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携帯電話機向けSERDESの設計(3/5 ページ)

» 2007年10月01日 00時00分 公開
[Michael Fowler(米Fairchild Semiconductor社),EDN]

確認とフィードバック

 新しい手法を採用するには、もう一度、顧客を訪問して説明を行い、アプリケーションの要件をさらに深く理解する必要があった。この顧客との2度目の議論により、またいくつかの重要な情報を収集することができた。携帯電話機ではカメラと液晶ディスプレイは同じような位置にある。つまりは、両者へのデータパスは同じような位置にあるということだ。であれば、双方向のSERDESがあるのだから、それ単体で両方の処理を実行すればよいのではないかという考えに至った。設計上の驚きとなった最も重要な情報の1つがこのとき明らかになったのである。

 CTLについて、「電圧振幅が小さくて済むため、EMIと消費電力の面においてメリットがある」と説明した際、ある主要顧客のエンジニアが、「電圧振幅が小さいと感度による問題が生じる恐れがある」と指摘した。ここでいう「感度」とは、電気信号が無線ノイズによる影響をどのくらい受けやすいのかということである。無線ノイズは、データを破壊するほどの影響を及ぼすことがある。これはわれわれがまったく知らない事実であった。一方では放射の問題により、信号をできる限り小さくしなければならず、他方では、信号が小さすぎるとそれを激しく妨害する無線ノイズの問題が生じるというのだ。

 われわれがが適切な解決策へと思考を進める中、顧客らはμSerDesのペアを1つだけ使用することで、ワイヤー数をさらに減らすことができないかと考えていた。興味深かったのは、顧客がEMIをあまり恐れていなかったことである。彼らは日常的にEMIに対処してきたので、EMIがワイヤー数よりも優先度の低い問題になっているのである。フリッパ型の携帯電話機では、フリッパ部分と電話機本体の間の小さなヒンジ部分を介してすべての信号を送信する必要があった。ワイヤー数を減らすことは、システム設計者にとって非常に重大な課題だったのだ。

 簡単な手としては、LPLVDS(low power low voltage differential signaling)を用いる方法もあったが、設計チームはCTLに大きな自信を持っていた。−120dBm未満のEMIを実現する伝送構造が提供できれば、差動信号のコードをシールドする必要性が少なくなるため、かなり有利である。特に重要なのは、シールドは特性インピーダンスに影響を及ぼし得るということだ。また、CTLは消費電力を削減することもでき、レシーバの構造から感度についても堅牢であると思われた。

最終的な設計

 マイクロコントローラインターフェースのクロックについては、シリアルクロックとパラレルクロックのタイミングを完全に分離する方法を採用した。それでも、PLLベースの乗算は必要であり、書き込みイネーブルなどの主要な制御信号によってシリアルクロックを生成し、パラレルデータを入力しなければならなかった。

 CTLはLPLVDSよりもかなり消費電力が少ないが、それでも十分ではなかった。もっと消費電力を削減するには、少なくとも1個のPLLを削除しなければならなかった。PLLの1つを削除することと、CTLを使用することにより、電流をほぼ半減させることができた。

 残る大きな問題は、データとビットクロック、ワード境界(またはワードクロック)という3つの情報をシリアライザとデシリアライザの間で送信しなければならないということである。ここでいうビットクロックとは、個々のビットデータをデシリアライザに到達させるのに用いるクロックのことである。ワード境界は、デシリアライザへのワードの最初のビットを特定するためのものだ。

 3つの信号を6本のワイヤーで送信するのを避けるには、ビットクロックまたはワードクロックを生成するPLLをデシリアライザ側に用意する必要がある。そうでなければ、かなり革新的な手法を考案しなければならないことになる。設計チームはPLLの1つを削除するのは必須であり、また顧客に理不尽な制約を課すことなく削除できるのはデシリアライザのPLLだけだと判断した。そこで、まずはシリアルデータをビットクロックとともに送信することに決め、PLLを利用せず、またほかの差動信号を追加せずに、どのようにしてワードクロックを送信するかを考えることにした。

 エンジニアの1人が、2つの信号によってうまくワード境界を符号化することができれば、この問題を解決できるのではないかと考えた。シリアルストリームに2ビットを追加すると、ワード境界を定義する一意的なパターンを生成することができる。この2ビットのデータにより、クロックはトグルせずにデータがトグルしたならワード境界であると、簡単に識別可能なシーケンスが得られる。さらに都合の良いことに、すべてのワードに対してそれを識別することが可能である。クロックを符号化するほとんどの手法において、ワード境界を検出するためには、繰り返しの認識アルゴリズムを使用しなければならず、PLLと何千ものワードが必要である。それに対し、われわれが採用した手法であれば、ワード境界を即座に認識することができるのだ。システムが大きなノイズによってワード境界を失ったとしても、損失するのは1ワードだけである。

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