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» 2007年03月01日 00時00分 公開

ビデオインターフェース最前線DVI、HDMI、DisplayPort、UDI――各仕様の特徴と問題点を解き明かす(2/5 ページ)

[Brian Dipert,EDN]

DVI――パソコン用からスタートするも、普及は進まず

 ここからは、最近のAV機器で用いられているデジタルビデオインターフェースをいくつか取り上げ、その概要と問題点について説明していく。まず最初にDVIを取り上げる。

■DVIの生い立ち

 米Intel社は1998年秋の「Intel Developer Forum」でDDWG(digital display working group)の結成を発表した。その際に、パソコンの標準デジタルビデオインターフェースとして採用が決定されたのがDVIである。このDVIという規格は、米Silicon Image社がTMDS(transition minimized differential signaling)を用いて、「PanelLink」という名称で提供していたものであった。

 この当時、同様のデジタルビデオインターフェースの規格はDVI以外にもいくつか存在した。実は業界団体のVESA(video electronics standards association)は、P&D(plug and display)とDFP(digital flat panel)という2つのTMDSベース規格の標準化を推進していた。一方で、米Apple社はADC(Apple display connector)という規格を自社のパソコンに採用していた。これはTMDSをベースとし、コネクタとケーブルにUSBおよびディスプレイ用の電源を追加したものだった。さらに、米National Semiconductor社は、もう1つの有名な対抗規格であったOpenLDI(open LVDS display interface)の普及を推進していた。

 結論からいえば、Intel社の影響を受けたパソコン業界は、DVI採用の方向へと加速し、ほかの規格は主流から外れていった。OpenLDIを採用した代表例として、米Silicon Graphics社(SGI)の液晶パネル「1600SW」が挙げられる。同製品は、17インチのワイドスクリーン、1600×1024ピクセルの解像度、350:1のコントラスト比、0.23mm(110dpi)のドットピッチを備えていた。このように、1600SWは当時の最先端技術を駆使したものであった。しかし、OpenLDIをネイティブサポートしたグラフィックスカードを提供したのは、米3Dlabs社、ドイツのFormac Elektronik社と、今では存在しない米Number Nine Visual Technology社の3社だけであった。このような状況であったため、SGI社は、OpenLDI信号をより一般的なアナログRGB信号とDVI信号に変換する「MultiLinkアダプタ」を開発して対応せざるを得なくなった。

 P&Dは概念的にDVIに類似していたが、VESAはディスプレイへの映像信号のみでなく、マウス、キーボード、プリンタ、オーディオ機器など、USBやIEEE 1394(FireWire)準拠の周辺機器にも対応しようとしていた。一方DDWGは、P&Dの余分な信号線を削除し、余った資源を利用して2つ目のパラレルDVI接続(デュアルリンク)を実装可能なオプションを提供した。これより、高い解像度のディスプレイをサポートした。これが現在のDVIである。

■DVIの概要

 次に、DVIの概要を簡単に説明しておく。

 DVIでは、映像データがクロック信号とデータ信号に分離されて転送される。このクロック信号の最大周波数は165MHzである。一方のデータ信号では1クロック当たり10個のシリアルデータを転送する。このシリアルデータは、8B/10Bエンコーディングでパラレルデータに変換される。全体のデータはシングルリンク当たり、赤(R)、緑(G)、青(B)、クロックの4つの信号によって転送される。これらの信号は差動のTMDSを用いるため、4ペアで8本の配線を必要とする(これは、後述するHDMIも同様である)。

 以上のことから、この165MHzのクロック周波数でのシングルリンクのピーク帯域幅は3.96Gビット/秒という大きな値となる。しかし垂直/水平のブランキング時間を含むため、ピーク解像度は1920×1200ピクセル(24ビットカラー、60フレーム/秒)である。なお、デュアルリンクでは、最大7.92Gビット/秒の帯域幅と2560×1600ピクセルの解像度をサポートする。

 DVIは、映像以外の信号線としてDDC(display data channel)バスを備える。DDCは、例えばディスプレイ側が自身の表示能力の限界値を通信によって送信側に伝えるための手段である。なお、DVIはアナログRGBを伝送する信号線も備えている。

■DVIが抱えるさまざまな問題

 このように高性能なDVIだが、実はいくつかの問題も抱えていた。

いくつかのメーカーは、DVIトランシーバをグラフィックスチップなどの大きなチップに集積しようとした。しかし、彼らは165MHzという設計目標をすぐに実現することができなかった。

 また、一般のビデオ機器やディスプレイは、デュアルリンクのDVIをサポートしなかった。

 さらに問題だったのは、接続検証(互換性検証)が甘かったことである。Intel社はDVIのサポートを発表した当時、広く普及し事実上の標準規格であったPCIやPCMCIAなどを市場にすでに提供していた。Intel社が両規格で成功を収めた主な要因は、厳格な準拠検証と業界において定期的に「plugfest(プラグフェスタ)」と呼ばれる接続検証を実施していたことである。

 しかし、Intel社はDVIでは同様の互換性検証プロセスを確立しておらず、これが失敗の原因となった(Intel社が独自にDVIを開発したわけではなかったため、これを完全に管理できなかったことが検証を行わなかった理由の1つである)。それによりDVIの黎明期には、市場でディスプレイと映像送信機器の接続に関する問題が多発した。

 このように、設計しづらいことが、DVIの欠点として挙げられる。このことが一因となり、DVIは当初予想されていたほどには普及していない。

 そのほかに、業界内におけるビジネス上の問題点もある。Intel社からサポートを得る代償として、Silicon Image社はロイヤルティなしでDVIの基盤となる同社の特許技術を提供した。しかし、Silicon Image社はDVIの実装に関する特許権を保有し続けた。それによって、同社のDVIチップを購入した企業からだけでなく、DVIを利用した回路設計を行う競合企業からもかなりの収入を得ることとなった。

 また、Intel社はSilicon Image社に出資している。従って、Silicon Image社のDVI関連の収入の一部は結局、Intel社の収入増につながっている。このようなことがDVIに対する業界の反発をさらに増大させることになった。

 DVIが市場に投入されたときには、アナログRGBのみに対応したディスプレイを所有するユーザーが非常に多かった。グラフィックスカードにDVIコネクタを追加することは可能だが、少なくとも短期的にはアナログRGBコネクタを排除してしまうのは自殺行為であった。

 この事実を反映して、最も一般的なDVIコネクタは、アナログ/デジタルの両方のインターフェースに対応し、ドングルを介して従来の15端子アナログRGBコネクタへと変換できるものであった。

 Intel社がDVIの初期プロモーションに使っていた資料では、「パソコン業界は転換期に近づいており、ディスプレイ解像度が高くなってドットピッチもより精細になった。従って、もはやアナログインターフェースでは十分に高品質な映像を提供することはできない」と主張している。それから10年近くが経過した現在、この転換期にはまだまだ到達していない。

 Intel社の名誉のために言及しておくが、この遅れの原因の一部は同社とはまったく関係ない。米Microsoft社のWindowsが、フォントやアイコンなどのGUI部品に関して、解像度に依存しないレンダリング方法をまだ完全には実装していないことが問題なのである(先ごろ発売された「Windows Vista」ではこの点が大きく改良されているはずだ)。そのため、これらのGUI部品をピッチの細かいディスプレイに表示しても違いを認識することができなかった。

 チップメーカーは、アナログビデオインターフェースのトランスミッタとレシーバのS/N比(信号対雑音比)やスイッチング速度などをかなり改善している。このことも、デジタル規格であるDVIの普及を遅らせる要因となっている。

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