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伝送路の特性とシグナルコンディショナーによるジッタの補償高速シリアル伝送技術講座(11)(1/4 ページ)

今回は伝送路の減衰特性によるジッタ、伝送路の最適な設計方法、半導体デバイスによるジッタの補償とその仕組みについて説明していきます。

» 2019年01月22日 11時00分 公開
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 前回(第10回)では高速データ伝送の際に、アイ(EYE)波形の開口を妨げるジッタについて説明しました。今回は伝送路の減衰特性によるジッタ、伝送路の最適な設計方法、半導体デバイスによるジッタの補償とその仕組みについて説明していきます。

 送信デバイスから出力された信号は、図1上のように基板上の配線(表層:マイクロストリップライン、内層:ストリップライン)、銅線ケーブル、コネクターなどの伝送路を通過し、減衰や反射を伴いながら受信デバイスに到達します。受信端では第10回で説明した一定量のDJ(Determination Jitter)とそれに付随するRJ(Random Jitter)の影響でEYEの開口が送信端よりも狭くなります(図1右下

図1=送信→伝送路→受信 / =送信端波形(左)、受信端波形(右)

 基板上の配線や銅線ケーブルなどで構成される伝送路は、図2左のように高周波成分が低周波と比較すると大きく減衰する伝送損失(インサーションロス)特性を持ちます。ジッタの一種であるISIジッタ(図2右、黄丸)はこの伝送路のインサーションロスにより発生し、受信端EYEの開口を狭くします。

図2=伝送路の伝送損失(インサーションロス) / =ジッタの種類とISIジッタ

 それでは伝送路がこの周波数依存の減衰特性を持つ理由と媒体による減衰特性の違いについて説明していきます。

伝送路の伝送損失で高周波の減衰が大きくなる理由と材質、構造による減衰特性の違い

 ケーブルや基板上の伝送路で起こる周波数依存性の損失は、第6回で説明した、高周波時の表皮効果による導体損失と誘電体の電気分極による誘電損失の異なる2つの損失の組み合わせによるものです。

表皮効果による導体損失

 GNDや差動間など2点間の結合先のある導体の伝送路では、連載第4回の「図18:ポインティングの定理」の記載載のように、電位差により電流が流れ電界と磁界が発生すると、その外積方向に電磁エネルギー(信号)が伝わります。ですが、高周波になればなるほど、この電磁波による導体の電流は導体表面に集中し、導体表面の電流(電流密度)は導体内部よりもとても高くなります。高周波では、マイクロストリップラインや同軸ケーブルの場合は、図3右のように電界と磁界の向きが高速で変化する事で、導体表面の赤色部分に集中して電流が流れます。結果として、高周波では電流は導体表面を流れ、内側には流れづらくなることで高周波時の導体損失は大きくなります。

 どの程度導体内部にまで電流が流れるかは、表皮深さを表す数式(図3左)で計算できます。例えば、銅線で1GHz時の表皮深さを計算すると、わずか0.002mm程度になります。

図3=表皮効果:表皮深さの数式 / =導体表面の電荷と電磁界の結合

 表皮効果による導体損失は周波数をfとすると√fの係数で表現でき、図2左グラフの青線のように高い周波数では緩やかなカーブになる特長を持っています。

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