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計装アンプでデジタル・オシロの耐雑音性を改善するDesign Ideas 計測とテスト

オシロの耐雑音性を改善する方法を紹介する。実験室にある部品でできるところがカギだ。

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 太陽光発電プラントの仕様を決めるために、ある製品の消費電流を正確に測定する必要が生じた。その製品は、数秒間に内部のいくつかのデバイスをオン/オフするものだった。普通の電流計では、電流変化が速すぎ、目で追うことはできなかった。

 一方、上司からは、電流のピーク波形のオシロスコープ写真を求められていた。そこで、台車搭載型のDSO(digital storage oscillo scope)を使うこととし、微小抵抗を製品の正電源入力線に直列に挿入して電流サンプリング抵抗とし、そのDSOで抵抗両端の差動電圧をチャンネルAとチャンネルBで測定しようとした。

 ところが、地元FM放送局のRFノイズが、その微小抵抗に電圧変動を誘起し、サンプリング抵抗に生じる電圧はそれに埋もれてしまった。これを回避するために抵抗値を大きくすると、電源ラインに不要な電圧降下が発生して、12V電源に電圧オフセットが生じた。このため、オシロスコープの分解能が低下し、微小な差動信号を正確に測定することができなくなってしまった。

 そこでオシロスコープのACグラウンドを外し、オシロスコープをサンプリング抵抗に対してフローティングにしてみたが、トレース上のRFノイズは大幅に増加してしまった。昔からのアナログ(ノンストレージ)オシロスコープを用いることも考えたが、DSOならばストレージ機能があるので、波形をとらえて、報告書に必要なプリントが得られるのに、と釈然としなかった。

 そこで、実験室にある部品を探しまわり、この問題を解決することができる回路を組み立てたので紹介しよう(図1)。


図1 耐雑音性を改善するための回路
計装アンプを用いたフロントエンド回路を追加して、RFノイズの多い環境におけるオシロスコープの性能を改善する。回路を金属でシールドすると、さらに良い結果が得られる。

 集めた部品の中にたまたま、高周波のバックグラウンド・ノイズから小信号を抽出できる計装アンプ(IC1)があった。このアンプはもともと低速応答で、RFノイズを減衰させるが、より低周波の信号の増幅には影響しない。アンプの入力と出力にRC低域通過フィルタを付けることにより、隣接するスイッチング電源やロジック回路、そしてマイクロプロセッサが発生する低周波ノイズも減衰させる。

 筆者は、アナログ回路電源の設計にあたって、ノイズを発生しやすいDC-DCコンバータは使用しないようにしている。しかし、DCDCコンバータIC2は、幸い技術的に理にかなったアプローチを提供してくれた。DC-DCコンバータは、一般に負荷電流が増えるとノイズも多くなるが、この回路では、負荷は計装アンプだけで、消費電流は2mA〜3mAと少ない。フィルタ部品を数個追加すれば、ノイズをさらに抑制することができる。

 通常動作では、測定対象製品の消費電流は300mAから800mA程度まで変動する。電源回路で発生する電圧降下を最小にするため、電流サンプリング抵抗として、大きさが5mm×20mmの10A/250VヒューズF1を用いた。その電圧降下は電流100mA当たり約1mVで、ヒューズの公称定格に対し十分に小さく、測定に非線形性が生じることはない。

 計装アンプは米Analog Devices社の「AD620」で、475Ωの利得設定抵抗R2により、利得は105V/Vとなり、F1に1Aの電流が流れると、約1Vの出力を発生する。キャパシタC12とC13は、高周波ノイズに対して低インピーダンスになる。


Design Ideas〜回路設計アイデア集

【アナログ機能回路】:フィルタ回路や発振回路、センサー回路など

【パワー関連と電源】:ノイズの低減手法、保護回路など

【ディスプレイとドライバ】:LEDの制御、活用法など

【計測とテスト】:簡易テスターの設計例、旧式の計測装置の有効な活用法など

【信号源とパルス処理】:その他のユニークな回路




※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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