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» 2018年11月27日 10時00分 公開

中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(25):接点部品(4)――SWのディレーテング (1/3)

これまでスイッチ(SW)に適用される安全規格や使い方、選択のポイントなどについてその概要を説明してきました。今回は、SWのディレーティングの考え方や失敗事例などについて説明します。

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]

 前回まではスイッチ(SW)に適用される安全規格や使い方、選択のポイントなどについてその概要を説明してきました。
 今回はSWのディレーティングの考え方や失敗事例などについて説明します。

電流ディレーティング

電源SW

 一般的な電子機器用電源SWにとって通電時の電流はI2Rによる発熱(=損傷)を左右しますので使用に当たってはディレーティング(Derating=減定格)を取って使用しなければなりません。
 ディレーティングの割合と市場故障率の間には密接な関係があり、そのような関係をまとめた資料としては米国の軍用資料MIL-HDBK217シリーズがあります。この資料は常に市場実績が反映されていて、市場故障率を算出する基礎資料としてよく用いられます。

 このMIL-HDBK-271Fの14.1項スイッチによれば設計者が管理できる項目として負荷電流による負荷係数πLがあります。
 ストレス比 S=(使用値/抵抗負荷定格) として、突入電流を生じるランプ負荷時のπLの計算式は、

     πL=exp(5×S)2                      …1式

になり、代表的なSとπLは次のような関係になります。

  S=0.1→πL=exp(0.5)2=1.28   S=0.2→πL=exp(1.0)2=2.72
  S=0.25→πL=exp(1.25)2=4.77  S=0.3→πL=exp(1.5)2=9.48
  S=0.4→πL=exp(2.0)2=54.6

 SWの故障率モデルは上記MIL-HDBKによれば2式に示すような直列モデルとなり、

     λP=λb・πL・πC・πQ・πE                   …2式
       (λb:タイプ別基礎故障率、πC:接点構造、πQ:品質ファクター、πE:環境ファクター)

仮にπLを10以下にしたければ通常時の使用値は抵抗負荷定格の30%が目安になります。また突入電流のピーク電流に対しては保証値の60〜80%を目安にします。


 なお電源SWの挿入位置はSW-OFF時に回路の帯電エリアをできる限り減らす観点からACプラグの直後にあるヒューズの後*)とします(図1)。
*)一般にはこのSWの後(=機器側)にノイズフィルターなどの構成部品が接続されます。

図1:電源SWの挿入位置

2次側SW、および位置検出用SW

 このようなSW回路の負荷としては多くの場合、抵抗性負荷と考えられ、前記MIL-HDBKの負荷係数πLの計算式は次のようになります。

     πL=exp(1.25×S)2                   …3式

 許容できるストレス比Sは使用条件によっても変わりますが、仮に2次側SWを5個使用した時の合計故障率を前述の電源SW1個の故障率と等しくすると仮定した時に許容される2次側SW1個あたりのπLは2になります。この条件を満たすストレス比SはS=0.67程度になり、定格比70%以下で使うことになります。
(一般的なテレビであれば側面や天面に音量調節、チャンネル変更、入力切替など数多くのSWが使われています)

 また2次側SWの接点材料としては表面の安定性から金メッキ処理品が多く使われますが、金メッキ膜は大電流アークで損傷します。金メッキ品は定格電流を超えて使用すると劣化がひどくなることはSWを使う上でのノウハウとして覚えておいてください。

 設計指針によっては図2のように安全規格対応のステップダウントランス(変圧比n)を介して2次側で電源をON/OFFする回路構成も考えられます。しかし、2次側SWだからといって全てが低圧接点定格で良いわけではないので注意が必要です。
 この場合、印加電圧は1/n倍になりますがSWの接点電流はn倍された電流になります。当然、ラッシュ電流もn倍されますので接点仕様にも影響します。

図2:2次側での電源断続
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