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2系統の信号で制御可能なHブリッジ回路Design Ideas

» 2007年06月01日 00時00分 公開
[Luca Bruno(ITIS Hensemberger校),EDN]

 小/中規模の永久磁石直流モーターの駆動には、多くの場合、4個のMOS FETまたはバイポーラトランジスタで構成したHブリッジ回路が使用される。例えば、図1に示すように、モーターはコレクタC1とC2、C3とC4に接続される。対角に位置するトランジスタのペアQ1/Q3およびQ2/Q4がオン/オフすることにより、モーターの駆動電流の向きが決まり、その向きに応じてモーターが正回転/逆回転する。この方法では、4個のトランジスタのそれぞれを個別の信号で制御する必要がある。この制御をマイクロコントローラで行う場合、モーターの電圧条件にもよるが、マイクロコントローラの電圧の制限に合致するよう、上方(ハイサイド)にある2個のトランジスタの制御信号を絶縁するかレベルシフトしなければならない。

図1 通常のHブリッジ回路 図1 通常のHブリッジ回路 この回路では対角に位置するペアのトランジスタによって直流モーターを駆動する。制御信号は4系統を要する。

 図2に示すのは、この問題を改善したHブリッジ回路である。この回路では、ローサイドの2個のトランジスタだけを制御すればよい。標準的なバイポーラトランジスタを用いて構成しており、Q1とQ4のベースをそれぞれQ3とQ2のコレクタに抵抗R3とR4を介して接続している。この構成により、入力VINAとVINBからの信号によって各トランジスタのペアがオン/オフに制御される。各素子の動作/役割は次のようになる。

図2 2系統の信号で制御可能なHブリッジ回路 図2 2系統の信号で制御可能なHブリッジ回路 この回路では、NPN/PNPのトランジスタをペアで使用する。制御信号はローサイドに対する2系統だけで済む。

 まず、Q2がオンすると、ダイオードD6と抵抗R4を介してQ4のベース電位がローレベルになる。Q4が飽和状態になると、Q2からの電流がモーターを駆動してQ4に至る。同様に、Q3がオンになるとQ1が飽和状態になり、モーターが逆方向に回転する。ダイオードD5はQ4がオンのときにQ1を確実にオフに保持するように働き、ダイオードD6はQ1がオンのときにQ4を確実にオフに保持するように働く。抵抗R1、R2、R7、R8はそれぞれに対応するトランジスタのスイッチング速度を速めるためのものだ。抵抗R5、R6はマイクロコントローラの出力がハイ(5V)のときに、マイクロコントローラから供給されるベース電流をほぼ15mA〜20mAに制限する。

 Q1とQ4の飽和時のベース電流は、抵抗R3とR4によって決まる。これら抵抗の値は、モーターの電源およびQ1とQ4の直流電流ゲインに対して次式で表される関係となる。

 最良の動作を得るには、バイポーラトランジスタとして、コレクタ−エミッタ間の飽和電圧VCE(SAT)が低く、直流電流ゲインhFEが高いものを選ぶ。現在入手可能な中電力トランジスタの多くはこの条件に合致している。また、コレクタでの消費電力およびベースの駆動電力ともに少なく、MOS FETに劣らない性能を備える。例えば、米ON Semiconductor社製のPNPトランジスタ「NSS40200LT1G」、NPNトランジスタ「NST489AMT1」のようなディスクリート部品が使用できる。

 よりコンパクトな構成にするには、英Zetex Semiconductor社製の「ZHB6790」のような集積型のHブリッジを使用するとよい。この製品は、電源電圧が40Vまで、コレクタ電流がパルスで連続2A、ピークで6Aまでの条件で使用できる。最小電流ゲインは、コレクタ電流が100mAの場合には500だが、2Aになると150となる。トランジスタQ2とQ3の最大許容コレクタ電流は2Aであり、このときの飽和電圧は0.35V以下、必要なベース電流は13mA〜20mAである。多くのマイクロコントローラは25mA程度のソース/シンク電流能力を備えているため、同製品を直接制御することが可能だ。また、制御がモーターの駆動電圧によって制限されることもない。制御電流をより低減したい場合、あるいはCMOSやTTLを用いて制御したい場合には、Q2とQ3の入力を小信号用トランジスタによってバッファすればよい。

 さらに、Q2とQ3のエミッタとグラウンドの間に値の小さい抵抗を挿入する使い方もある。このようにすれば、モーターの駆動電流に比例するアナログ電圧を計測し、その結果をマイクロコントローラに取り込むことで、モーターの失速や過負荷の状況を検知することも可能になる。

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