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ZigBeeネットワークでワイヤレスセンサーを実現(1/3 ページ)

ZigBeeのような適切なプロトコルを使えば、情報のやりとりが少ないセンサーの消費電力を節約できる。アルカリ電池1個で10年間の電力を賄える場合もある。

» 2006年07月01日 00時00分 公開
[Dan Strassberg,EDN]

 ZigBee WPAN(wireless personal area network)技術を推進する業界団体「ZigBeeアライアンス」のメンバーは、似たような技術のBluetoothの支持者が犯した過ちから貴重な教訓を得たという。Bluetoothは今や確立された技術として、少なくとも携帯電話機や携帯機器などの無線ヘッドセット市場では広く採用されるようになった。しかし、初期のころに支持者たちが犯した失敗によってこの規格は危うく消え去るところだった。しばらくフォーマット策定の段階にあり、普及するまでに時間がかかった。ここでの教訓は、このワイヤレス時代に、すべての人々のニーズに応えようとすればほぼ間違いなく失敗の道をたどるということだ。

 ZigBeeの発案者たちはこの技術にIEEE 802.15.4ワイヤレス通信規格を利用した。ZigBeeという名前は、ミツバチが蜜のある場所とそこまでの距離を仲間に伝えるためにジグザグに飛行することから付けられた。蜜のある場所を知る技術である。しかもすべてのセンサーを対象としているわけではない。せいぜい1秒当たり1回しかデータを送信する必要がない低速デバイスでよい。このようにセンサーを限定している理由はいくつかある。センサーがワイヤレスなら、電源配線も信号配線もワイヤレスにしなければ意味がない。そのため少なくとも最初は、ZigBee対応センサーのほとんどはバッテリ駆動式となるだろう。大半のセンサーは小さいため、バッテリ駆動式センサーもあまり大きくできない。このためバッテリも小さくしなければならないが、小さいバッテリではわずかなエネルギーしか蓄えられない。

 バッテリ寿命をできるだけ長くもたせるためには、センサーと通信回路で消費される電力を節約する必要がある。最も簡単な方法はデューティ比――この場合はデバイスが送信している時間の割合――を最小限に抑えることである。通信していないときはデバイスは低電力スリープモードに入る。2.4GHz〜2.48GHzで、ほとんどのセンサーは802.15.4のデータレート250kビット/秒で数msだけメッセージを発信する。902MHz〜928MHz、868MHz〜870MHzでのデータレートはそれぞれ40kビット/秒と20kビット/秒である。スリープモードからデータ伝送モードへの遷移には約15msかかるため、平均して1秒当たり1メッセージを送信するセンサーの2.4GHz帯域におけるデューティ比は2%未満であり、868〜915MHz帯域ではそれを少し上回る程度だ。一般にメッセージを送る頻度はそれほど多くない。このようなセンサーのデューティ比は非常に低いため、バッテリ寿命は事実上バッテリの品質保持期間と考えられる。アルカリ電池では最長10年間だ。

ワイヤレスが不可欠な理由

図1 規格そのものにふさわしく、すぐ目に付くZigBeeロゴはシンプルで分かりやすいメッセージをユーザーに伝えている。このバージョンは、2.4GHz帯で動作するデジタル家電製品のパッケージに貼付される。1GHz未満で動作する製品向けのバージョンもある(ZigBeeアライアンス提供)。 図1 規格そのものにふさわしく、すぐ目に付くZigBeeロゴはシンプルで分かりやすいメッセージをユーザーに伝えている。このバージョンは、2.4GHz帯で動作するデジタル家電製品のパッケージに貼付される。1GHz未満で動作する製品向けのバージョンもある(ZigBeeアライアンス提供)。 

 ワイヤレスセンサーネットワークの規格策定の根拠となっているものは、「最近は何でもワイヤレスになっているのだからセンサーも」というようなたぐいではない。もっと現実的な理由による。いろいろな応用システムに無数のセンサーが使われているからだ。センサーの取り付けと配線にかかるコストはセンサーそのもののコストをはるかに上回る。もちろん、センサーを設置したい場所にセンサーを飛ばして設置するいう冗談ともつかない問題をZigBeeで解決できるわけではない。センサーの取り付けにかかるコストの一部はワイヤレスセンサーの場合と同じである。

 ZigBeeは、ビルオートメーション、産業、医療、住宅向けの幅広い管理・監視などの応用を狙っている。IEEE 802.15.4で規定されている相互運用性やRF特性を要件とする応用ではZigBeeを採用することで得られる利点は多い。用途の例としては、照明制御、電気・ガス・水道メーターの遠隔測定、ワイヤレス煙・一酸化炭素検知器、HVAC(暖房、換気、空調)・環境管理、ホームセキュリティ、侵入検知器、ブラインド・カーテンのシェード制御、医療用センシング・モニタリング、ホームコントロール機能内蔵セットトップボックスのリモート制御、産業・ビルオートメーションなどがある。ZigBeeに対応した世界初のホームコントロール、ホームセキュリティ製品は2006年中ごろに発売される。これらの製品のパッケージにはZigBeeロゴが貼付される(図1)。

図2 ZigBeeはレイヤー構造のプロトコルである。IEEE802.15.4では一番下(緑)の層が規定されている。ZigBeeの仕様では中間(オレンジ)層が規定されている。ユーザーは一番上のアプリケーション層(黄色)をコントロールする。オレンジ色は、ZigBeeプラットフォームICに組み込まれるスタックを形成する層を表している(ZigBeeアライアンス提供)。 図2 ZigBeeはレイヤー構造のプロトコルである。IEEE802.15.4では一番下(緑)の層が規定されている。ZigBeeの仕様では中間(オレンジ)層が規定されている。ユーザーは一番上のアプリケーション層(黄色)をコントロールする。オレンジ色は、ZigBeeプラットフォームICに組み込まれるスタックを形成する層を表している(ZigBeeアライアンス提供)。 

 ZigBeeの仕様では、ネットワーク、セキュリティ、アプリケーションフレームワーク、アプリケーションプロファイルの層を802.15.4のPHY(物理)層とMAC(メディアアクセス制御)層の上に位置づけている(図2)。802.15.4規格の2.4GHz帯は免許の要らない世界中で使える。802.15.4規格は、ハーフサインパルス整形を用いたO-QPSK(offset quadrature phase shift keying)変調方式を規定しており、1シンボルが2ビットを伝送する。実質的にはMSK(minimum shift keying)方式に近い。チャンネル間隔が5MHzであり、最大16本のチャンネルを使用できる。デバイスによってチャンネル間の周波数ホッピングが行われなくても、通常はチャンネルを選択することで受信状態が最適化される。ネットワーク接続されたデバイス間の干渉を最小限に抑え、かつデータセキュリティを強化するため他の手法を組み合わせる。例えば2.4GHz帯には2Mチップ/秒のDSSS(direct sequence spread spectrum:スペクトラム拡散方式の一つ)を使い、1GHz未満の帯域ではルートコサインパルス波形整形を使用するBPSK(binary phase-shift keying)を使う。915MHz帯では2MHzのチャンネル間隔を使う(868MHz帯域には1チャンネル分の空きしかない)。BPSKでは1シンボルにつき1ビットしか伝送されない。868MHz帯(主にヨーロッパ)と915MHz帯(南北アメリカ大陸とオーストラリア)のデータレートはそれぞれ20kビット/秒と40kビット/秒で、DSSSのチップレートは300kチップ/秒と600kチップ/秒である。

 3つの帯域すべてにおいて、802.15.4準拠のMAC層にはCSMA/CA(carrier sense multiple access with collision avoidance)方式が採用されている。メカニズムは基本的にイーサーネットで使用されている方式と同じである。データを伝送しようとするデバイスはスリープモードから起動し、まずチャンネル上で通信が行われていないかどうかを確認する。通信を検出すると再びスリープモードに入り、ランダムな長さの待ち時間が経過した後にもう一度起動して通信の有無を確認する。そしてチャンネルが空いていればメッセージを送信する。もちろん、データを送信しようと複数のデバイスが同時に問い合わせすることもある。いくつかのデバイスが誤ってチャンネルが空いていると判断し、同時に送信を開始する可能性もある。

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