メディア

16ビットプロセッサは生き残れるか(3/4 ページ)

» 2007年05月01日 00時00分 公開
[Robert Cravotta,EDN]

16ビット vs. 8ビット/32ビット

 ここまでに述べてきたように、16ビットプロセッサがこれまで使われてきた領域で、8ビット/32ビットプロセッサが競争できるような機能を備えつつある。その一方で、16ビットプロセッサも変化してきている。例えば、米Freescale Semiconductor社の16ビットマイクロコントローラ「MC9S12XE」など、最近発表されたいくつかの16ビットプロセッサは、アドレス空間が64Kバイトという従来の制約を打ち破り、1Mバイト以上でページングなしのリニアアドレシング空間をサポートしている。米Texas Instruments社の「MSP430」ファミリが実現しているメモリー間アドレシングと16単一サイクル、16ビットレジスタは、以前の16ビットアーキテクチャに見られたアキュムレータの問題とレジスタ空間の制約がなくなったことを示す一例である。さらに多くの16ビットプロセッサと8ビットプロセッサにはデバッグ回路が組み込まれるようになり、開発者にとっての利便性が高まった。

 RTOSがサポートされていればプログラミングが容易になり、8ビットプロセッサから16ビットプロセッサへの移行も簡単に行える。16ビットプロセッサによるRTOSのサポートは、32ビットプロセッサに比べると遅れてはいるが、確実に進んできている。プロセッサベンダーによるカーネルのサポートに加え、米CMX Systems社のRTOS製品、米Mentor Graphics社の「Nucleus」、米Micrium社の「μC/OS-II」、およびフリーで使用できる「FreeRTOS」など、16ビットプロセッサをサポートするRTOSを入手することが可能だ。16ビットRTOSをより強力にサポートするために、富士通のユーザー/システムスタックポインタなどのような特別なオンチップレジスタがプロセッサに組み込まれている場合もある。

 メモリーの保護は多くの組み込み用RTOSにおいて重要な部分であるが、一般に16ビットプロセッサとMPU(memory-protection unit)搭載32ビットプロセッサとでは、システムを保護するためのアプローチが異なる。その一例が米Microchip Technology社のセキュリティ機能「CodeGuard」である。この機能により、機器メーカー各社はオンチップのメモリーをブートセグメント、セキュアセグメント、汎用セグメントの3つに分割して共有することができる。デザインハウスやアルゴリズムベンダーはこのセグメンテーションを利用することで、独自開発のソフトウエアをセキュアなメモリーセグメントに格納することで、ほかのセグメントからのアクセスを制限することができる。

 16ビットアーキテクチャにおけるシステム保護、あるいはフェールセーフ機能のほかの例としては、フラッシュメモリーへの不測の書き込みを回避したり、スタックオーバーフローを防止したりする機構や、ウォッチドッグタイマー専用のクロックソース、バックアップオシレータ、電圧低下/パワーオンリセットの監視機能などがある。

 また、MPUは32ビットプロセッサだけがサポートしているわけではない。Freescale社の16ビットマイクロコントローラ「MC9S12XE」ファミリにもMPUが搭載されている。

 Intel社が16ビット組み込みプロセッサ市場から撤退するにもかかわらず、10社以上の半導体メーカーは今なお16ビット製品に積極的に取り組む姿勢を見せている。これらメーカーの多くは、8ビット/16ビット/32ビットアーキテクチャのプロセッサ製品ラインを手掛けている。Freescale社の車載製品マーケティングマネジャであるWayne Chavez氏は、「16ビットプロセッサの需要はこれからもまだまだ伸びる。当社のプロセッサ戦略もそれに一役買うだろう」と述べている。8ビット/16ビット/32ビットのすべてのプロセッサを扱っている多くの半導体メーカーも同じような意見を持っている。一般にこれらのメーカーは、アーキテクチャごとのプログラミングモデルとソフトウエア開発ツールを提供し続け、設計者が最適な価格、性能、および機能を得られるよう支援することで大きな付加価値を生み出している。半導体メーカーにとっては、8ビット/16ビット/32ビットのいずれでもよいので、自社のプロセッサが採用されることが重要なのであり、スケーラブルな選択肢を提供することはその目標を達成するための戦略の1つである。

 もう1つ注目すべきことは、メインフレーム時代のコンセプトである「仮想化」が復活しつつあることだ。このことは、ソフトウエア開発モデルを単一プロセッサで実現するのか、複数コアで実現するのかという基本的なレベルで悩む必要がなくなることを意味する。また、ハードRTOSを汎用OSと同一プロセッサ上で動作させることも可能となる。しかし、「コストと効率性の面から、ほとんどの組み込みソフトウエア開発は依然としてハードウエアに依存している」と、ドイツInfineon Technologies社の産業その他の市場向けマイクロコントローラ部門でマーケティングマネジャを務めるRyan Scott氏はいう。8ビットプロセッサや16ビットプロセッサが適した組み込みシステムの設計では、性能が予測できること、消費電力が少ないこと、そして1米セントでもBOM(bill-of-materials)コストを下げることが重要である。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.