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1200V耐圧のSiCバイポーラトランジスタ、オン抵抗は17mΩフェアチャイルド SiCバイポーラトランジスタ

フェアチャイルドがSiC材料で製造するBJT(バイポーラジャンクショントランジスタ)は、耐圧1200Vでオン抵抗が17mΩと低い。同様にSiCを使うJFETやMOSFETに比べて、スイッチング損失や導通損失が少ないという利点もあるという。スイッチング周波数が高いほど、それらの損失の差は広がり、BJTの優位性が大きくなる。

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 フェアチャイルドセミコンダクタージャパンは2012年12月、SiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)を使ったBJT(バイポーラジャンクショントランジスタ)を発表した。耐圧1200Vで最小17mΩのオン抵抗を実現している。産業機器や電気自動車といった分野に向ける。また、動作温度範囲が最高250℃の品種も用意しており、こちらは航空機や地熱エネルギーシステムなどをターゲットとする。現在はエンジニアリングサンプルを出荷中であり、実際の商品化は2013年前半を予定している。

 フェアチャイルドは、このSiC BJTによって、SiCパワー半導体デバイス市場に本格的に参入することになる。


フェアチャイルドが発表したSiC BJTの製品ラインアップ 出典:フェアチャイルドセミコンダクタージャパン

MOSFETではなく、バイポーラトランジスタ

 現在、SiCパワー半導体デバイスの主流はJFET(接合型FET)やMOSFETだが、フェアチャイルドが手掛けるのはバイポーラトランジスタである。同社は2011年4月に、SiC BJTの開発を手掛けるスウェーデンのTranSiCを買収しており、今回発表した製品は、TranSiCの技術をベースにしたものだ。

 フェアチャイルドは、「JFETやMOSFETに比べて、バイポーラトランジスタはスイッチング損失や導通損失を低く抑えることができる。また、高い電流密度が得られる上に、高い動作温度も実現できる」と、その利点を述べている。「特に、耐圧が高い場合のオン抵抗には大きな差が出てくる。今回当社が発表した製品は、耐圧1200Vで最小17mΩのオン抵抗を実現しているが、他社のSiC MOSFETは同じ耐圧でオン抵抗は約80mΩと比較的大きかった」(フェアチャイルド)。


SiCのBJT/JFET/MOSFETにおける損失の比較
太陽光発電システムでの用途を想定した、出力が5kWの昇圧回路(入力電圧300V、出力電圧400V)において、SiC BJT、SiC JFET、SiC MOSFETの損失を、異なる温度/スイッチング周波数の下で比較した。グラフの緑色はドライバ損失、紫色はターンオフ損失、赤色がターンオン損失、青色は導通損失である。このグラフから、BJTはスイッチング損失(ターンオフおよびターンオン損失)が特に低いことが分かる。スイッチング損失の差は、スイッチング周波数が高くなると大きくなる(上段の2つのグラフは20kHz、下段のグラフは60kHz)。 出典:フェアチャイルドセミコンダクタージャパン

基板面積も約2/3に

 SiCは、Si(シリコン)に代わる新しいパワー半導体材料の候補の1つだ。Siに比べると、バンドギャップが大きい、高温でも安定して動作する、熱伝達に優れるといった利点を持っており、SiCを用いれば、高効率で電流密度が高く、スイッチング速度も高いトランジスタを実現できる。スイッチング速度が高いので、より小型のインダクタなどを使用することができ、基板面積の削減につながる。


左はSiのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、右はフェアチャイルドのSiC BJTを使った場合の基板構成である。SiC素子はSi素子に比べてスイッチング速度を高められるので、より小型のインダクタを使用できる。出力キャパシタもIGBTでは3個必要だが、SiC BJTでは1個だけで済む。その結果、SiC BJTを使うと、SiのIGBTを使う場合に比べて基板面積を約2/3に抑えることが可能だ。 出典:フェアチャイルドセミコンダクタージャパン

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