大電流Iiを超えないように設定しなければならない。しかしRiを大きくしすぎると、インバーターの入力容量とRiによる時間遅れが発生してしまう。図3ではRiを1kΩに設定した。

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。

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