メディア

WiMAXは4G携帯の本命か?間近に迫るモバイルブロードバンド時代(2/5 ページ)

» 2007年07月01日 00時00分 公開
[Maury Wright,EDN]

不要となる契約金

 米国において、WiMAXを4Gの技術として位置付けようとする最大の動機は、それによって形成可能なビジネスモデルが魅力的に映るからだろう。Intel社、カナダのWavesat社、富士通など、ベースバンドチップまたはSoC(system on chip)を供給するWiMAX対応半導体製品の主要サプライヤや、無線チップを手掛ける米Analog Devices社、カナダのSiGe Semiconductor社は、最初からWiMAXをオープン規格として扱ってきた。これらすべての企業の幹部らが、WiMAX対応の機器は特定のサービスプロバイダに限定されることなく地域の小売業者から購入することができるとしている。Sprint Nextel社も「携帯電話による通信事業では、一般的な契約金を事業者に支払ってサービス契約を結ぶが、WiMAXではそうした手順が不要になる」と強調している。同社のGude氏は、「WiMAX対応の機器に制約を加えるようなことはしたくない」と述べている。その上で「契約金を支払う体系では、結局、技術に関する全体的なコストが増加してしまう」(同氏)と主張する。

 Intel社のNardone氏は、「契約金を支払う体系がなくなれば、安い価格でデータサービスが行える」という。さらに同氏は、WiMAXユーザーは契約金を支払わなくてよいだけでなく、サービス契約という行為自体を行う必要もないかもしれないと主張する。おそらくユーザーは、ある期間の利用、または1回の利用という単位でサービス使用料を支払うのである。Gude氏もNardone氏も、WiMAXにおいては機器とサービス契約が1対1に対応した関係は存在しないと口をそろえる。

 Sprint Nextel社、Intel社、Samsung社、Motorola社にフィンランドのNokia社などを加えた提携企業は、WiMAXに関して強気な行動に出ている。サービスプロバイダが、このような新技術の採用を発表した次の年にサービスを開始し、2年後には広範囲にサービスを展開するということはこれまでに前例がない。Intel社は、WiMAXに多大な投資をした強力なパートナー企業らの価値を確かに認めている。しかしそれでも、それぞれの企業の意図をすべて盛り込んで、どのようにWiMAXが展開されていくのだろうかと、首をかしげずにはいられない。

 Sprint Nextel社は、Sprint社とNextel社が合併してできた会社だ。合併の主な理由として、WiMAXの潜在的な可能性に対する何らかの戦略的な展望があったのかどうかは分からない。Sprint Nextel社は、ロイヤルティの観点からほかのブロードバンドワイヤレス技術よりも魅力的であったWiMAXを選択しただけなのかもしれない。Sprint Nextel社が推進しなければ、WiMAXは米国では消滅していただろうと予測する者も少なくない。Sprint Nextel社は、FCC(Federal Communications Commission:米国連邦通信委員会)から、合併の条件として2009年までに同社が保有する2.5GHz帯のライセンスを用いたデータサービスを提供することを求められている。そのため、同社は何らかのワイヤレスデータサービスを開始する必要があった。

 Sprint Nextel社は、2005年半ばに米QUALCOMM社が買収した米Flarion Technologies社がOFDMベースの技術を試験済みであることを知っていた。幹部らが進んで正式に発表することはあり得ないものの、間違いなくSprint Nextel社は、QUALCOMM社の知的財産による束縛から逃れることを望んでいる。Sprint Nextel社がFCCからの要求を満たし、2.5GHz帯のライセンスを維持するには、WiMAXを採用することのほかに選択肢はなかったのかもしれない。Sprint Nextel社はWiMAXを推進することにより、3G市場においてQUALCOMM社の技術を使う場合でも交渉を有利に進められるとも考えられる。一方でQUALCOMM社がWiMAXに関する何らかの知的財産権を主張することになる可能性もある。WiMAX Forumはそのウェブサイトで、知的財産に関するデータを示しているが、大規模にサービスが始まれば、どの企業がどの企業の権利を侵害しているのかといった問題を解決するのは非常に困難になるだろう。

 Sprint Nextel社は、どこからWiMAXの事業を展開していこうとしているのだろうか。Sprint Nextel社のGude氏は、「Mobile WiMAXはモバイル向けと定義されてはいるが、当社はノート型パソコンのデータカードとデスクトップモデムから着手する予定だ」と述べている。1億人の潜在ユーザーを獲得するという目標は、Sprint Nextel社が大都市全体をカバーしようとしているということを意味する。Sprint Nextel社は、3G基地局(アンテナ)を利用して、それと同じ範囲でWiMAXをサポートする計画である。同社は、3G携帯ネットワークの計画のように、例えば都市間の高速道路に沿って地域を完全に網羅する形でWiMAXを展開することはしない。

 デスクトップモデムに関する計画により、Sprint Nextel社はDSLやケーブルの事業者と直接競合することになる。Analog Devices社のWiMAX技術ビジネスディレクタであるTom Gratzek氏は、「Sprint Nextel社はこの計画を利用して家庭市場へと参入する可能性がある」と語る。Sprint Nextel社のGude氏はこれには反論しており、「目的はインターネットにモバイル性を持たせることだ」と述べている。

 Intel社のターゲットは、もちろんモバイルユーザー、特にノート型パソコンユーザーである。Intel社のNardone氏は、「3G携帯ネットワークは素晴らしい第一歩だが、インターネットにモバイル性を持たせるまでにはまったく至っていない」と語る。今日の3Gデータサービスに関しては、「まだ始まったばかりだ」(同氏)と付け加えた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.