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サーミスタ(1) ―― NTCサーミスタとPTCサーミスタ中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(11)(1/4 ページ)

今回から「サーミスタ」を取り上げます。サーミスタの分類について簡単に説明するとともに、サーミスタを使用した回路動作の概要について解説していきます。第1回は、NTCサーミスタとPTCサーミスタの違いとともに、NTCサーミスタによる突入電流制限回路について考察します。

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 サーミスタには温度特性によって正特性のものや負特性のもの、および、扱う信号によって小信号用や電力用に分けられます。また、一部の電力用のサーミスタについては安全規格対応などによって分けられます。

 ここではサーミスタの分類について簡単に説明するとともに、サーミスタを使用した回路動作の概要について説明します。なお、安全規格に関しては各位にて最新版の内容を確認してください。

NTCサーミスタによる突入電流制限回路

NTCサーミスタとは

 サーミスタ(thermistor)とは熱に過敏に反応する抵抗体を指し、

  • 温度が上昇した時に抵抗値が上がるタイプのものを
          PTCPositive-Temperature-Coefficient)サーミスタ
  • 温度が上昇した時に抵抗値が下がるタイプのものを
          NTCNegative-Temperature-Coefficient)サーミスタ

と言います。それぞれの特徴を活かして、

  • PTCサーミスタ
    • 温度センサー、電流による自己発熱を利用した電流制御素子、セラミックPTC(チタン酸バリウム系)やポリマーPTC(PPTC)などによる過電流保護素子など
  • NTCサーミスタ
    • 温度センサー、電源回路の突入電流制限回路

などに用いられます。

 ここでは最初にNTCサーミスタについて説明します。
 材料は大まかに言うと、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅などの酸化物の微粉末を混合して焼結したもので、セラミックキャパシターやフェライトなどと同類のセラミック部品に分類されます。したがってディスク型NTCサーミスタの製造工法も表1に示すように、これら部品と類似の工程になりますが、温度や成分などはサーミスタメーカー各社のノウハウによって変わります。

表1:ディスク型NTCサーミスタの製造工程概要
①配合 製品の特性(比抵抗値およびB定数)が得られるように、Mn2O3、Co2O3(またはCo3O4)、NiO、Fe2O3、CuOなどの金属酸化物を適切な比率で配合します。
②混合 原料を混合機で混ぜ合わせます。原料がなるべく均一に、しかも早く混合するような適切な混合機が選ばれます。
③仮焼き 原材料の熱分解や成分の均質化を行い、規格外の超微粉を焼成によって溶解し適度の粒子サイズへ粒成長させます。⑦の本焼成温度より若干低い800〜1000℃が多く用いられます。
④粉砕 製品特性を考慮した粒度分布にする目的の他、本焼成のときに焼結反応が起こりやすいようにするため仮焼成された原料を、砕機を用いて数マイクロまで粉砕します。必要に応じて粗粉砕と微粉砕(1μm以下)に分ける場合もあります。
6⑤造粒 成形に適した粒径にするために、加圧造粒法やスプレードライ法などの造粒法を用いて、適度な大きさの顆粒(かりゅう)とします(50μ〜100μm)。
⑥成型 目的の最終形状に加圧成型します
⑦焼成 成型された部品を本焼成します(1300〜1500℃)。
⑧電極生成 得られたセラミック部品に金、銀、パラジュウムなどとガラス微粉末(ガラス・フリット)で電極を形成し、リード線を取り付けます。
⑨外装塗布 エポキシ樹脂などに素子をディップさせて塗膜を形成します。

 なお、表面塗装はエポキシ樹脂であってもディップ工法なので絶縁物として認められない場合があります。表面絶縁耐圧がカタログにあっても機能絶縁の場合がありますので絶縁保証がほしい場合はメーカーに確認してください。

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