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積層CSP設計のコツ(1/3 ページ)

積層CSPでは、製造時にさまざまな問題が起こりうる。それらを事前に回避し、製品性能の向上や、コストの低減を実現するにはどのようにパッケージ設計をすればよいのか。本稿ではその留意点を示す。

» 2006年09月01日 00時00分 公開
[Mark Gerber(米Texas Instruments社)/Moody Dreiza(米Amkor Technology社),EDN]

 積層CSP(stacked die chip scale package)では、複数のチップの積層方法が何通りか考えられる。携帯機器向けの製品でよくあるように、200以上のI/O端子を持つチップをいくつか積層してワイヤーボンディングするといったケースでは、積層CSPの設計ガイドラインが必要となる。

 ASICとメモリーなどを組み合わせたチップを積層する場合、ワイヤーの高密度化にどのように対処するかが最も大きな課題となる。積層CSP設計においては、隣接するワイヤー間の距離をできる限り大きくして、ワイヤー流れ、つまり水平面におけるワイヤーの配置不良を最小限に抑えることが必要となる。ワイヤー流れの問題は、ワイヤーボンディング工程におけるさまざまな段階で生じる可能性がある。ワイヤー流れは、ワイヤーの接触の原因となるだけでなく、隣接するワイヤーのインダクタンスに影響を及ぼし、ノイズ発生の原因ともなる。

 積層CSPの組み立て時のワイヤーボンディング制御およびワイヤーループ制御に最もよく使われる2つの方法は、従来のボールボンディングと、SSB(standoff stitch bonding)である。従来のボールボンディングでは、最初のボンドはチップのパッドに、その次は基板のフィンガーに行われる。SSBでは、最初のボンドは基板フィンガーに、2度目はチップパッドに行われる。SSBを用いた場合、ワイヤーループが高くなる。しかし、熱の影響を受けやすい部分でワイヤー流れの問題が生じやすいため、ワイヤーが接触するなどの問題が発生する危険性が高い。また、SSBではワイヤーが長いほどスティッチの配置不良やワイヤーのたわみなどの問題が生じやすくなる。

 一般的に、ワイヤーが長いほどワイヤー流れの危険性は高い。チップパッドと基板フィンガーの間の距離を一定とすると、SSBのほうがボールボンディングよりもワイヤーが長くなる。積層CSP設計では、可能ならばSSBよりも従来のボールボンディングを使用するほうがよい。従来のボールボンディングはスループットがSSBの約1.5倍高いため、製造コストを抑えられるという利点もある。全体として積層CSP設計では、パッドからフィンガーまでの距離が最小になるように、基板のフィンガーの位置を最適化することにより、ワイヤーの長さをできる限り短くする必要がある。

 積層CSPでは、ワイヤーが交差すると、ワイヤーの接触に起因する歩留り低下の危険性が生じる。そのため、ワイヤーの交差は最小限に抑える必要がある。パッケージ設計においてパッド/フィンガーの配置を適切に設計するということは、すなわちワイヤーの交差を回避するということになる。しかし、実際にはワイヤーの交差を回避できないケースもある。その場合は、ワイヤーが交差する個所を安全な領域内に配置するよう設計する。具体的には、交差するワイヤー間の距離を大きくし、適切な高さのワイヤーループを維持できるようにフィンガーを適切に配置するのである。

図1 ワイヤーの交差への対策 図1 ワイヤーの交差への対策 下層ワイヤーのフィンガー位置を、上層ワイヤーの中央近辺に移動させるという変更により、ワイヤーの交差を最小限にすることができる。

 図1(a)では、上層(紫)のワイヤーと下層(緑)のワイヤーが何カ所も交差している。この状態では、ワイヤー流れによるワイヤーの接触が生じやすい。この設計を最適化するには、図1(b)のように、下層のワイヤーのフィンガーを上層のワイヤーの中央近辺に配置し直すとよい。これにより、交差の数を削減することができる。交差を回避できない部分についても、交差部分におけるワイヤー間の距離が大きくなり、接触の可能性を下げることができる。

 多くの場合、フィンガーを1列に並べるのではなく、複数列にずらして配置することで、ワイヤーの交差を減らすことができる。その際、下層のチップ用のフィンガーは内側の列に配置し、上層のチップ用のフィンガーは外側の列に配置する。両層のワイヤー間に十分な距離が保たれるように、両層のループ高を定めなければならない。

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