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高速オシロスコープを使いこなす(3/4 ページ)

» 2006年05月01日 00時00分 公開
[Dan Strassberg,EDN]

点集合のパーシスタンスモード

 パーシスタンス(重ね書き)モードは、多くの人が考えるようには動作しない(図3)。誤解を防ぐために、ここに一般的にすべてのメーカーのオシロにあてはまる簡単な説明を示す。パーシスタンスモードでは、リアルタイム・サンプリングレートの限界のために、オシロがリアルタイムで取得できない高周波波形を、たいていの場合正しく取得することができることに注意してほしい。そのような波形を取得するには、ランダム等価時間サンプリングが必要だと誤って信じているユーザーは多い。このモードには、あまり知られていない落とし穴があるため、使用上の注意が必要だ*1)


図3 アナログパーシスタンスモードでは、出現回数により画面の各画素の輝度や色彩を変えて、アナログオシロスコープの蛍光体応答のシミュレーションを表示する(LeCroy社提供)。 図3 アナログパーシスタンスモードでは、出現回数により画面の各画素の輝度や色彩を変えて、アナログオシロスコープの蛍光体応答のシミュレーションを表示する(LeCroy社提供)。 

 パーシスタンスモードを使用するには、取得したい波形に関する時間においてトリガーが安定していなければならない。波形の特性でトリガーを用いるか、他のトリガーソースを用いることができる。トリガーの度に、オシロは波形のサンプルを取得し、トリガー時間ごとに画面上に点を配置していく。しかし、点と点の間に線は描画しない。初期設定で、sine x/x補間点を追加するオシロもあるが、何も追加しないオシロもある。オシロは単に点を画面に配置していくだけである。正確には、表示プロセッサIC内の配列に点を配置していき、表示プロセッサICがそれらの点を画面に描画する。しかし、オシロは点と点の間に線を描画せず、入力信号の形を再現しようとはしない。そのようなことをすると、ナイキスト基準に反することになりかねないからである。

 その後、オシロは通常、数100回、または数1000回も繰返しトリガーをかける。各トリガーにおいて、サンプルを取得し、画面に点を配置する。しかし、「軌跡を描画する」ことは決してしない。オシロは、トリガー時間ごとに取得したサンプルを単に表示していく。トリガーと入力波形が安定していれば、点の集合は、信号を表す線を描くように埋まっていき、波形に似た形になっていく。垂直ノイズやタイミングジッタにより、トリガー時間または波形が安定していない場合は、パーシスタンス表示は、雲状の点集合となる。信号波形が時々大きく断続的に変形する場合は、大部分の点が通常の信号波形に沿っている中で、その波形からはずれた個所にいくつかの点が存在する状態が表示される。

更新速度が遅い

 オシロメーカーは、オシロの高速な画面更新速度と、制御設定の変更に対する応答性を重要視している。このような特性を、「アナログオシロのような使用感」と表現するメーカーもある。オシロを使用するにあたっては、この表現は正しく、かつ重要なことだが、少し考えてみると、誇張ではないのかと疑わずにはいられない。ほとんどすべてのデジタルオシロが、画面を1秒間に30または60回しか再描画しない。しかし、1秒間に表示される波形は数1000にも及ぶのである。再描画間の画面ビットマップにおける複数の変化を集合化し、次の再描画でその集合を表示することにより、この応答性を実現している。

 オシロ処理のこの部分は、オシロが、例えば1024画素の画面に、ユーザーに無限にスクロールさせることなく、100万点もの記録データを水平に表示する方法と、その考え方が似ている。相違点は、拡大表示できるという点である。100万個のサンプルを、各画素が1000サンプルを表す、1000画素の列に圧縮する最も簡単な方法は、各1000サンプルのグループにおいて、最小および最大の信号値を検出し、その列における最小値に対応する画素から最大値に対応する画素までの間のすべての画素を明るく表示することである。このアプローチをとると、軌跡は「太く」なり、その幅の中の照度は均一である。より詳細に信号を表示するには、最後の画面更新から、信号レベルが何回、画面の画素マップ内の各点に対応したかをオシロが算出し、各画素の輝度または色をその点に「合致」した回数に合わせて変える方法がある。

 大画面を活用するメーカーも出現してきている。居間を占領する高品位テレビの画面サイズではなく、ラップトップ型パソコンのようなアスペクト比の大きい画面でもないが、従来のオシロよりはかなり広い表示面積をもつ。画面が大きければ、波形の詳細を表示するにも便利である。床面積の小さいオシロに関しては、LeCroy社が数年前に発表して、この流行の先駆けとなった。WaveSurferファミリの製品は、奥行き6インチの筐体に、画面サイズ10.4インチ型、SVGA対応(800×600画素)の画面をもつが、その床面積は、画面サイズがわずか6.4インチ型のTektronix社のTDS3000Bよりも小さかった。WaveSurferの画面サイズは、Tektronix社のオシロの2.5倍以上もある。現在LeCroy社は、その安定した大画面で床面積の小さいオシロに、より高性能な装置を追加している。WaveRunner Xiシリーズの3つの製品価格は7500米ドルからであるが、WaveSurfersと同じサイズで、10.4インチ型SVGA画面をもつ。

 Tektronix社は、新しいDPO7000シリーズでこれに対抗し、画面サイズと解像度においてLeCroy社をリードしている。DPO7000の画面サイズは12.1インチ型である。その面積は6.4インチ型画面の約3.6倍で、XGA対応(1024×768画素)の解像度を提供する。奥行き約12インチの筐体は、LeCroy社の小型筐体オシロのほぼ2倍だが、それでもほとんどのオシロに比べて薄型である。DPO7000シリーズの最上級機は、400Mものサンプルを格納できるほどの大容量メモリーを備え、そのすべてを1つのチャンネルに割当て可能である。LeCroy社が長期にわたって優位に立っていたメモリー容量の大きさに関しても、LeCroy社を超えることになった。

 大画面および小さな床面積のオシロは歓迎するが、例えば製造ラインでのテスト向けに、オシロをより大規模なシステムに組み込む技術者にとって、この新しい筐体の形状は望ましくはない。彼らにとっては、ラックの占有面積を最小とするシステムコンポーネントを選択することが最も重要である。新しい筐体は従来のオシロよりも背が高い。この高さの問題を解決する鍵は、システムコンポーネント機器の新しい標準であるLXI(LAN extensions for instrumentation)にあるようだ。通常は画面が上向きに収容されていて、オペレータがスライド式ラックの前面に引き出し、画面を垂直に起こして使用するような、目立たないLXIオシロを想像することができるだろう。

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