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リニアレギュレータの賢い使い方スパイクノイズを抑え込む(4/4 ページ)

» 2006年03月01日 00時00分 公開
[Jim Williams(米Linear Technology社),EDN]
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インダクタを高周波フィルタとして使用する

図A インダクタの寄生抵抗によって、電圧降下や効率の低下、並列キャパシタンスなどが発生し、不要な高周波フィードスルーが生成される。浮遊磁場は厄介な誘導電流を引き起こす。 図A インダクタの寄生抵抗によって、電圧降下や効率の低下、並列キャパシタンスなどが発生し、不要な高周波フィードスルーが生成される。浮遊磁場は厄介な誘導電流を引き起こす。 
図B 回路基板上の螺旋状と曲線状の配線パターンが高周波数フィルタとして機能する場合もあるが、フェライトビーズに比べて効果は低い。 図B 回路基板上の螺旋状と曲線状の配線パターンが高周波数フィルタとして機能する場合もあるが、フェライトビーズに比べて効果は低い。 

 高周波フィルタとしてビーズの代わりにインダクタを使用することもできることがある。通常は、2μH〜10μHが適正値である。インダクタを使用する利点は、入手が容易なことと、100kHz未満の周波数ではより高い効果を得られることである。図Aはインダクタで発生しうる問題点を示している。銅損によるレギュレータパス内の直流抵抗の増加、並列寄生キャパシタンスの発生、スイッチングレギュレータの浮遊容量による電位の変化などが考えられる。銅損は直流で発生し、効率を低下させ、並列寄生キャパシタンスによって不要な高周波が発生する。回路基板上のインダクタの位置によっては、浮遊磁場が巻線にぶつかり、巻線が事実上の二次トランスになる可能性がある。結果、スパイクとリップルによって伝導素子が生成されることにより、パフォーマンスが低下する。

 図Bは、回路基板の配線で構成されるインダクタンスベースのフィルタを示している。このような螺旋状または曲線状の配線は、高周波での誘導性が高いように見える。状況によっては非常に効果的であるが、単位あたりの損失はフェライトビーズよりも少ない。


ミリボルト単位の広帯域信号の完全性を試験する

 広帯域をミリボルト単位で測定する場合には、実施前に注意すべきことがある。まず、ノイズを低く抑えられる回路基板のレイアウトを設計しなくてはならない。電流の流れと、電力分配、グラウンドライン、グラウンドプレーンとの関わりを考慮する必要がある。コンポーネントの選択と配置による作用も考える。負荷復帰電流の放熱管理と処理方法を計画しておかねばならない。有意な測定を行うには、回路が安定していて、ボードレイアウトが適切で、回路に適切な部品が使用されている必要がある。

図A 連続的な同軸信号パスで測定されたスパイク。メインのイベント後、信号の歪みやリンギングは抑えられていく。 図A 連続的な同軸信号パスで測定されたスパイク。メインのイベント後、信号の歪みやリンギングは抑えられていく。 
図B 3インチの非同軸グラウンド線を使用。顕著な歪みやリンギングが見られる。 図B 3インチの非同軸グラウンド線を使用。顕著な歪みやリンギングが見られる。 

 たとえ慎重に準備されたブレッドボードでも、信号接続によって歪みが生じれば、完全な測定を行うことができない。正確なデータを得るには、回路への接続が重要である。低レベルの広帯域測定では、試験機器への信号のルーティングに注意を払う必要がある。考えられる問題としては、ブレッドボードに接続される電源を含めた試験機器間のグラウンドループや、長すぎる配線が原因でノイズを拾うことなどが挙げられる。

 回路基板への接続数を抑え、配線を短くすることが重要である。同軸環境における広帯域信号とブレッドボード間のルーティングでは、同軸シールドをどこでグラウンドシステムに固定するかに注意する。正しい測定を行うには、厳密に管理された同軸環境が不可欠である。

 図Aは、同軸信号パス内で測定された典型的なスイッチングレギュレータのスパイクを示している。スパイクの主要部分には一定の範囲が見られ、その後の乱れは抑えられている。図Bは同じイベントで、3インチのグラウンド線を使用して同軸シールドを回路基板のグラウンドプレーンに接続したときの様子を示している。顕著な信号の歪みとリンギングが発生している。これらの写真は0.01V単位の感度で撮影された。より厳密な測定を行うには、より細やかな準備が必要である。

図C 広帯域対応の低ノイズプリアンプを使用して、スパイクをミリボルト単位で観察する。測定を正しく行うには同軸接続を維持する必要がある。 図C 広帯域対応の低ノイズプリアンプを使用して、スパイクをミリボルト単位で観察する。測定を正しく行うには同軸接続を維持する必要がある。 
図D 低ノイズプリアンプと、厳密に制御された同軸信号パスを使用すると、図12の900mVp-pの結果が得られる。トレースのベースラインが太くなっている部分は、プリアンプのノイズフロアを表している。 図D 低ノイズプリアンプと、厳密に制御された同軸信号パスを使用すると、図12の900mVp-pの結果が得られる。トレースのベースラインが太くなっている部分は、プリアンプのノイズフロアを表している。 
図E 測定場所で2インチの非同軸グラウンド接続を行うと同軸形態が崩れ、波形が完全に壊れる。 図E 測定場所で2インチの非同軸グラウンド接続を行うと同軸形態が崩れ、波形が完全に壊れる。 

 図Cの広帯域対応40dBプリアンプを使用した200μV単位の測定結果が本文の図12だ。交流カップリングコンデンサを含め、レギュレータからプリアンプ、オシロスコープまでの純粋な同軸パスに注目して欲しい。同軸カップリングコンデンサのシールドは、レギュレータボードのグラウンドプレーンに直接接続され、コンデンサの中央導線がレギュレータ出力につながっている。非同軸測定接続はない。図12を繰り返した図Dには、990mVの出力スパイクが映し出されている。図Eでは、2インチのグラウンド線が測定側にあり、同軸形態を壊しているため波形が乱れている。測定の完全性を検証する最終試験として、信号パスの入力、たとえば同軸カップリングコンデンサの中央導線を図13が示すように測定位置の近くに設置して、図Dの測定を繰り返すのが有効である。理論上、信号は出現しないはずである。実際には、主にコモンモードの作用により、少量の残留成分があるが、これは許容範囲内である。


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