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発振周波数が制御電圧に反比例するVCODesign Ideas アナログ機能回路(1/2 ページ)

VCO(Voltage-controlled oscillator)は、電圧で発振周波数を制御する発振機だ。今回の記事では、OTAとヒステリシス付き比較器で構成したVCO回路の仕組みについて解説する。

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反比例の理由

 図1は三角波発振器の構成例である。比較器と積分器を使う。比較器と積分器が正帰還ループを形成している。比較器の出力が積分器を、積分器の出力が比較器を駆動する。比較器と積分器には通常、オペアンプを使う。


図1:三角波発生回路の構成例。(クリックで拡大)
積分器とヒステリシス付き比較器で構成している

 比較器の非反転入力に接続した抵抗で比較器のヒステリシスを設定する。つまり、比較器の出力が立ち上がるときのしきい値電圧と、降下するときのしきい値電圧が異なるように設定する。比較器がヒステリシスを持つため、積分器の出力で三角波が取り出せる。

 三角波出力の電圧振幅は、比較器の立ち上がりのしきい値電圧と降下のしきい値電圧の電位差に相当する。可変抵抗で積分器の利得を変化させると三角波の発振周波数が変化する。三角波出力の電圧振幅を一定にしたまま発振周波数を変えられる。

 図2の回路は、発振周波数が制御電圧に反比例するVCO(電圧制御発振器)である。制御電圧VINを大きくすると発振周波数が低くなる。出力は方形波である。利得を固定した積分器とヒステリシスを変えられる比較器で構成した。オーディオ信号遅延器のような時間遅延システムで使うクロック信号の発生器や、A-D変換器を使う回路で使える。


図2:OTAとヒステリシス付き比較器で構成したVCO回路。(クリックで拡大)
発振周波数が制御電圧に反比例する

 制御電圧VINを大きくすると、比較器IC3Aのヒステリシスが大きくなる。この結果、積分器が出力する三角波の電圧振幅が大きくなる。積分器はコンデンサーC1と抵抗R3、オペアンプIC4で構成した。三角波の電圧振幅が大きくなるとVCOの発振周期が長くなる。つまり発振周波数が低くなる。

 OTA(Operational Transconductance Amplifier)を使って、制御電圧VINを比較器のヒステリシスに変換する。IC2がOTAである。まず、制御電圧VINを電流に変換する。電圧制御電流源であるIC1とQ1を使う。これらがOTAにバイアス電流IABCを供給する。バイアス電流はIABC=VIN/RINで計算できる。VINが0Vから10Vまで変化すると、IABCは0mAから0.5mAまで増加する。

 OTAは比較器の出力電圧に応じて、流れる向きが反転する電流を発生する。この電流の大きさは、流れる向きにかかわらずIABCにほぼ等しい。比較器の出力電圧が15VのときOTAは電流ソース回路、−15Vのときは電流シンク回路となる。

 OTAが出力する電流の向きに応じて、比較器の非反転入力の電圧がR2×IABC=R2×VIN/RINだけ増加もしくは減少する。この結果、比較器のしきい値電圧は比較器の入力オフセット電圧を中心に、正負にR2×VIN/RINだけシフトした値になる。

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