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» 2007年06月01日 00時00分 公開

“究極の標準”を求めて:進化を続ける組み込みシステムボード規格 (1/4)

組み込みシステムへの要求がますます高まっていることを受け、各種標準化団体がコスト、サイズ、信頼性、および性能の面で優位な“究極”のシステムボード規格を提供しようとしている。それら規格のうち、CompactPCI/ CompactPCI Express、AdvancedTCA/AdvancedMC、MicroTCAの概要を解説する。

[Warren Webb,EDN]

 一般に、医療用の測定機器、軍事システム、通信機器、プロセス制御機器などの高性能な組み込み機器向けの製品は、小/中規模の生産台数であることが多い。そうした製品の設計者は、コストの削減とスケジュールの短縮を求められている。そのため、設計者は、独自設計を避けて標準規格を採用せざるを得なくなった。このような状況における課題は、求められる性能、フォームファクタ、コストを実現し、データレートや処理要件に対する将来的な改善要求に対応可能な十分な拡張性を持つ規格を選択することである。

 システムボード規格として有名なものには、VMEbus、PCI、CompactPCI、PC/104、AdvancedTCA(advanced telecom computing architecture)などがある。各規格は、異なるユーザーをターゲットとし、異なる業界団体によってサポートされている。各業界団体は、性能向上の要求に対応して、その規格に必要となる変更や拡張を行っている。

標準規格のメリット

 組み込みシステムの設計者は、標準規格を利用することで以下のようなメリットが得られることを期待している。

 まず、新しいプロジェクトにおける要件のうちの少なくともいくつかに対しては、豊富に用意されている既製のシステムコンポーネントで対応できること。標準規格を採用すれば、複数のベンダーからコンポーネントを購入しても、ハードウエアとソフトウエアの相互運用性を確保することが可能である。

 次に、既製品を用いることによって開発の手間を省くこと。規格に準拠したシステムエンクロージャ、プロセッサカード、周辺機器、ユーザーインターフェースを使用することにより、一般的な組み込みシステムプロジェクトでは、ハードウエア設計や特定用途向けソフトウエアの開発をほとんど、あるいはまったく行う必要がなくなるのである。

 さらに、評価の手間が省けるというメリットもある。標準規格を採用すれば、互換性のあるOSや、ベンダーが提供するドライバ、サンプルソースコードなどが入手できることになり、ソフトウエア開発も容易になる。さらに、システムボードの標準化により、冷却性能や機械的な寸法の位置合わせを最良にするために、設計上の試行錯誤を繰り返す必要もなくなるだろう。

標準規格のデメリット

 一方で、業界団体の定める標準規格にはデメリットもある。そうしたシステムボード規格は、組み込みシステム業界の大部分をターゲットにしようとしているので、仕様の定義や仕様の承認処理に、固有の問題が生じる。一般的に標準化団体は、規格のバージョンアップを最終決定する前に会員の同意を得なければならない。そのため、技術の進歩への対応が遅い。とはいえ、初期段階で変化に対応できるようにしようとすると、複数のオプションが生じて業界に混乱を来し、相互運用可能な製品の数が減少してしまうだろう。

 例えば、AdvancedTCA規格には、シリアルデータ交換に関してイーサーネットやFibre Channel、InfiniBand、StarFabric、PCIe(PCI Express)、RapidIOなど複数のオプションがある。複数のオプションに対応可能な独自の設計を行ったボードベンダーもあったが、業界が1つか 2つのスイッチドファブリック技術に収束しなかったことが欠点になっている。

 さらに、標準化団体は、システムボード規格を拡張したり、性能レベルをアップグレードしたりする場合には、従来の規格との互換性を維持するという問題にも対処しなければならない。設計者は、互換性のあるボードが多く存在することを望むが、規格を大きくアップグレードすると、新しいハードウエアでは動作しない製品が増える可能性がある。一般に、多くの規格では、重複しないカードエッジコネクタや特別なバックプレーンを用いて、新旧バージョンのそれぞれに対応したスロットをいくつか提供することにより、同一システムで新旧両方の技術を利用できるようにしている。例えば、VMEbus規格は組み込みシステムアーキテクチャの中で最も古いものだが、初期の製品の多くは今でも最新製品と互換性がある。

 さらに標準規格は、高性能組み込み製品に対する主要な要件である長期的な可用性を実現しなければならない。デスクトップ型パソコン用の部品の平均寿命は約18カ月だが、一般的にユーザーは組み込み製品に対し5年以上は使用可能であることを期待している。

 このように、標準規格では長期的な可用性と性能の更新という相反した要求に対応しなければならい。従って、設計者は採用を検討している標準規格について深く理解しておかなければならないだろう。

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