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マイコンに搭載されたA-Dコンバーターの測定精度を上げる方法【原因と対策】ハイレベルマイコン講座【ADC測定精度編】(1)(1/5 ページ)

すでにマイコンを使い込んでいるマイコン上級者に向けた技術解説連載「ハイレベルマイコン講座」。今回から2回にわたって、ノイズの影響を受けず、マイコンに搭載されているA-Dコンバーター本来の測定精度を得る方法を、実際の測定を基に解説する。

» 2018年08月29日 11時00分 公開

 ユーザーからマイコンに搭載されているサンプル&ホールド型A-Dコンバーターの実測データの誤差が、データシートの保証値(表1)から懸け離れているという問い合わせが頻繁にある。これは、マイコンやその周辺回路(電源、PCなど)から発生するノイズの影響で正確な変換(測定)ができていない場合が多い。本記事では、これらのノイズを除去し、A-Dコンバーター本来の測定精度を得る方法を、実際の測定を基に解説する。

表1:A-Dコンバーターの保証誤差

 1回目の今回は、簡単にA-Dコンバーターの動作原理を復習し、次に、誤差の原因となるノイズについて解説する。そして、現実のノイズレベルを把握するために、実際にマイコンの電源ラインに乗っているノイズをオシロスコープで観測し、同時にA-Dコンバーターで変換を行い、現実に発生している誤差を認識する。次に、誤差の原因となるノイズを減少させるためのハードウェア対策とソフトウェア対策を解説する。さらに、ハードウェア対策の効果をオシロスコープで観測する。

 次回、2回目は、具体的にハードウェア対策とソフトウェア対策を施した場合のA-Dコンバーターの変換誤差を測定し、対策の効果を確認する。その他、A-Dコンバーターを使用する際の注意事項も解説する。


A-Dコンバーターの動作原理(復習)

 サンプル&ホールド型A-Dコンバーターの動作原理をここで簡単に復習しておこう。サンプル&ホールド型A-Dコンバーターの動作原理の詳細は、「Q&Aで学ぶマイコン講座(12):サンプル&ホールド型A-Dコンバーターのサンプリング時間はどうやって決めるの?」を参照してほしい。

 サンプル&ホールド型A-Dコンバーターは、測定したい電圧をいったん内部の電圧保持用コンデンサーを使って取り込み(サンプリング)、実際の変換はこのコンデンサーの電圧を使って行う。

 電圧保持用コンデンサーと被測定電源を一定時間以上接続しておくと、被測定電源が電圧保持用コンデンサーを充電し、被測定電圧と電圧保持用コンデンサーが同電位になる。同電位になったら、電圧保持用コンデンサーを被測定電圧源から切り離し、外部ノイズの影響を受けないようにする。次に、逐次比較用の比較器と接続する。その後、D-Aコンバーターから比較用の電圧を出力し、電圧保持用コンデンサーの電圧と比較する。この時、二分検索(バイナリサーチ)を使って比較する。二分検索は分解能の数だけ行えば変換終了である。例えば、12ビット分解能のA-Dコンバーターであれば12回、10ビット分解能であれば10回、8ビット分解能であれば8回で変換は完了する。

 この二分検索を行っているときに、D-Aコンバーターから入力される比較用の電圧にノイズが乗っていたり、比較器(アナログ回路)がノイズの影響を受けて正確な比較ができなくなったりすると、A-Dコンバーターの変換結果に誤差が発生する。

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