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PCIe、USB、Ethernet、HDMI、LVDSなど高速伝送技術の基本を理解するために高速シリアル伝送技術講座(1)(2/5 ページ)

本連載では、さまざまな高速通信規格に使用されている物理層の仕組みや性能、SerDesの機能や特徴とその種類、高速伝送での主要なパラメーター、伝送路を含んだ技術や設計手法などを分かりやすく解説していく。

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高速信号伝送の歴史

 今日、ケーブルを使用した高速通信では差動伝送方式が物理層として一般的に採用されています。この差動伝送技術の理解のために、差動信号伝送の歴史から説明を始めます。

 今から約40年前の1978年、通称「RS-422」と呼ばれているEIA-422仕様が発行されました。RS-422では図2にように送信側は差動出力、受信側は終端抵抗と差動入力で構成されています*)

 この規格は今でも距離の離れた機器同士(最大1.2km)や低速(10Mbps)の制御信号の通信で数多く使用されています。短い場合は高速で通信できますが、表2のようにケーブルが長くなるに従いスピードは低下し、1.2kmのときのスピードは80Kbpsになります。

左=図2:EIA-422 接続図*)/右=表2:RS-422 距離とスピードの関係(AWG24換算)

*)参考資料:http://ftp.tiaonline.org/tr-30/TR-30.2/Public/2005%20Meetings/2005-06%20Arlington/For%20Review/TIA-EIA-422-B-Scanned.pdf

 このRS-422はシングルエンド信号を使用したシリアルインターフェースRS-232の性能向上を目的として開発され、RS-422物理層を加えるだけで、大幅な高速、長距離伝送が可能となりました。RS-422は現在も産業系の機器間通信で多く採用されている物理層です。

 このようにRS-422はシリアルI/Fの物理層として差動方式を採用しているため性能が高く、またシリアルインターフェースの物理層の変更だけで導入が容易であったため、民生向けでもAppleが1980〜1990年代にマキントッシュコンピュータの機器間通信仕様「AppleTalk」の1つである「LocalTalk」で、プリンタやモデム、PC同士の通信インターフェスに採用していました。図3のように安価なPhoneNetアダプター(Farallon Computing[現Netopia]製)を使用することで、電話線を使って簡単に機器同士をデイジーチェーン(芋づる式)に接続できました。


図3:PhoneNetトポロジ 出典:http://www.vintagemacworld.com/ltalk/cover.jpg

 当時のパソコンPC/ATのシリアルポート(RS-232)の伝送距離は最大5m。伝送速度は最大64Kbpsと低速だったですが、PhoneNetではRS-422の差動伝送技術を採用し、デイジーチェーン接続でポート間600m(AWG26ケーブル)、最大20台までの接続(最大230Kbps)を実現していました。このRS-422の出力段の等価回路を図4に示します。


図4:RS-422出力段等価回路

 図4(1)図4(2)はRS-422ドライバ等価回路で、上部M3/M4のPMOS 2個はそれぞれ排他的にオン/オフし、下部M2/M1のNMOS 2個も同様です。図4(1)の赤丸上部 右側M3 PMOSがオン、下部左側M2 NMOSがオンで論理値High、図4(2)上部左側M4 PMOSがオン、下部右側M1 NMOSオン状態が論理値ゼロになります。

 この動作から分かるようにRS-422 差動ドライバの最大出力振幅はGNDから電源電圧(Vdd)までのフル振幅になります。

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