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» 2018年09月27日 11時00分 公開

中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(23):接点部品(2)―― 接点の規格 (2/2)

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]
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微少電流での使用

 接点の開閉電流は定格を超えてはいけませんがあまりにも少ない電流の開閉も信頼性を損ないます。
 SWの接点は大気中で使用しますので接点表面は自然酸化され、酸化膜が発生します。薄いとはいえ絶縁膜ですのでこのままでは接点の導通が困難になります。

 通常、接点には開閉電力に応じたアークが発生しますのでこのアークによって薄い酸化膜は焼き切られますが、開閉電力があまりにも小さい場合にはアークによる焼き切り作用が得られませんので適切な範囲の電流で使用する必要があります。
 インタフェースの関係上、どうしても微少電流を開閉しなくてはならない場合には接点の表面処理を工夫するか、SWの接点信号で微少信号用リードリレーを駆動するなどの回路的な工夫が必要です。

接点の材質・表面処理による区分

接点の材質と特徴

 一般的な接点の材料、表面処理の概要を表3a,bに示します。

表3a:接点材質による区分
Ag・Pd(銀パラジウム) 耐食性が良く、耐硫化性も良い。ドライサーキットにおいては、有機ガスを吸着してポリマーを発生しやすいので金クラッドなどになっています。
Ag(銀) 導電率、熱伝導率は金属中最大です。欠点としては、硫化ガス雰囲気で硫化皮膜を生じます。低電圧、低電流レベルでは接触不良になりやすい面もあります。
Ag・Ni(銀ニッケル) 電気伝導度に関しては、Agに匹敵し、耐アーク性に優れます。
Ag・Sn・O2(銀酸化錫) 優れた耐溶着性がありますがAgと同じく硫化物雰囲気では硫化皮膜を生じます。
Ag・W
(銀タングステン)
硬度、融点は高く、耐アーク性に優れ、溶着、転移に対して強いですが、接触抵抗が高く、耐環境性に劣ります。

表3b:接点の表面処理による区分
ロジウムめっき(Rh) 完全な耐食性と高硬度を兼ね備え、めっき接点として比較的軽負荷の場合に使われます。
有機ガス雰囲気ではポリマー生成に対する注意が必要なので、密閉型(リードリレーなど)として用いられますが高価です。
金クラッド(金貼り) 耐食性に最も優れた金を母材上に圧接したもので厚みの均一性とピンホールのないことが大きな特徴です。使用雰囲気条件が比較的悪い場合、特に微小負荷に対し効果が大きいのですが既存品のクラッド化は、設計的、設備的に困難です。
金めっき 金クラッドとほほ同等の効果がありますが、めっき処理によってはピンホールやキ裂の恐れがあリ条件管理が重要です。既存品の金めっき化は比較的容易です。
金フラッシュ
(金薄めっき)0.1〜0.5μm
スイッチあるいは、スイッチを組んだセットの保管中の接点母材の保護が目的であるが、負荷開閉に際してもある程度の接触安定性を得ることができます。
出典:http://www3.panasonic.biz/ac/j/control/relay/cautions_use/index.jsp

耐硫化性

 硫化とは硫黄とある種の金属が反応して硫化物を作る現象で、影響は銀や銅に顕著に現れます。特に接点に使われる銀や銅材料などは耐硫化を考慮しなければなりません。
 銀の硫化物(硫化銀)は絶縁性なので接触不良になりますし、銅などでは硫化銅による硫化物クリープを引き起こします(図2)。この現象は硫化水素濃度0.05PPM程度でも発生します。
(一般環境では0.00数PPM程度)

図2:硫化物マイグレーション例

 耐硫化性の評価はH2S濃度が数PPMから10PPM、40〜50℃/70〜80%RH、260〜1000Hrの暴露環境で評価します。
 また、亜硝酸ガス(NoX由来)が混入してくると加速される傾向にあるといわれています。

 対策としては接点材として銀以外の使用や、接点表面に錫(スズ)メッキ、ニッケル(Ni)メッキ(数マイクロ以上)を施します。

 現状で耐硫化が要求されるのは、温泉地域および、経済優先で脱硫処理をしていない重油ボイラーを使用している地域(実質的には中国など)向けの製品です。
 また梱包用段ボールの原紙に含まれる還元性硫黄が大気中の湿気と反応して硫化水素となり硫化現象を引き起こした事例も報告されていますので「使用材料」の概念を広げる必要があります。https://www.oki.com/jp/otr/2015/n225/pdf/otr225_r20.pdf

還元性硫黄:硫化水素(H2S)、ゴム中の加硫材の環状固体硫黄分子(S8)など

注)今回取り上げた機器組み込み用電源SWとしてはUL1054が関係しますが、現在UL1054はUL61058-1へ移行が進められています。

 次回はSWを使う場合の注意事項について説明します。

執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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