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スイッチノードリンギングの原因と対策広い入力電圧範囲の高速DC-DCコンバーターで発生する(1/6 ページ)

昨今、広入力電圧範囲DC-DCコンバーターが使用されるケースが増えてきたが、MOSFETの高速のターンオンとターンオフは、スイッチノードのリンギングを発生させ、さまざまな障害の原因となっている。そこで、本稿では、DC-DCコンバーターにおけるスイッチノードリンギングおよびスパイクのメカニズムを取り上げ、その発生メカニズムと対策方法を詳しく解説する。

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はじめに

 産業、自動車および通信の基幹設備に使用される広入力電圧範囲DC-DCコンバーター用MOSFETの高速のターンオンとターンオフは、スイッチノードのリンギングを発生させ、それによるスパイク(電圧)がMOSFETあるいは集積化ゲートドライバの定格電圧を越えることにもなる。コントロールされないスパイクは、システムの信頼性を低くし、あるいはひどい障害を招くことさえあり得る。

 本稿では、DC-DCコンバーターにおけるスイッチノードリンギングおよびスパイクのメカニズムを取り上げる。スイッチノード過渡スパイクの原因をMOSFETのパラメータ、ドライバの強さおよび、回路内の寄生素子との関連から解説し、集積化ゲートドライバの限られた定格電圧にリンギングが重畳することの影響を検討していく。さらに降圧時と昇圧時のスイッチノードリンギングに対する見逃されやすい違いを説明する。

 そして、降圧と昇圧の各電力段におけるスイッチノードリンギングをコントロールするための幾つかの方法をそれぞれの利点と問題点を含めて提起する。スイッチノードリンギングのメカニズムを明瞭に理解し、適切な設計技術を適用することは、ロバストで高信頼な設計を行い、設計過程の後半段階でのトラブルシューティングや故障時間を省く結果になるはずだ。

高集積化と一層の低電圧化というトレンド

 DC-DCコンバーターは、ソリューションのサイズを縮小すべく高周波化に向かっている。スイッチング周波数が高くなるにつれ、DC-DCコンバーターにも、スイッチング損失を抑えるためにより高速のターンオン、ターンオフのパワーMOSFETが採用される。しかし、これによりスイッチノードの遷移が急峻になり、それに伴ってスイッチノードリンギングおよびスパイクが発生する。

 広入力電圧範囲DC-DCコントローラおよびレギュレーターの新製品は多くの場合、ゲートドライバの定格電圧が比較的低くなる集積化プロセスにより製造される。40〜100VのMOSFETとの連携動作を前提とする部品に12V、8Vあるいは5V(といった低電圧)で動作するゲートドライバが含まれるのだ。このように、16〜20V定格の旧世代ディスクリート形ドライバで得られていたセーフティマージン(安全動作域)は減少している。

 スイッチングの高速化とドライバ回路定格の低電圧化とがあいまって、ドライバ回路は、リンギングが発生しやすく、また、集積化プロセスで組み込まれたゲートドライバとブートストラップ回路の定格電圧を超えるスイッチノードスパイクに起因するダメージが起こりやすい。

 より多くの機能の集積化と一層の低電圧化は、業界トレンドであり、高度の集積化とコスト有効性を可能にする技術であることから、後戻りすることはないだろう。FET製造メーカーは、このような集積化回路(IC)のトレンドを歓迎しており、100Vに達する定格のMOSFETにロジックレベルゲート(4.5V)を組み込もうとしている。こうした状況だから、新世代のDC-DCコントローラおよびレギュレーターを利用して設計するエンジニアは、集積化ゲートドライバ回路における高速遷移と低電圧マージンとの折り合いをつけることに習熟することが必要だ。

 まず、降圧と昇圧の電力段でのスイッチノードリンギングを説明し、そのゲートドイバへの影響を解説する。リンギングを低減し、スイッチノード電圧スパイクからゲートドライブ回路を保護するための幾つかの効果的手段を、それぞれの実験結果と得失を含めて解説する。また、適切なレイアウトがスイッチノードスパイクを低減する上で重要なことも強調する。

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